ちょっとした記事

スタートを切った実践者たち ゼミ#4レポート

自分のやりたいことってなんだったっけ。この言葉にハッとする人がいるかもしれません。コロナ禍で見直された、一人ひとりのはたらき方。ワークスタイルが多様化した今、やりたいことを考えるきっかけが身近に溢れているように感じます。

「郊外につくる、新しいシゴト」をテーマに行われた、まちのインキュベーションゼミ#4。リモートワークやサテライトオフィスが導入され、“郊外”ではたらくことに注目が集まる中、都心ではなく、郊外だからこそのアイデアを育む4ヶ月間です。ゼミには、多様な背景を持つ参加者が集い、常識にとらわれない新しいはたらき方を目指しました。この限られた期間で、最初のアイデアがどんな形になったのか、代表して4チームの実践をご紹介します。それぞれのこだわりに着目しながら、ご一読いただければと思います。

二刀流でジェラート屋

「美味しいが嬉しい。」
潔さをコンセプトに理想のジェラート屋さんを実現させようと今回のゼミに参加した鈴木さん。生産者・消費者・素材に対して潔い姿勢で、衛生的な環境で提供するジェラート屋さんを会社員との二刀流というはたらき方で目指しました。

鈴木さんは、ゼミ期間中に具体的な実践を重ねることを決意していました。複数回の実践の中で、提供する時間帯をずらしたり、集客の方法を変えたりすることでどんな違いがあるのか、自分の肌で感じることがその目的です。そんな実践の周囲には、それぞれ歩んできた背景が違うチームメンバーの存在が。デザイナーのメンバーはロゴやパッケージの作成を、設計士としての背景を持つメンバーは販売カウンターの設計を行うなど、メンバー一人一人が自身の強みを活かして鈴木さんをサポートしました。

国立市にあるシェア商店「富士見台トンネル」でトライアルを行ったジェラート屋。夜の店内は温かい照明で、なんだか幻想的な雰囲気に。

そして、ゼミの期間中に2度、1日限定の店舗を形にしました。店頭には、忙しいながらもお客さんに笑顔でジェラートを振る舞う鈴木さんの姿。そしてその周囲では、チームメンバーが接客、会計などそれぞれの持ち場で鈴木さんをサポートしました。コーヒーが好きなメンバーはジェラートにコーヒーを添えるなど、メンバーの個性も引き出された1日。それぞれの本業のかたわら、二刀流で理想のジェラート屋を追求した鈴木さんとメンバーのこだわりが随所に垣間見えました。

最初は不安だだったものの、販売開始から数時間後には、楽しそうにジェラートを盛り付ける鈴木さんの姿が。

今回のゼミを経て、分からなかったいろいろなことが実感を持って見えるようになってきたと言います。今後は以前やっていた週末修行の再開や、夜のイベントを中心にした出店、さらには月1回ペースでの継続的な出店を目標に、鈴木さんこだわりの潔いジェラート屋「isagi」の挑戦は続きます。

ついに完成した潔いジェラートは、ブルーベリーとバニラの2つの味。8月のイベントでは、100食限定が即完売。

家庭の味をどこでも

「お母さんの味をお店で。」
誰でも、いつでも、どこでも、なんでも食べられる今。この食生活にある疑問を持ったのが、リーダーの神山さんです。食生活の便利さが増す一方で、昔は当たり前のように食べられていた「お母さんの味」が身近ではなくなったように感じたと言います。そこで、神山さんは地元野菜や日本伝統の発酵食品など安心して食べられる心安らぐメニューの販売、また、それらを題材にしたワークショップの開催を目指しました。

神山さんは、安心して食べられる植物性の食品にこだわり、麹と野菜を用いた発酵食品を使った料理の販売に挑戦しました。しかし、その過程には、こだわり(食材)と現実(材料費)に苦闘する神山さんが。それでも、諦めず、安心して提供できる料理を作るために自ら足を動かし、地域の農家さんと繋がりを作りました。そして、自らメニューを考え、試行錯誤し、シェアキッチンでトライアルを行うことができました。

お店のコンセプトが伝わるように、ロゴや店名を工夫してお店の前に飾りました。

不安の中でも、自分のこだわりをどうやって形にするか、果敢にチャレンジした神山さん。お店を出したシェアキッチンには、近隣の農家さんたちの食材を使って作られた料理と、出来上がった商品を買いに立ち寄る人たち。お客さんに自分の言葉で料理や食材の説明をする神山さんの姿は、キラキラと輝いて見えました。

今回の出店を通して、様々な課題も見えてきました。「ゼミを終えることがゴールではなく、終えてみてやっとスタートラインに立った感じがした」という言葉は印象的です。ここから、継続的な出店に挑戦しながら課題に果敢に取り組み、自分のやりたいに近づけていきます。

