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[編集長の酒場談議]ギター片手に生きるまちのSTAR/木村秀穂さん

まちのイベントに、この人あり。小金井を中心に地域密着エンターテイナーとして活躍するマスター木村こと木村秀穂さんが今回のゲスト。木村さんの素顔を、熱々のお好み焼きを囲みながら伺います。

ミュージシャンの栄光と挫折

北池
木村さんとじっくりお話しするのって初めてですよね。木村さんのミュージシャンとしての経歴とか、全然知らないので今日はそのあたりもじっくりお聞きしたいなと思ってます。「木村さんってああ見えて、ホンマもんのプロだよ」って噂は色んな人からよく聞くんです。

木村
ああ見えて(笑)音楽も、家庭も、山あり谷ありですよ。

北池
マスター木村としての顔と、ミュージシャンとしての顔と、サラリーマンとしての顔があるってことでいいんですよね?

木村
そうね。マスター木村は地域のイベントで。ミュージシャンとしては、スマートソウルコネクションというバンドでギタリストとして。あとは、小金井市観光まちおこし協会の職員として、オーラを消しながら平日はたらいてます。

北池
では、まずはやっぱり音楽の話から。

木村
オレがいつからギターをはじめたかっていう話は置いといて、オレの青春時代はバブル真っ最中のバンドブームだったんよ。1986年に大学入学して、好きなことをやりまくろうと思って一人暮らしはじめて、バイトしてお金ためて、授業には行かず、来る日も来る日もギターギターギター。

北池
よくある大学生ですよね(笑)。

木村
それで、コンテストとかにもよく出て、自慢じゃないけど、当時は負け知らず。

北池
へえーすごい。

木村
そのうち、東京で決勝がある大きなコンテストで優勝。審査員にもめちゃ有名な人がいて、優勝したその日の夜には11PMっていう番組に出演。優勝賞金100万円もゲットして完全に天狗だったね。

北池
学生時代にテレビに出て、100万円を掴んだら、そりゃ天狗にもなるでしょう。

木村
業界のレコード会社の人がたくさん見に来るようなステージで、超有名バンドがアマチュアの時代に、彼らと一緒のステージで演奏してた。

北池
大手レーベルからも声がかかって?

木村
うん。チキンダンサーズっていう名前で、89年にデビューしたんです。所属のレコード会社の人に「この会社で一番売れている人誰?」っ聞いたら、「天童よしみですかね」って返事されて「演歌かぁーー」って言ったのを覚えている。その話した相手が所属会社の社長だとも知らず。

北池
ほんと当時は鼻が伸びきっていたんでしょうね(笑)。

木村
今でも思い出すと恥ずかしいくらい酷い奴らだったんですよ、当時のオレたち。そりゃ売れるわけがない。それで、結局CD1枚しか出さずに92年に解散。

北池
そうだったんですね。

木村
何十年もたって、この前、ある人から「チキンダンサーズですよね?」って声をかけられて。同じ時代にバンドやってた人たちからは、少しは知られた存在だったのかも。

まずはビールで乾杯。随所にロックな木村さん。

小金井との出会い

北池
在学中にデビューされて、その後は?

木村
デビューした後、大学は辞めました。親は怒っていたけど、好きにしなさいと。

北池
なんだかんだ言って、木村さんのことを応援してくれてたんですね。バンドを解散した後はどうしたんですか?

木村
ミュージシャンとのつながりがあったので、誘われたバンドメンバーに入れてもらって音楽活動を続けてきました。色んなバンドに参画したけど、どれもメジャーにはならなかったな。

北池
じゃあ稼ぎは?

木村
色んなバイトをしましたよ。郵便局の配達とか。

北池
それで?

木村
35歳のときに結婚したんです。

北池
結婚して何か変わりました?

木村
奥さんは小金井市生まれ、小金井市育ち。奥さんの近くに住んだら色々便利かなあと思って小金井に住むようになりました。オレは大阪から出てきてからずっと宿ナシ生活みたいなもんやったからね。

北池
奥さんキッカケで小金井に来られたんですね。

今回の酒場談義は東小金井の高架下にある有名店・六甲山にて。

“マスター木村”誕生

北池
結婚して、そのうちお子さんも。

木村
そう、それで保育園にお世話になるわけだけど、父母会に入って色々やらないといけないでしょ。オレね、誰かの下でそういうしごとやるのが嫌で。やってもいいけど、やるなら会長しかやらねえよって言って。

北池
めんどくさいっすね(笑)。 

木村
父母会の会長になってから、地域に色々知り合いができたかな。イベントで勝手にバンド組んだり、保育園の歌を勝手に作ったり。結構、父母たちにウケた。

北池
今でもマスターが作ってくれた歌は保育園のパパママに大人気ですよ。

木村
「イエ〜イ」ってノリでやってたら父母たちに喜ばれて、そのときオレのキャラでいいんだ!ありなんだ!と思ったね。

北池
何千人も集まる学童保育の運動会でも実況中継されてますよね。

木村
ただ実況中継するのは面白くないからって派手なカツラと衣装を着たのが、マスター木村の今のカタチ。気付いたら今年で9年目。もう自分の子どもは学童を卒所したんだけどね(笑)。

北池
そのとき、マスターの姿が出来上がったんですね。

木村
同時期に、シャトー2階のカフェの店主をやらないかってお声がかかり、カフェをはじめた。昼のランチタイムにギター持って出てきて、大阪弁で紙芝居やってるようなむちゃくちゃなお店だった。

