商店会の仲間とにぎわいを支える

2025.01.30
商店会の仲間とにぎわいを支える

45年にわたって内装工一筋で歩んできた荻原利夫さん。日々仕事に勤しむとともに、商店会をはじめとする地域の活動にも力を注いでいます。中でも、所属する武蔵野市「関前八幡町親交会」では、14年間、会長を務めてきました。仕事とは別の活動を、どのような思いで続けてきたのでしょう。毎年恒例のお祭りの日、会場で準備に汗を流す荻原さんを訪ねました。

内装工で独り立ち

荻原利夫さんが「荻原内装店」を開いたのは1978年のこと。住宅を新築する際の内装工事、リフォームの際の内外装工事を行うのが仕事です。

「学校を出てからいくつかの建築関連の仕事を転々としたのち、叔父が三鷹市でしていた内装屋に丁稚奉公として勤めました。独立したのは5、6年後だったかな。大工経験もあったから、カンナの使い方とか、襖のつくり方だとか、身につくのは早かったと思いますよ」

独立するにあたって、「気負いはなかったな」と当時を振り返る荻原さん。

「勤めてる方がそりゃあ楽だよ(笑) 決まった仕事があるし、大変なお金のやりくりも心配しなくていいし。でも、何年か勤めると独立するのが普通で、そういうものだと思ってたからね」

31歳のときにちょうど良い物件が見つかり、引越しも兼ねて武蔵野市へ拠点を移すことに。仕事に打ち込む荻原さんが地域の活動に携わるようになったのは、42歳の頃、商店会に誘われたことがきっかけでした。

商店会が主催するお祭りには、関前のコミセン(コミュニティセンター)も出店。コミュニティセンターは武蔵野市内に16箇所あり、市民のボランティアで運営を行っている
商店会が主催するお祭りには、関前のコミセン(コミュニティセンター)も出店。コミュニティセンターは武蔵野市内に16箇所あり、市民のボランティアで運営を行っている

商店会の会長として14年間

「事務所を商店街に構えたので、お隣さんから商店会へのお誘いがあって。入ったときは50から60代の先輩方ばかりで、わたしはお茶汲みを(笑) といっても厳しいことはまったくなくて、穏やかで仲が良い集まりですよ」

荻原さんが所属するのは、「関前八幡町親交会」。その名の通り、会員の親交に重きを置いた商店会です。

「当商店会は地域に点在する商店の集まりなので、地域に広がっての活動を行い仲間内の親交を深めようとする集まりですね。この『関前こども花火』や八幡町にある『延命寺』のお祭りや、『武蔵野桜まつり』に出店したり、お正月の伝統行事『どんど焼き』をしたり。大きな行事の前に会を開くのと、毎月1回の役員会が定例の活動です」

コロナ禍では、「武蔵野市商店会連合会」からの情報を共有したり、補助金を紹介する機会としても商店会という場は活きたそう。それぞれが苦労していることを話し、情報交換をする場としても機能しています。
2009年から14年間もの長い期間、会長を続けてきた荻原さんのもとには、行事の準備ともなれば、ことあるごとに相談や質問をしにやって来る人の姿があります。

「今は相談役というか、聞かれたら答えるくらいでお手伝いしています。会長をしていたときも引っ張っていく必要はなくて、仲間という感じで。役割を決めれば、それぞれにしてくれる人ばかりだから、大変だったという記憶はないですよ。70歳過ぎると体力がついてこなかったけどね(笑)」

「関前コミュニティ協議会」や「関前青少年問題協議会」にも参加していた荻原さん
「関前コミュニティ協議会」や「関前青少年問題協議会」にも参加していた荻原さん

住民に愛されるお祭りを守る

荻原さんを訪ねたのは、毎年夏に関前南小学校で開催される「関前八幡まつり」当日。校庭での花火の打ち上げが名物の住民に愛される行事です。

「手伝いを入れるとスタッフは100人くらいかな。コロナ禍で中断して、2023年は小さい花火と縁日だけ、今年ようやく例年通りに復活しました」

友達同士で待ち合わせてはしゃぐ子どもたち、車椅子を押しながら3世代でやって来る家族連れなど、開場とともに大勢の人でにぎわいます。

「住宅街にある小学校で花火を上げるお祭りは、東京でもここだけだと思いますよ。年々規制も厳しくなるから、許可の手続きはプロに入ってもらって、さらに安全に開催できるように毎年微調整を加えながら続けています」

普段通う小学校が1日限りでお祭り会場に。ゲームコーナーは実行委員の手作り
普段通う小学校が1日限りでお祭り会場に。ゲームコーナーは実行委員の手作り
例年、会場には約2000人が集まる。夜になると自宅や通りから花火を楽しむ人も
例年、会場には約2000人が集まる。夜になると自宅や通りから花火を楽しむ人も

個人店が減りゆく商店会のこれから

「どこでも同じ状況でしょうけど、個人店の数自体が減っていますからね。関前八幡町親交会も、一時は120店舗ほどあったけど、今は店舗以外も含めて73会員。関前から八幡町とエリアが広く、建築屋さんもいれば喫茶店もあるしと業種がバラバラなので、物理的に一緒に活動できることは限られています。後継者もいないところが多い。それでも、年に1、2人かな、『今度お店を開くんです』と、若い人が入って来てくれることもあります。すごくうれしいことですね」

目下の課題は、若い世代の人や新しい事業者の人に、いかに商店会に入ってもらうかだと荻原さんはいいます。

「存在を知ってもらえるように、ワンコインパーティーを開いています。商店会のいいところは、集まりがあれば情報交換をできるし、こうやってお祭りをすれば『楽しかった』とか『嬉しかった』という声を聞けること。仲間で何かをやるのって、やっぱりいいですよ」

季節ごとに地域の人を楽しませるさまざまな行事。そのにぎわいは、地域で仕事を営む人たちの集いが支えています。

荻原さんはお祭りのやきそば担当。毎年恒例のため慣れた手つきで調理を進める
荻原さんはお祭りのやきそば担当。毎年恒例のため慣れた手つきで調理を進める

プロフィール

荻原利夫

1978年に武蔵野市関前で「荻原内装店」を開業。2006年に法人化。2009年から2022年まで「関前八幡町親交会」会長を務める。そのほか、「関前コミュニティ協議会」委員長、「武蔵野市社会福祉協議会」理事を務めるなど、様々な地域団体において多岐に渡り活動を続けている。

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