届けたいを形にした6人のお店 ゼミ#6レポート

2022.12.22
届けたいを形にした6人のお店 ゼミ#6レポート

パン屋、雑貨屋、古本屋、花屋、サロン。まちに溢れるお店には、それぞれ店主の思いが込められ、訪れる人の生活の一部になっています。「お店づくり」をテーマに開催したまちのインキュベーションゼミ#6にも、自分の好きなものや得意なことを“お店”という形で届けたいと、30人が集まりました。6つのチームに分かれて駆け抜けた4ヶ月間。参加当初の思いがどのような実践となったのか、ご紹介します。

駄菓子と日本酒を味わいながら語らう場

大好きな日本酒の魅力を伝えたいと参加した鬼束みなみさん。“懐かしい駄菓子と一風変わった日本酒が楽しめるお店”をコンセプトに、子どもから大人まで楽しめるお店づくりを目指しました。場所決め、駄菓子の仕入れ、メニューの考案、集客など、開店に向けた準備をチームメンバーで協力して行いました。

ロゴの制作をメンバーの家族に依頼したり、まちのインキュベーションゼミの卒業生にアドバイスをもらったり、周囲も巻き込みながら準備を進めた
ロゴの制作をメンバーの家族に依頼したり、まちのインキュベーションゼミの卒業生にアドバイスをもらったり、周囲も巻き込みながら準備を進めた

日本酒駄菓子バー「おにちゃん」が開店。実践は、国立市のシェアキッチン「富士見台トンネル」で2回行いました。日本酒は鬼束さんが選りすぐり、飲みやすい日本酒メニューも用意し、お客さんから好評。満席や売り切れもあり、大盛況のうちに終了しました。食事を楽しみながら、嬉しかったことやモヤモヤすること、そんな話も口にできる場にもしたいと考えていた鬼束さん。お客さんの間やメンバーとお客さん同士で、その光景は多く見られました。

今後は、本業の傍らシェアキッチンで実践を重ね、様々なスタイルでの営業に挑戦したいと語ります。「おにちゃん」という看板が立つ日が待ち遠しいです。

小学生の子どもたちがお金を計算しながら楽しんでいる姿も見られた
小学生の子どもたちがお金を計算しながら楽しんでいる姿も見られた

子どもたちに洋服の楽しさを学ぶ機会を

ファッション雑誌の編集の仕事をしている名知正登さん。当初は別のアイデアで検討を進めていましたが、ほかのゼミ生からの「子どもに洋服やコーディネートを教えてほしい」という一言が転機に。これまで思いを持って続けてきたファッションにおける事業開発へと再出発しました。

洋服にまつわる社会問題など、洋服が作られる過程に意識を向けてもらう内容も
洋服にまつわる社会問題など、洋服が作られる過程に意識を向けてもらう内容も

「こども服育レッスン」と題し募集を開始したところ、定員を大きく上回る申込があり大反響。洋服の合わせ方や、和菓子づくりが得意なチームメンバーが和菓子を振る舞い、色の印象についてもレクチャー。学んだ子どもたちに、テーマに沿った洋服を一人ひとり選んでもらいました。

今後も子どもたちに洋服の楽しさを伝えていき、企業や行政とのタイアップ企画もやっていきたいと話します。名知さんのこれからの試みにワクワクします。

参加した子どもたちからは「楽しかった」「洋服のことを知れて嬉しかった」という声が
参加した子どもたちからは「楽しかった」「洋服のことを知れて嬉しかった」という声が

温かい空間とパンを届けるパン教室

発酵食品のおかげで体調が改善した経験からパン作りに目覚め、パン教室を開きたいと参加した田中春奈さん。「人情味のあるパン教室」という構想を、“友達の家で楽しくくつろぎながら習うような温かい教室”という、具体的な場のイメージに落とし込みました。

事前にリハーサルを行ったことで、予め細かい運用面まで気づきを得られ、当日はスムーズに進行できたという田中さん
事前にリハーサルを行ったことで、予め細かい運用面まで気づきを得られ、当日はスムーズに進行できたという田中さん

当日は公民館を借り、計5組が参加しました。パン生地を捏ね、焼き上がりを子どもたちがオーブンの前でワクワクしながら待ち、焼き上がった瞬間には歓声と笑顔が。子どもも大人も、パン作りの簡単さと楽しさを学べる1日となりました。

