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「まずはやってみた」25人の実践 ゼミ#2レポート

せっかく日々生活するのだから、少しでも前向きに、楽しく暮らしたい。そんな風に思う人は多いのではないでしょうか。そして、そんな感覚を共有しながら、まちに暮らす人たちが、小さくても何か一歩を踏み出せば、まちは今日より良くなりそうな予感がします。

「これからの、家と庭」をテーマに行われた、まちのインキュベーションゼミ#2。ゼミのミッションは、「アイデアを形にしたい」「誰かのアイデアをサポートしたい」それぞれの動機で集まった参加者がチームを組んで何か一つ実践を行うこと。結果として、4ヶ月間のゼミは、まちが前向きに変化していきそうな兆しを共有する場になったように感じます。ゼミを通して生まれた5つの実践を、チームリーダーの背景とともにこのレポートに書き残すことで、自分のまちをより自分ごとで考えてみようとか、自分の暮らすまちで何かしてみようとか、そんな想いを読者のみなさんと共有できればと思います。

当事者家族として考えた場づくりを実践する

ゼミに参加した鞍田さんには、植木屋さんやお花屋さんでしごとをした経験があり、植物の香りや色を使いながら、心身の健康に関わる実践ができないかと考えていました。背景には、ご自身が、精神的な不安を抱える家族を持つ当事者だったことがあります。日々の暮らしの中で孤独や不安を感じる経験は特別なものではなく、誰もが当事者になり得るものである中、自然に人と人とがケアし合えるような関係づくりに、家や庭、そして植物を介して取り組めないか、それが鞍田さんのアイデアの源泉でした。

3人のチームメンバーとアイデアを具現化するために議論や、事例収集、フィールドワークを進め、当初のアイデアは、植物の育つ庭を拠点に障害を抱えた人やその家族、地域の人が関わり合い、相互のケアや就労支援を目指すという事業へ落とし込まれていきました。
そして、ゼミ期間中に、広い庭がある理想の物件を小金井市内で見つけた鞍田さん。アイデアは実践へとスピード感を持って進みます。最終的に鞍田さんは、ゼミ期間中に一般社団法人を設立し、広い庭のある家には「ムジナの庭」と名付けました。
先日、プレオープンイベントが行われ、ムジナの庭には、様々な人たちが植物を通してフラットに時間を楽しみ、リラックスする光景が広がっていました。鞍田さんの挑戦は始まったばかり。これから先、鞍田さんがつくる家と庭がどんな風景を生み出すのか楽しみです。

プレオープンイベントでは植樹祭やワークショップを実施。

オリジナルアイテムの製作・販売を通じた就業支援にも取り組んでいきます。

家の軒先をお店に変える。軒先から始まるまちとの接点

普段、建物の新築や修繕など暮らしのハード面に関わるしごとをしている宮下さんは、暮らしのソフト面についても考えてみたいと日頃から考えていました。自身の住まいには、より街を感じられるようにと賃貸住宅の1階を選び、自分の好きなもので囲まれた空間づくりにトライしていました。そんな中で少しずつ、自分と同じように暮らしを楽しもうとする人たちがまちに増えるといいなと思うようになった宮下さんは、ゼミを通して、自分がいいなと思えるものをおうちの軒先から発信するプロジェクトを実践しようと考えました。

チームメンバーはそれぞれの得意を活かして、ウェブサイトのデザインや助成金の検討などを進め、宮下さんの実践に向けてサポート。9月には、宮下さんが暮らす杉並区の成田東エリアで「軒先からこんにちは」と題したイベントを行いました。
イベントにあたり、地域のキーマンに声をかけたり、ポスターを街中に設置したりと準備を進めた成果もあり、宮下さん以外に10を超える出店者が集まりました。まちのあちこちがお店になり、同じエリアに住む人たちから「今まで歩いたことのない道を知った」という声や、「話をしたことがなかったご近所さんと話すきっかけになった」という声など、前向きな感想もたくさん届きました。宮下さんは今後も活動を継続していけたらとイメージを膨らませています。

軒先に大好きな長野県の物品を並べ、接客する宮下さん。

チームメンバーが制作したチラシは地域の関心を集めました。

空き家になった畳屋さんを、地域の集い場に

国立市からゼミに参加した日下さん。参加のきっかけは奥様のご実家の畳屋さんが空き家になっていたことでした。ゼミに参加することでいい使い方を考えてくれるような人と出会えないかと考えていた日下さんでしたが、初日のプレゼンテーションを経て、多くの参加者が日下さんのプロジェクトに興味を持ったことで、リーダーとして4ヶ月間を過ごすことになりました。