北池
木村さんのカフェ、楽しかったですよ。

木村
盛り上がってたね。でも悲しいかな、オレには経営の才能はゼロで。確かにお客はたくさん入ってくれたけど、お金が全然残らなかった。

北池
たしかに。みんなドリンク一杯で長居するようなお店だったかも(笑)。

木村
そう。その時一緒にやってくれていたのが、櫻井と阿部ちゃんという二人。今では二人とも自立してお店を切り盛りしていて誇らしい。当時櫻井には「あんたとは、経営やってらんないっす」って言われたな。でも最後までずっと一緒にやってくれた。お店をやめるとき、最後に「このお店は本当に面白かった」って言ってくれた。

北池
素敵な仲間たちが周りにいらっしゃったんですね。

木村さんと同じ大阪出身の編集長。たこ焼きバトルをする約束をする二人。

地域密着エンターテイナー

北池
木村さんは“地域密着エンターテイナー”というしごとをつくって、いろんなイベントに出られてますよね。なんでプロだった人が地域の活動を始めたんですか?

木村
最初はカフェの集客のために。でもやっていくうちに、斜にかまえたロックバンドもいいけど、そうではない、自分の全てを融合したキャラが開放されていったんだよね。

北池
なんで覚醒したんだろ。プロのミュージシャンだった人が、地域のために活動しようって。

木村
北池さん。間違えちゃいけないのが「地域のため」じゃなかったってこと。あくまで「自分のため」。人と変わったことがしたい、人より先を行きたいというロックな思いはもちろんあるんだけど、それだけでなく自分のためにやっていたら今に至るって感じ。

北池
地域のためでなく、自分のために。

木村
そう。もうちょっと言うと、愛する自分の子どものためかな。周りに溶け込むのが少し苦手だった自分の子どもに勇気を与えたかった。それがすべての出発点。

北池
お子さんからすると、お父さんがスターでいてくれるのは最高にウレシイですよね。

木村
やり始めた頃は、オレがやることを面白がって「お父さん、次はどんなことやるの?」と聞いてくるようになって。人と違ってていい。自分らしい生き方を父親の背中で示したかったのかも。でも、今は子供もあきれてる。いろんなとこ出過ぎて (笑)。

「仕事とは究極の遊びである」と語る木村さん。お酒が進む。

まちおこしの面白さ

北池
音楽活動をされている方って、ほとんどの人はメジャーデビューなんか夢のまた夢で、音楽で食ってける人なんてほんの一握り。でも、音楽をただの趣味にするのではなく、キチンとお金を稼げていくことは本当に大変だし、難しいと思う。

木村
オレは、スマートソウルコネクションというバンドのギタリストをやっていて、一緒にやっている他のメンバーはゴリゴリのミュージシャンで、テレビのしごとをしてる人たちもいる。数年前にはフジロックにも出た。

北池
そうなんですね!

木村
そんな中、ギタリストのオレは、なぜか小金井でまちおこしをしている。

北池
そのギャップ面白いですね(笑)。メンバーは木村さんのことどう思っているんでしょう?

木村
彼らは、まちおこしって面白いと言ってる。自分たちを知らない人を引き込む面白さがあるって。

北池
と言いますと。

木村
ライブって、自分たちのファンの人たちがわざわざ自分たちの音楽を聞きに来てくれている。だからある意味、楽なんですよ。でも、町中でイベントやると、自分たちのことを全く知らない人たちに向かって演奏するわけで。面白くなかったら見向きもされないからね。

北池
アウェーでヒリヒリする感じが、町中ならではの醍醐味なんですね。

木村
スポットライトがあたるしごともいいけど、それだけじゃないよね。オレたちのことを全然知らない人たちの反応から得られるものは大きいよ。

話していても相手のリアクションを伺う木村さんは、真のエンターテイナー。

最先端のオシャレ

北池
木村さんは、音楽×地域というしごとを作られたわけですが、ご自身でどう捉えてらっしゃいます?

木村
自分で言うのも変だけど、自分の特技を生かしたまちおこしは、最先端のオシャレだと思ってる。

北池
そういうしごとをやりたいと思っている人はたくさんいると思うけど、思っていてもできない人も多そう。

木村
う〜ん。やっぱり、独りよがりだとうまくいかないよね。自分が楽しいからやっているだけじゃ、周りの人は楽しくない。それはまちおこしじゃない。

北池
でも自分が面白くないとダメですよね。そのバランスってなんなんですか。

木村
どれだけ、まちの人に面白がられているかだよね。

北池
この前のイベントでは、図太い「木村〜!」っていう声も飛んでました。

木村
町中でやったライブの動画をtwitter であげてくれた人がいた。どこの誰だか知らないおっさんが、「小金井の住民は全員これを聞け〜〜!」とつぶやいていて。感動したね!やっている意味があるなと思った。

北池
うんうん。今日改めてお話を聞いて、ロックでラブ&ピースな木村さんがみんなに愛される理由が少し分かったような気がします。自分のためと言いつつ、なんだかんだ言って周りの人のためであり、家族のためでもあり。そんなかっこいい背中をこれからも見せてください!

木村
北池さん、そんなんいいから、ほら、はよ食べや。お好み焼が冷めるで。

最後は「マスター木村」に正装してパチリ。

プロフィール

木村 秀穂

ミュージシャン。スマートソウルコネクション所属ギタリスト。学生時代にメジャーデビューするも3年で解散。その後、様々なバントメンバーとして音楽活動を続ける。カフェ店主などを経て、現在は地域密着エンターテイナー「マスター木村」として地域イベントに数多く出演。平日は小金井市観光まちおこし協会の職員として勤務する。

スマートソウルコネクション            
http://smartsoulconnection.com/
マスター木村                                     
https://www.facebook.com/masterkimura/
小金井市観光まちおこし協会           
http://koganei-kanko.jp/