時の流れは早いもので、気がつけば令和最初の年末となりました。今年3年目となるリンジンでは初夏に編集長によるヨーロッパ視察(旅行?)の記録を綴った長編コラム「欧州巡紀」を11話一挙に掲載したり、まちではたらくひと達の疑問を対話形式で解説していく「おしえて!リンジン先生」をスタートさせたりと、様々な角度でこれからのはたらき方やくらし方をご紹介してまいりました。
締めくくりとなるコラムでは、今年ご紹介した62本の記事の中から、編集部の3人の心に残った名言集をお届けします。
「家族より広く、地域より狭いコミュニティを作る」
ーITとコミュニティ 佐々木博さん
元はNHK教育でパソコンのお兄さん、今は全国のIT講師としてご活躍されている佐々木さん。お子様の病気がきっかけで生活が激変したそうです。「テクノロジーによって本人やご家族の負担を軽減できることがたくさんあるはず」と、ITが本当に必要な人に届けたいと考えています。一方、福祉を考える上でITだけでは限界があり、加えてローカルなコミュニティは大事だと話されます。地域・共助のプラットフォームをどのように構築するか、佐々木さんのチャレンジは続きます。
「来年中です」
ーNORIZ COFFEEのパートナーシップ 田中宣彦・遥夫妻
30代半ばになって「このまま会社員としてはたらき続けるのだろうか」と考えたとき、好きなことを追求して、充実した毎日を過ごしたいという気持ちが急速に高まったという田中さん。それから、好きなコーヒー店巡りを始められました。1年ほどが経ったころ、焙煎を教えてくれていたオーナーさんから「いつ店を開くの?」と問われ、具体的な計画は全く立てていなかったものの、勢いで「来年中です」と答えてしまいます。何かはじめるとき、いつかではなく具体の期日を公言する。そこから歯車が動き出すのかもしれません。
「可能性が見えると先代も文句言えなくなるというのは、やっぱりあると思います」
ー家業を時代に乗せる木工職人 細田真之介さん
東久留米市で昭和42年から続く細田木工所の3代目、細田さん。会社に新しい風を吹かせようと思っても、先代との価値観のギャップはどうやっても埋まらず、細田さんがまず選んだのが個人事業としてのスタートだったそうです。家具作りの力をすべて活かし、部屋や建物全体のDIYを手がけてまちづくりに関わっていく方法の模索を続けている間に、風向きも少しずつ変わってきたと言います。言葉では伝わらない相手には、行動して結果で示せ。そんなことを教えられたような気持ちです。
「絵は伝書鳩」
ー“絵”が導いた稲城の暮らし 梅田智子さん
3年前から多摩南部の稲城市で活動されているイラストレーターのyossanこと梅田さん。絵の力に絶大な信頼を寄せています。稲城で関わったしごとも、イベントなどに参加しているうちに、ワークショップやイベントをやらないかと声をかけてもらうようになったそうです。絵を通して人と交流が深まっていくという出来事を重ねていく様をみていると、自身の軸の大切さに気付かされます。
「アパートを建てればそれで終わりますけど、家がなくなるのは寂しいような気がしてね」
ー縁を紡ぐ久米川町46番地の庭 川島昭二さん
東村山で生まれ育った川島さん。ご両親の亡き後、月に何度か実家の手入れに通い、気がつけば5年が経っていました。状況を変えたのは地元の縁。工務店、編集デザイン会社、造形作家などのメンバーが集まり、空き家は多くの人が集まる文化複合スペースに生まれ変わりました。家は個人のものですが、たった一軒の家をどう生かすかによって、まちの風景や居心地は大きく変わります。
「そういえば小学生の娘が、ときどき店に訪れることがあるんです。」
ー郊外に実るオリーブのしごと 島田まり子さん
小田急多摩線の黒川駅前に、この春オープンした複合施設ネスティングパーク黒川。島田さんは、その一室でオリーブオイルのお店をはじめました。「地域との共存を図っていくことは、お店も含め、この施設の大きなテーマだと捉えています。」と語る島田さんは、施設の近くにお住いで、まさに職住近接を体現されています。小学生のお嬢さんも、この場所を気に入っているようで、友達を連れてくることも。ご主人やお母様にも応援され、家族の一体感がステキなお店作りにつながっています。
「入口と出口の距離感の問題だと思っています」
ー学びの次を指す、まちの変換装置 熊井晃史さん
これまで、子どもたち向けのワークショップを企画運営するNPOで“教育”をテーマに最前線を走ってきた熊井さん。独立後は様々なプロジェクトに関わりながらも、丸田ストアーの2階を拠点に子どもたちの居場所の運営を始められました。住宅街の1階に日常使いのお店が集まり、高齢者の方々や子どもたちも含めた暮らしの場がどんな変換装置になるのか楽しみでなりません。あと、熊井さんのお人柄に純粋にファンになってしまいました。
「試してみてダメだと思ったらやめればいいし、軌道修正すればいい」
ー日本茶を茶畑から海外へ 小野章子さん
外資系IT企業のAmazonを退職したとき、その後の計画は立てていなかったという小野さん。充電中に再会した旧友を介し、生き生きとはたらく人たちと出会ったことで、自分も好きなことをしごとにしようと探しはじめ、日本茶の海外向けブランディング事業に辿り着きます。「まずは動いてみればいい」。大きな転機にあるときこそ、肩の力は抜きつつ、自信を持って踏み出してみることが自分らしいはらたき方への着実な道かもしれません。
「まちを消費するのではなく、まちの一員としてコミットする」
ー[欧州巡記 vol.1]歩くのが楽しくなる道づくり 北池智一郎
編集長がこの初夏に旅したロンドン、アムステルダム、ベルリン。どの写真を見ても異国の風景に魅了されますが、ひときわ惹かれるのは道のあり方。日本ではまだ発展途上にあるモビリティ、屋台販売マーケット、ストリートピアノのようなアート、コミュニティガーデンなど、まちづくりの自由さを感じます。日常の根幹となるインフラには、その国の人が求めるものが特徴的に表れていそうです。
皆さんの心に響く言葉もあったでしょうか。ご紹介したのはリンジンにある記事のほんの一部です。興味のあるキーワードで検索していただくと、知らなかった職業に出会ったり、ご近所にいる方が見つかるかもしれません。年末年始は、リンジンをゆっくり読みながらお過ごしいただけたらうれしいです。(編集部 北池・國廣・加藤)