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ローカル遊びは仕事になるのか? ゼミ#3を終えて

自分が暮らす地域には何があれば楽しいか、自分ならどんなことができそうか。コロナ禍ではたらく場所や暮らす場所が大きく変化したとともに、地元やとなりまちを見つめ直し、再発見してみようと考えている人は多いのではないでしょうか。
 
「ローカル遊びの再発見」をテーマに開催されたまちのインキュベーションゼミ#3にも、同じ想いを持って、一歩踏み出してみようと17名が集まりました。そしてこの3月、ゼミの最終的な実践の場として位置付けた2つのイベントが開催されました。チームでブラッシュアップさせてきたアイデアはどのように具現化されたのか。そして、リーダーたちはゼミでの実践をどう継続させ、自分のしごとにしていこうと考えているのか、是非読者のみなさんに知っていただければと思います。

映画を通じてまちを再発見

音楽やデザイン、アート、教育など幅広いジャンルで、フリーランスで活躍されている中で、次のステージとして音楽や生涯教育の分野での事業化を目指していた小林かなこさん。ビジネスの世界へ足を踏み入れる一歩として、今回のゼミへ参加しました。今暮らしている地域の馴染みの深い場所や人を再発見したいと、プロジェクトをスタートさせました。
 
どんな切り口で地域を再発見しようか。メンバーの関心分野でアイデアを出し合う中で、小金井市在住の映画監督・岩井澤健治監督へオファーができました。岩井澤監督は数々の賞を受賞している長編アニメーション映画『音楽』で、脚本から絵コンテ、作画監督も手掛けました。その制作の舞台となったのが“小金井”でした。オファーが決まると、イベントとして映画のロケ地を巡るツアーを企画。登場するシーンと現地を照らし合わして事前にルートを確認したり、小金井の各所や映画館へチラシを配下。参加者の応募を開始すると、なんとその翌日に定員に達しました。

監督と参加者の距離が近く、歩きながら監督と直接話ができるという、ファンにとってはたまらない体験も。

実践当日、集まったのは映画ファンから岩井澤監督のファン、地元を再発見したいと参加した市民の人たち。爽やかなお散歩日和で、感染症対策として距離をとりつつ、地元の人たちの間では有名な「天神橋」や「はけの森美術館」から、普段なら素通りしてしまいそうな住宅街などのロケ地を巡りました。各スポットに到着すると、参加者たちは監督から制作エピソードを聞いたり、映画のシーンと目の前の景色を見比べながら写真を撮ったりしていました。

監督の熱のこもったトークを聞き、監督へたくさんの質問も飛び交いました。

この取り組みを自分のしごとに

映画や監督ファンにとっては監督と話をしながら聖地巡礼をできるという特別感と、映画を通じてつながった“小金井”というまちの発見、地元の人たちにとっては普段見慣れた風景の新しい見方を知りまちの再発見ができた、貴重な時間となりました。
 
今回の実践が、“今後もこういう場をつくりたい”という指針になったと話す小林さん。その一歩として、「この活動を法人化させて、自分のしごとにしたい」と決意を表しました。ゼミでの経験を出発点に、映画だけでなく音楽やアートなど、自身がこれまで携わってきた様々な分野でまちを再発見していきたいと意気込んでいます。ゼミでの経験がどうしごとづくりにつながっていくのか、小林さんの今後に注目です。

地元の人たちにも有名なスポット「ムジナ坂」では、全員で記念写真を。

違和感から生まれたアイデア

近年まちから駄菓子屋が消えつつあり、自分の子どもたちは駄菓子屋を知らずに育ったという大石摩耶さん。店主や友達と会話をしながらお菓子を選ぶ、駄菓子屋ならではの楽しさを経験してほしい、地域の中で子どもも大人も安心安全な場所をつくりたいと、今回のプロジェクトは始動しました。

実践に向けて、駄菓子の仕入れ方や場所探しをメンバーがサポート。地域の駄菓子屋へ足を運んで店主さんの話を聞いてみたり、なるべく安く仕入れるために様々な業者を当たってみたり。そして3月、駄菓子とおしゃべりを楽しむイベント「レトロなたまり場」を開催しました。

武蔵小金井駅から徒歩11分、昭和の趣のある「平林家」。大石さんが思い描くものにぴったりの場所でした。

オープンと同時に、近所の親子やメンバーの友人、通りすがりやSNSを見てきたという人など、予想以上の人たちが集まりました。大人が子どもにけん玉の技を教わったり、一緒になって昔遊びを楽しむ風景。子どもたちが駄菓子や工作教室を楽しんでいる間、大人たちが外でおしゃべりしている風景。メンバーたちが想像していた、あるいはその想像を超える景色が広がっていました。

100円を握りしめて、100円ぴったりになるように頭の中で計算して駄菓子を選ぶ子どもも。

工作教室も大盛況。子どもたちは好きな色を選んだり、好きな形に切ったり、自分のオリジナルをつくる楽しさを味わっていました。

つくりたい景色が明確になった

実践を終え、「ゼミがスタートしてから言語化できずに苦しんでいた『なぜ駄菓子屋なのか』が明確になった」と大石さんは振り返ります。また、今回メンバーのスキルを活かしたコンテンツを盛り込んだことで、“何かやってみたい人の後押しをしたい”という想いも芽生えました。継続に向けてまずは場所を構えるために、物件探しも進めています。

今回「こんなイベントをする」と声に出してみると、たくさんの共感を得られたとのこと。自分の“あったらいいな”が地域の人たちの“あったらいいな”でもあるのだと発見できたことが、大石さんのこれからの原動力になりそうです。

5月からは、まちのインキュベーションゼミ#4がスタートします。テーマは「郊外につくる、新しいシゴト」。これまで参加された方々の動機は様々ですが、日々の生活をより良くしようとする延長線で、自分が暮らす地域を楽しくしようと考えている人たちが集まっているように感じます。この春、何かはじめたいな、誰かのやってみたいを後押ししたいな、そんな想いを持つ方々の参加を楽しみにしています。

まちのインキュベーションゼミ#4 郊外につくる、新しいシゴト
期間5月22日(土)〜9月25日(土)場所KO-TO(東小金井事業創造センター)定員20名 ※お子様連れでの参加も可能です(託児なし)参加費無料 ※懇親会や実践における実費分をご負担いただきます詳細・お申込みhttps://here-kougai.com/program/program-387/
※詳細は順次公開いたします。