2024年12月7日に、8回目の「まちのインキュベーションゼミ」が最終回を迎えました。チーム結成から4ヶ月を経て、4人のリーダーたちのアイデアはどうカタチとなり、参加者たちは何を感じているのでしょう。
地域の人が気軽に助け合える仕組みづくりをしたいと話していた西山さん。実践では自身のプロジェクトを「サポートスキマッチ」と名付け、安価にちょっとした困りごと・頼みごとをしたい依頼者と、お手伝いしたいサポーターをマッチングして解決する実証実験を行いました。近所にチラシをポスティングしたところ、開始1時間弱で最初のご依頼が。サポーターには西山さんの10代の息子さんが興味を持って協力し、電球交換や植木鉢の処分、室外機のカバー処分などを行いました。
複数のサポートを通して、依頼者の困りごとを解決して笑顔にすると同時に、思春期の息子さんも、地域の人と関わり喜ばれる仕事をしたことで確かなやりがいを感じたとか。依頼者もサポーターも運営者も“Win-Win-Win”になれるこの実践を通して、依頼者のQOLの向上やサポーターの自由な働き方の促進など、大きな意義と可能性を改めて実感したと話します。
シェアキッチンを卒業して定食屋&カフェ「旬菜屋おん」の開業準備を進めていた若木さんは、実際の店舗でオープニングイベントを開催しました。地域の農家から野菜を仕入れ、揚げ物やサラダ、コロッケ、おにぎりなど、ジャンルにとらわれず味付けや食材にこだわった多彩な惣菜を調理。オープニングパーティーのように、人が集まりやすくお客様とも話しやすいビュッフェスタイルで行われました。
イベント当日は予約した方から飛び込みの方まで、多くのお客様が来店。ビュッフェのほか、おかず三品の定食セットや、テイクアウトの需要にも臨機応変に対応しました。また、仕入れ先の生産者に足を運び、農園や農家の方の想いを紹介するマップを作成し店内に掲示したことで、お客様から新しい発見があったとの声も。「地域の新たな気づきや、人と人とのつながりを育む場を創りたい」という若木さんの思いが、チームメンバーの協力のもと、形になっていました。本格的にお店をオープンする上で、今回の実践がベースになったという若木さん。今後は、収穫体験や料理教室などのワークショップも視野に、より近隣農家さんとも連携していきたいと話します。
地域の中で「喜びがある事業をつくりたい」と、キッチンカーの事業を検討していた小嶺さん。アンケート調査を経て、忙しい主婦のための食事の宅配サービスに着地していきました。
ターゲットを一口に「主婦」と言っても、一人ひとりの状況は様々。事業化の前に、アンケートだけではわからない真のニーズを深堀りするため、まずは対面で複数の主婦の方にじっくりヒアリングすることに。すると、単に料理の手間を省きたいというニーズだけでなく、「家族に手料理を振る舞いたい」「食卓で品数が少ない」「コンビニ弁当は寂しい」などの声が。リアルな声を集めてアウトプットしたことでより解像度が高まり、これからは「手作り感」を大切にしたおかずや副菜のリアカー販売を目指したいと話します。ヒアリング調査を通して、独りよがりにならない事業プラン実現への第一歩を歩み始めた小嶺さん。今は提携先や販売場所の検討を進めており、価格やメニューなどを具体化していくとのこと。今後の展開がとても楽しみです。
都会で人と人との距離感に冷たさを感じた経験から、コミュニケーションのきっかけをつくる“利他(周りに暮らす他人の存在を意識し、他人の幸せを図る)ゾーン”について大学で研究している南雲さん。最初はまちのお店に利他ゾーンを設置してもらうスタンプラリーを考えていましたが、利他的な視点をみんなに持ってもらいたいと、まちにある利他を探すフィールドワーク形式のワークショップ「コウカシタ リタウォーク」にブラッシュアップ。JR中央線の武蔵境駅から東小金井駅の高架下を歩いて利他を感じる写真を撮り、写真や気づきを共有するワークショップで、当日は子どもから学生、大人まで約10名の参加者が集まりました。参加者にとって、落とし物の移動や、設置されたベンチ、歩行者のためのサイン、植えられた緑など、たくさんの発見があったそう。
利他的な視点を持つことが、まちの利他ゾーンを増やしコミュニケーションの活性につながると言う南雲さん。今回のワークショップで手応えを感じたことから、今後は、他のまちでも「リタウォーク」を開催したいとか。研究の枠組を超え、人を動かし新しい価値を生み出すようなプロジェクトで期待が高まります。
今も現在進行形で動いている4つの夢。まちで実証実験をしてみる。オープニングイベントで集客する。本格的に事業化する前に深堀りする。まちへの新しい視点をひらくフィールドワークを行う。自分がやりたいことに向けて、まずは今できることから踏み出したばかり。今回のリーダーたちの姿を参考に、あなたもやりたいことにぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。