実践を経て、集客に苦労したと振り返る田中さん。まずは認知を広げ、平日に大人向け、休日には親子向けの教室を開くなど、田中さんの挑戦は続きます。

試作に試作を重ねた結果、実践でも綺麗な焼き上がりのぷっくり丸いりんごパンが完成
試作に試作を重ねた結果、実践でも綺麗な焼き上がりのぷっくり丸いりんごパンが完成

ひかりを使った誰もが楽しめる空間

障がいのある子どもとその家族が楽しめる場所を作りたいと参加した中山梓実さん。重度心身障がいのお子さんを持つ当事者としての思いから着想を得て、スヌーズレンと呼ばれる光を用いたイベントを開催することにしました。

スヌーズレンとは、ヨーロッパ発祥の重度知的障がいを持つ人向けに感覚刺激を行うリハビリ療法
スヌーズレンとは、ヨーロッパ発祥の重度知的障がいを持つ人向けに感覚刺激を行うリハビリ療法

イベント名は「ひかりのあそびば」。30人ほどの家族が集まりました。そこには、障がいのある子どもとその家族が自然と触れ合い遊んでいる、中山さん自身これまで目にしたことのない光景が。障がいのあるなしに関わらず、様々な人を巻き込み、大きな収穫を得られた実践になりました。

中山さんの目指す先は、カフェのオープン。今回の経験を活かして、現在シェアキッチンで開いているタルト屋から次のステップへ。走り出した中山さんの挑戦は止まりません。

チラシはチームメンバーのデザイナーが制作。中山さんの思いを表現したものとなった
チラシはチームメンバーのデザイナーが制作。中山さんの思いを表現したものとなった

ハーブバスソルトで生き返る感覚を

リラックスやデトックス効果のあるハーブの魅力に惹かれ、ハーブを使って不調を整えるお店やサービスを作りたいと参加した高宮朋子さん。アイデアはメンバーのスキルも活かした、ハーブ足湯体験という形に着地しました。

参加者と話す高宮さん。ハーブをどう活かすか迷走したと振り返る
参加者と話す高宮さん。ハーブをどう活かすか迷走したと振り返る

参加者からは「香りに癒された」「足が軽くなった」と、高宮さんの伝えたかった思いがしっかりと形になった実践に。チームメンバーの一人が運営する、8月に小金井市にオープンした「長屋マルシェ」で開催し、整体師のメンバーが足もみの施術を行うなど、メンバーとのコラボレーションも生まれました。

今回ハーブを使った実践を行った高宮さんですが、新しいビジネスでの開業を目指してすでに動き始めているのだそう。高宮さんの今後の活動に注目です。

「ぐっすり眠りたい」「疲れが取れない」など、それぞれの悩みに合ったハーブバスソルトを調合
「ぐっすり眠りたい」「疲れが取れない」など、それぞれの悩みに合ったハーブバスソルトを調合

楽しくはじめ、続けるための自炊教室

学生で一人暮らしをする中で食材の使い道がわからないと、自炊に苦手意識を持っていた田中咲希さん。同じような悩みを抱える人は多いのではとひらめき、講師を招いて野菜の美味しい調理方法を学ぶ料理教室を企画。レシピの考案、場所の選定、チラシの作成など、田中さんのイメージを形にすべく、チームメンバーでアイデアを出し合いました。

参加者と交流する田中さん。講師から料理例や食材の組み合わせのコツを学び、グループに分かれて献立を考えるプログラムも用意した
参加者と交流する田中さん。講師から料理例や食材の組み合わせのコツを学び、グループに分かれて献立を考えるプログラムも用意した

実践は、今年武蔵小金井駅のそばに開設された小金井市の「わくわく都民農園小金井」で開催。一人暮らしや学生など10名強が集まり、食材の使い方を学ぶだけでなく、食について改めて考え、料理にまつわる悩みを共有できる機会になりました。

この4ヶ月間で、自分の考えをしっかりと伝える難しさを感じたという田中さん。チームで物事を進める学びを糧に、自炊のアプリ開発など新しいチャレンジを模索中。田中さんのこれから進む道が楽しみです。

講師には小金井市で100年以上続く阪本農園の阪本亮輔さんを招いた
講師には小金井市で100年以上続く阪本農園の阪本亮輔さんを招いた

「〇〇に興味がある」「〇〇をやってみたい」と初めて口に出すのは、実は勇気のいること。身近な人にこそ言い出しにくいものです。しかし、興味関心や思いが似ているというゼミにおける共通点が、口に出す恐怖心のようなものを取り除いてくれました。そして、“やってみたい”から“やりたい”に変わった瞬間がそれぞれにあり、大きな一歩を踏み出した4ヶ月となりました。

次回のまちのインキュベーションゼミの開催が決定しましたら、リンジンにてお知らせします。関心のある方はぜひチェックしてください!

まちのインキュベーションゼミ#6「お店づくり」紹介ムービー
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