新型コロナウイルスの流行によって政府や自治体からイベントの自粛要請が出され、様々なイベントが中止になっています。一方、YouTubeなどのライブ配信によってイベントを届けようとする動きがあります。先週末、地元である兵庫県香美町で、主催するイベントのライブ配信に分からないなりにチャレンジしたリンジン編集室の山本が、実際にやってみたからこそ分かったあれやこれやを書いてみようと思います。
まず、ライブ配信することになったことの成り行きを少々。昨年から、ライブハウスの無い地元で、高校生バンドの活躍の場を作ろうとフェスを立ち上げ、今年も3月14日の開催を予定していました。年末には出演者も決まり、年明けからは本格的な告知も始めていた中、開催2週間前に公立高校の休校が決定。高校生たちからは決行してほしいという声も上がりましたが、休校措置が取られている中でイベントを決行することはやはり難しく。実行委員で話し合う中で高校生以外の出演者での無観客ライブを高校生や地域の人に配信しようという案が浮上しました。
ライブ配信でのイベント実施を決めてから、1週間半ほどで準備をし、全員が手探りの状況ながらもなんとかイベントを終えた今、身をもって3つのことが分かりました。
・使うツールによって必要な準備が大きく変わる
ライブ配信をしようと思ったとき、身近に使えそうなツールはいくつかあります。今回選択肢として検討したのは、YouTube、Facebook、Instagram。最終的にはFacebookとInstagramを使いました。FacebookとInstagramはアカウントさえあればすぐにライブ配信ができます。スマホでアプリを立ち上げてライブボタンを押して撮影をするだけ。その瞬間撮影している映像がアカウントを通して発信されます。一方で準備が大変なのはYouTube。YouTubeのチャンネルを立ち上げれば配信をスタートできるものと思いきや、スマホやタブレットなどモバイル端末でのライブ配信をするにはチャンネル登録者数が1,000人以上いなければならないというYouTubeの規定が立ちはだかります。ビデオカメラを使っての配信はチャンネル登録者数の制限なくできるのですが、それはそれでPCとカメラをつなぐ変換ケーブルが必要になったり、ソフトウェアをPCにダウンロードしなければならなかったりとやや複雑。今回は断念することにしました。
・思った以上に観てくれなかった…
ライブ配信をスタートするとその瞬間に観てくれている人の数が表示されます。トータル2時間ほどの配信を通して、視聴者数は常時20~30人。昨年実際に会場で行った際には200人が会場に集まったことを考えると、ライブ配信で届けることの難しさを感じる結果になりました。うまく活用できれば全世界の人に映像を届けられるライブ配信ですが、イベントのことを気にしてくれている人が、決まった時間に決まったURLにアクセスしてくれることの難易度の高さを感じます。たしかに、会場で行われるライブならスケジュール帳に書き込むけれど、「○○時Facebookライブ」とスケジュール帳に書き込む感覚は無いのかもしれない…。(逆に集まってくれる人の熱量はすごい)
・発信側と受信側がはっきりしすぎてしまう
これがライブ配信をやってみて最も強く感じたリアルなイベントとの違いかもしれません。配信ではないリアルなフェスももちろん、基本的にはアーティストが発信する側、お客さんが受信する側であるはずです。でも、実際にはお客さん同士でも、隣の人の息づかいが分かって一体感が生まれたり、場合によっては会場で出会った人とのコミュニケーションが生まれることもあるかもしれません。そういった意味でリアルな場では、前に立っている人が発信者でありつつ、観ている人も何かを発信したり、それを受信し合ったりする関係が成立します。その点、ライブ配信では、観ている人同士の目に見えないやり取りを感じ取ることができません。こればかりは仕方がないことというか、リアルな場には敵わないところなんだろうと感じました。
突貫工事でなんとか走り抜けたライブ配信。インターネットの凄さや、人が集まることの良さなどいろんなことに気づかされた体験でした。どなたかの参考になるといいなと祈りつつ、現場からは以上です。(山本)