「あなたの仕事は何ですか?」
こう聞かれたら、あなたは何と答えますか?営業、メーカー勤め、会社員。おそらく業界や職種を答える方が多いでしょう。しかし、その〇〇である自分は1日の半分以下の時間。〇〇以外の時間で活動している自分はいったい何者なのか。雇用関係以外の“仕事”まで視野を広げてみると、その答えは変わってくるのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、大卒でも大手出身でもない非エリートの成長物語を通した、これからの時代を生き抜くヒントとエールが詰まった一冊です。
著者は、建築の枠にとどまらず様々な事業を展開する、建築家・起業家の谷尻誠さん。渋谷のhotel koé TOKYOや「自由という可能性」をテーマにした西東京の家など、みなさんも1つは知っているあるいは目にしたことのある建築の設計、飲食店や宿泊の経営などを手掛けています。
実は、生まれ故郷が同じだったりご経歴にゆかりがあったりと、編集部の若山も親近感を感じる方。2019年発行の『CHANGE-未来を変える、これからの働き方-』では、働き方のヒントを得る書籍として話題を呼びました。
本書は、谷尻さんの生い立ちから現在までの歩みを振り返り、自身が持つ独創的な発想力や事業を成功に導く突破力と守備力はどのように養われたのか探ります。建築界の異端児とも評される彼の思考や価値観は、実はコロナ禍のような予兆のない世の中を生きる術なのです。
家族、学校、職場。これまで対峙してきた人や環境から生まれた、谷尻さんの価値観や感覚。現在、様々な事業を展開するスーパービジネスマンの彼のそれらは、あらゆる人の参考になります。ここではその一部をご紹介します。
リーダーシップ
幼少期からせっかちな性格だったのだそう。その性格が、今の仕事への向き合い方や仕事の速さの捉え方に活きていると言います。
リーダーシップというと、統率力や指導力の力量を発揮することだと捉えてしまっていましたが、本来は目標までのベクトルを指し示すこと。具体的に谷尻さんが示すのは、メンバーや仕事相手が置かれている状況を、リーダーという全体を俯瞰して見る立場から見渡し、行動や展開を見極めることでした。立場に関わらず、自分の仕事を遂行する上で実践したい思考です。
グレーゾーン
奥さんの起業にあたり、期待を不安が入り混じった気持ちの中にいたときに生まれた思考。安定を求めて従来の方法に固執しない、新しいスタンダードが提示されています。
仕事では即決や即答を求められる場面が多いですが、通勤中や就寝前など、余白のある時間にアイデアや解決策が見出されることもあるように感じます。時間に追われる中でも、白黒つけない“ゆらぎ”を心の隅に置いておくことで、新たな道を示してくれそうです。
本書のように、自分を客観的に分析してみると、これまで自ずと大切にしてきたことや譲れないことが見えてくるのでは。そして、それが自分にとってのこれからを生き抜くヒントにもなるはずです。
今の生活や仕事にモヤモヤを感じている方、谷尻さんの価値観に触れてみたい方は、ぜひ手に取ってみてください。
書籍情報
タイトル:職業=谷尻誠
著者:谷尻誠
出版社:株式会社エクスナレッジ
発行年月:2022/3