7回目を迎える、アイデアを地域で育てる実践型の創業プログラム「まちのインキュベーションゼミ」が7月22日スタートしました。20代から60代まで、年代も、職業も、動機も様々な30人が集まりました。近い将来起業がしたい、アイデアを実現する過程を学びたい、スキルや好きを誰かのために活かしたい。一人ひとりが思いを乗せて参加した中から選ばれた、7人のリーダーのアイデアをご紹介します。
1人目は、後藤律子さん。学童の職員をしている後藤さんは、働く中で感じる問題を解決したいと、参加しました。アイデアは、家に帰って留守番をしている子どもを対象とした子ども食堂。実際に、学童から帰ってからも親の帰りを待つ子どもが多くいること、その結果生活習慣が乱れがちであることを、よく耳にするのだそう。貧困家庭を支援する目的ではじまった子ども食堂ですが、そんな子どもたちにこそ居場所が必要なのではと考えました。学童へのお迎えサービス、朝食〜夕食の提供、産前産後のヘルプなど、新しい子ども食堂を生み出す後藤さんに期待です。
2人目は、福島登和子さん。日本語教師の仕事をする福島さんのアイデアは、訪日客向けの日本食体験。きっかけは、生徒たちが「日本食が美味しい!」と口を揃えることだそう。ラーメンやお好み焼きなどのB級グルメは人気なため、もっと日本の伝統的な食を伝えたいと、まずは豆腐づくり体験にチャレンジしたいと話します。多摩の酒蔵とのコラボなどを通じて、訪日客にあまり知られていない多摩地域の魅力も伝えたいと意気込む福島さんです。
3人目は、北田健さん・恵美子さん夫婦。国分寺市に所有する家を、最低限のリフォームで地域のカフェとして活用したいと、夫婦で参加しました。所有しているのは、地下1階地上2階のお父さまが建て替えられた家。愛着があるからできれば売りたくない、けど立地が悪く良い活用方法が思いつかない。検討の末たどり着いたのが、住宅街に暮らす人たちが集うカフェでした。カフェをただ開くのではなく、近くの製菓学校の学生がお菓子を披露するなど、場所の提供も視野に入れている二人。自分たちの家から地域の人たちが繋がる場所へ、どう変化するのか楽しみです。
4人目は、増淵菜穂子さん。転勤で知らない土地での子育てを経験。学校や児童館には馴染めず、友人から聞いた、近所のおばあちゃんがいるような安心できる場所が自分にはなかったのだそう。その経験から、ママ自身が居場所と感じられる場所をつくりたいと参加しました。また、自分を含め、特技を持つ大人がワークショップなどを開催し、子どもたちが様々な大人に出会い、多様な価値観に触れられる場所にしたいと話します。増淵さんのつくる安心と学びの場所が、多くの親子にとって必要となる予感がします。
5人目は、実家の庭の日々の管理に頭を悩ませている今川あっこさん。レンタル畑のように庭を活用できないか、と参加しました。年に数回、業者に手入れをしてもらっているものの、雑草を抜いたり、隣家に伸びる庭木の剪定など、日常的な手入れを自分だけで行う難しさを感じているのだそう。そんな今川さんがイメージするのはシェアガーデン。ブルーベリーや梅など果樹もあり、ポテンシャルを感じるお庭です。地域に庭をシェアすることで、つながりをつくりながら空き家や空家予備軍の解決策のひとつになればと、構想を膨らませます。
6人目は、齋藤佳代さん。子育てをする中であったらいいなと思った場所を、ゼミでカタチにしたいと参加しました。イメージするのは、ママたちが“わたし”として訪れられるスナック。疲れた時、ちょっと息抜きしたい時、誰かに思いの丈を話したい時に、一時的に日頃の疲労から解放され、“自分が自分に戻れて、また頑張ろうと思える場所があったらいいな”と思っていたという齋藤さん。4歳と双子の3児の母である齋藤さん自身がスナックのママになって、“共感・受容・哀愁”がいいバランスで漂う「ママのためのスナック」を目指します。
7人目は、新井実紀さん。現在は小金井市内の農園やマルシェに関わる中で、地域やコミュニティへ考えを深めているのだそう。そんな新井さんのアイデアはコミュニティカフェ。中高生、留学生、多世代の、地域に暮らすあらゆる人たちが集い、出会える場所をつくりたいと話します。そこには、自分が中高生のとき家や学校以外の居場所がほしかった、留学生から日本人との繋がりを求める声を聞いたなど、実体験があります。新井さんのつくる場所が地域にとってどんな場所になるのか楽しみです。
過去を振り返り、将来を見据えたとき、“まちにあったらいいな”と思うアイデアを持ち寄った7人のリーダー。4ヶ月後、それぞれのアイデアがチームメンバーと一緒にどんなカタチになっているのか。ゼミ生たちの一歩がここからはじまります。