地域の食材で作った料理を安心してお客さんに届けたい。料理の説明を楽しそうにする神山さん。

人に寄り添う写真屋さん

「まちと人をつなぐ写真館。」
このコンセプトで写真館をつくりたいと考えたリーダーの奥竹さん。ただ写真をとるだけではなく、たくさん話をして、人の生活に寄り添えるような写真館を立ち上げることを目標に、今回のゼミに取り組みました。

集まった5名のメンバーと議論を重ねた結果、アイデアは移動写真館という形に着地。そこには、画一的な写真ではなく、目の前の人の日常に寄り添い、その人の個性を活かしたいという思いが。それが思い出に残る大切な写真に必要な要素だと、奥竹さんは考えました。その方法として、必ずしも全ての人が写真館に足を運べるわけではないと気づき、固定ではなく移動する写真館というアイデアを見出しました。そして、それを形にするため、心を“素っぴん”にして、自分のキレイを発見する「素っぴん撮影会」と題した撮影会を、まちの飲食店でトライ。そこには、日常にあるまちのお店だからこそのリラックスした空気や表情がありました。

東小金井駅から徒歩5分、スキンケア会社「あきゅらいず」が運営する1階の食堂で行われた移動型写真館。

大好きなまちで、「まちと人をつなぐ写真館」をコンセプトとしていた奥竹さん。写真撮影後も撮影した写真を見ながら、参加者と楽しそうに会話をしている奥竹さんは、やりたいが形になった瞬間のように見えました。

これからは、単なる出張撮影ではない、まちと人と密接にかかわる(移動)写真館でありたいという思いを乗せて、随時撮影イベントを企画しています。今回のゼミを通して、当初のやりたいがより明確になった奥竹さん。次はこれをどうやって事業に落とし込むか、挑戦は続きます。

大きなカメラを携えて、近くの地域に住む子供たちの自然な笑顔を写真に収めました。

多摩地域に「まちやど」を

「暮らす人と旅する人が交わる。」
多摩地域にまちやどを創りたいと考えた萩原さん。「まちやど」とはまちを1つの宿と見立て、宿泊施設と地域の日常をつなぎ、まち全体で宿泊客をもてなすプロジェクトです。

萩原さんの最終的な目標は、理想のまちやど(宿泊施設)を作ること。最終目標までの長い道のりを考えつつ、ゼミ期間中にまずどんな実践ができるのかを考えました。そして、まちの情報を発信するメディア作りにたどり着きました。そこには、まずメディアを通して、日々人が暮らすまちを旅することの楽しさや、意外な発見、魅力を共有し合い、楽しい旅を想像してもらおうという狙いがありました。しかし、チームで取り組む初めてのメディア作成には多くの困難も。それでも、チームメンバーと協力しながらプロジェクトを進め、「日常旅行社」というメディアを立ち上げました。

三鷹の魅力を再発見。まちを歩きながらメディアで発信するための写真撮影を行いました。

YouTubeチャンネルには、「日常のように旅を楽しむ。旅するように日常を楽しむ。」というコンセプトとともに、自分も旅したくなるような気持ちになれる動画が。このメディア作成を通して、参加したチームメンバーにも、普段は目を向けない身近なものに目を向けるきっかけが生まれました。

最後まで自分が何をやりたいのかを考え抜き、そのために必要な一歩目を形にした萩原さんとチームメンバー。萩原さんはゼミの最後に、「これから、身近なまちを旅する人と関わり、まちの案内人になる」と決意を聞かせてくれました。

まちの魅力が多くの人に届くように。風情ある動画チャンネルを開設。

やりたいことをやってみる

自分がやりたいことは何かという問い。やりたいことを見つけるのは難しいことなのかもしれません。そして、一歩踏み出してやってみること。これもかなり勇気のいることだと思います。

ゼミの参加者がゼミのスタート時に持っていたもの。それは、漠然としたアイデアと、不安。しかし、4ヶ月を経て、リーダー・メンバーそれぞれの顔にはどこか納得した表情が見えました。やりたいを形にすることの難しさや楽しさ。そして、なによりもやりたいを形にするために飛び込んだことのかっこよさ。今回のゼミで磨かれたアイデアが地域の人々を笑顔にし、笑顔が溢れるようなまちになりますように。

11月からは、まちのインキュベーションゼミ#5が始まります。テーマは「今こそ コミュニティの底力」。とにかく行動してみたい、誰かのアイデアを一緒に形にしてみたい、そんな想いを持つ方々の参加を楽しみにしています。

まちのインキュベーションゼミ#5 今こそ コミュニティの底力
期間2021年11月6日(土)〜 2022年3月19日(土)場所KO-TO(東小金井事業創造センター)定員20名参加費無料詳細・申込https://here-kougai.com/program/program-454/
【締切間近!お申込みは10/25まで】