最初は具体的なアイデアがなかった日下さん。チームに集まった3人のメンバーと、奥様も巻き込んで、どんな実践をしようか考え始めました。議論をしていく中でまとまったコンセプトは「ネオおばあちゃん家」。地域の人たちがどこか懐かしさを感じられるような、開かれた場所を作ろうと考えました。
コンセプトが決まるとすぐにフットワーク軽く実践を始めた日下さん。入り口の土間スペースで駄菓子屋さんや文房具屋さん、落語会など地域の方が集うきっかけを次々に作りました。ゼミの最後に日下さんは、ご自身の経験とともに、「地域の中にふらっと寄れる場所があることで救われる人はたくさんいるんじゃないか」と、このプロエジェクトの根底にある想いを教えてくれました。

おうちの前には賑やかな光景が広がります。

入り口には懐かしの駄菓子がたくさん。

多摩地域の人に焦点を当てた新たな観光に挑戦

多摩地域を拠点に執筆や編集のしごとをしてきた崎谷さん。地域の観光やまちづくりについて取材をする中で、自分も地域に入って携わりたいと考えるようになりました。そして、改めて多摩地域について考えた時、地域の魅力は人にあるのではないかと感じました。
ゼミへの参加を決めた崎谷さんは、多摩地域の人にフォーカスし、その人に会いにいく、その人を通じて新たな体験をするといった観光の形を4か月間で模索することにしました。

チームメンバーとアイデアをブラッシュアップさせながら、実践に向けた場所探しや、人選びに奔走しました。そして、9月に小平で「ひとを旅する日」と題した企画を開催。1日を3つのパートに分け、多摩地域で活動する3名が体験型のワークショップなどを参加者に提供しました。イベント中は参加者以外にも地域のお年寄りや子ども達が興味を持って集まり、それぞれが小平について自由に語り合うような光景もありました。
ゼミを終えて崎谷さんは、何か一つ形にしなければと走り抜けた4か月間のプレッシャーや、それを終えた充実感を語ってくれました。また、ゼミでの実践は、自分がやりたかったことを再認識した時間でもあったようで、「これからも人が繋がって会話が生まれ、少しでもまちの良さに気づくような場を作っていければ」と抱負を話してくれました。

会場では初めて会った人同士がつながっていました。

当日ぎりぎりまで会場設営など準備に奔走しました。

家で働く、庭をシェアする

工務店で広報のしごとをしている伊藤さんは、住まい手がもっと家に関わりながら、暮らしを豊かにしていくようなアイデアを考えられないかとゼミに参加しました。幼い頃に家族でセルフビルドの家づくりをした経験を持つ伊藤さんは、家や庭を自分たちで自由に作り、使いこなすことの楽しさを一番に感じている当事者でもあり、ゼミを通して、アイデアの具体化に挑戦しました。

チームに集まった3人のメンバーと議論を重ねながら、伊藤さんは、「家で働く」「庭をシェアする」という2つのコンセプトにアイデアを着地させました。
家を暮らすだけの場ではなく、はたらく場や何かを作り出す場としても使っていくことで、日々の暮らしに新しい充実を生み出せないかと考え、ゼミ期間中にマガジンやSNSを使った発信を始めることにしました。
そして、「家で働く」を実現させる舞台として、庭の可能性に着目し、庭先でお店を始められる家具の提供や、庭の持ち主と庭を使いたい人とのマッチングサービスなどへもアイデアは膨らんでいます。

高円寺の家をモデルケースに発信を始めた伊藤さんとチームのメンバー。ゼミ期間中にブログを開設しました。

やってみないと分からない

9月に迎えたゼミ最終回。参加者全員で振り返りを行う中で、共通していた学びは、「やってみないと分からないことばかりだ」ということ。
ゼミ最終回で印象的だったのは「何か事業を始めようとするとき、頭で考えがちな事業計画がとてもちっぽけに思えた」という参加者の声。チームメンバーとしてリーダーの実践に関わったこの参加者は、次は自分の地元で何か一つ実践してみたいと抱負を語ってくれました。

11月からは「ローカル遊びの再発見」をテーマにまちのインキュベーションゼミ#3がスタートします。ひとりでは不安な一歩も仲間がいることで軽く踏み出せる、そんな良さがまちのインキュベーションゼミにはあるように感じます。何か行動してみようかな、誰かの行動を応援してみたいな、そんな気持ちを持っているあなたが次の参加者になってくれると嬉しいです。


まちのインキュベーションゼミ#3 ローカル遊びの再発見
期間11月7日(土)〜3月13日(土)場所KO-TO(東小金井事業創造センター)定員20名参加費無料 ※懇親会や実践における実費分をご負担いただきます申込締切2020年11月3日(火)詳細・お申込みhttps://here-kougai.com/program/program-300/