ハネムーンマラソン誕生前夜

2018.01.22
ハネムーンマラソン誕生前夜

決まった時間に満員電車で通勤する毎日……そんなはたらき方はしたくない、会社の言いなりの人生は送りたくない!と意気がる大学生——それが、10年前の千葉慎也さんの姿でした。大学を卒業して会社勤めを経験した後、飲食店経営、マラソン企画、出版事業……など多岐にわたる活動を展開。その原動力はどこにあるのでしょうか。

はたらくイメージを覆されたサラリーマン経験

学生時代から国際協力活動としてボランティア活動に関わり、20カ国近くを旅した千葉さんは、理工学部で学んだ知識と技術を、発展途上国のインフラ整備支援などに生かすはたらき方を思い描いていました。大学卒業後、開発コンサルタント会社に就職。東日本大震災後の復旧事業、ブラジル・リオオリンピックのための交通整理計画など、国内外問わず、専門性を必要とされる現場でのしごとを手がけました。大学生のころに抱いていた“はたらかされている社会人”のイメージを見事に覆す、刺激に満ちた会社員時代だったそうです。

「『しごとなんて…』みたいな気持ちで最初は入社したのに、やってみたらすごく楽しかったんですよ」。そして、一人の上司との出会いが、千葉さんの今のしごとのスタイルの起点となりました。

「自分たちがこのしごとをやらなきゃ誰がやるという信念を持った、ものすごく格好いいはたらき方をする人でした。知識や語学力ももちろんすごいのですが、ある国の大統領などに『こうした方がいい』という意見を正面切って言う姿なんかは、“国を動かしている”という感じがありました」

4年間、その後ろ姿を必死に追いかけましたがある時、「この分野ではこの上司に勝てそうもない…」と感じたそうです。今はまだ勝てなくても、10年、20年後には何かの分野で一番になって、その人を超えたいという思いが会社を辞める決断につながりました。

一人の上司との出会いが、しごとに対する姿勢の道標になったと話す千葉さん。
一人の上司との出会いが、しごとに対する姿勢の道標になったと話す千葉さん。

友人と自然食カフェをスタート

会社を辞めたとき、次に何をするか明確に決まっていたわけではありませんでした。ただ、多忙のあまり食事に気を配る余裕がなかったサラリーマン時代、「体に良いごはんを気軽に食べられる店があるといいのに…」と感じていたことを実現させようと思い立ちます。

飲食店経営のハードルは高そうですが、千葉さんは飄々とこう話しました。「学生時代にも友達と二人で、大学近くにあったカフェで夜の営業をやらせてもらったことがあったんです。単純に二人とも料理が好きだったし、その店は夜、あまり人が入っていなかったから、なんかできることがあるんじゃない?みたいなノリで。今思うと若気の至り、というか」

そのときの友人と二人で「カジュアルな自然食レストラン」をつくろう、と話が進んでいきました。計画立ち上げから開店までの準備期間は約半年、特に苦労したのは物件探しだったといいます。「最初は都心部でやろうとしていたのですが、費用と折り合う物件がなかなかみつからず…。物件はないし、お金は減っていくしで、何のために会社を辞めたんだろうと気持ちが滅入っていましたね」。小金井市の物件を紹介されたのは、探し始めて3カ月ほど経ったときのことでした。

「小金井市って全然知らない土地だったんですけど、物件を見に初めて武蔵小金井駅に降りたとき、なんかいい感じだなと直感しました。緑が多く、公園もあって、でもそんなに田舎じゃない、という感じで。とにかくやってみよう!と、ここに決めたんです」と振り返ります。

小金井市にある自然派ダイニングBare GREEN。内装や看板、ロゴ制作などオープンに先駆け、多くの知人が力を貸してくれたそう。
小金井市にある自然派ダイニングBare GREEN。内装や看板、ロゴ制作などオープンに先駆け、多くの知人が力を貸してくれたそう。

店と街との相性が好循環を生む

“ありのまま、裸の”という意味があり、国産・無農薬・手作りで添加物を使用しないというポリシーを表しています。

知り合いもいない、見知らぬ土地でオープンしたBare GREENでしたが、街が温かく迎え入れてくれました。「オープン当初から、よく街の方が来てくださって、こんなイベントがあるからおいでよという感じでどんどん巻き込んでくれたんです。本当にありがたかったですね。おかげで割と早くから街にとけ込んでいくことができました」。食材でも小金井野菜を使うなど、店のコンセプトと街がうまくマッチし、好循環につながったのです。

店が少しずつ軌道に乗ってきたころ、千葉さんの人生に新たな転機が訪れました。

ハネムーンマラソンへの挑戦

Bare GREENのオープンから1年半が経ったころ、マラソンが大好きな梨沙さんと結婚。新婚旅行として、世界各地のマラソン大会に参加するプランを立てます。

「僕はマラソンが好きなわけではなかったのですが(笑)、梨沙に影響されてホノルルマラソンや東京マラソンなどに二人で参加していました。そんな中で、海外マラソンってどんな感じだろう?という話題になり、やれるときに挑戦してみよう!ということになったんです」

夫婦として初めて挑戦したい!と思ったことをやらなければ、これから先も夢のある夫婦でいられなくなる…そんな気持ちもあったといいます。

当時、海外マラソンについて知る人は少なく、旅行会社で取り扱っているケースもほとんどありませんでした。そのため、自分たちで情報を集めていくことからスタート。調べていくと、世界のいろいろな場所でマラソン大会が開かれているものの、日本人はほとんど参加していないことがわかってきました。千葉さんは「僕たちが体験したことを発信すれば、興味を持つ人たちがいるんじゃないか」という予感があったと言います。

一方で軌道に乗り始めたBare GREENについては、共同経営の友人に舵取りを任せることを決めました。「ハネムーンマラソンのことを相談したら、『ちばっちらしくていいんじゃない?行っておいでよ!』と後押ししてくれて」。店とは関係のない活動を応援してくれたことに、心から感謝したそうです。

マラソン大会を思い切り楽しむために、コペンハーゲンマラソン(デンマーク)では、ピーターパン(千葉さん)・ティンカーベル(梨沙さん写真右、日本から合流した友人写真左)に仮装。仮装するランナーは珍しく、一緒に走るランナーや沿道で応援する人たちからたくさん声をかけられたそう。
マラソン大会を思い切り楽しむために、コペンハーゲンマラソン(デンマーク)では、ピーターパン(千葉さん)・ティンカーベル(梨沙さん写真右、日本から合流した友人写真左)に仮装。仮装するランナーは珍しく、一緒に走るランナーや沿道で応援する人たちからたくさん声をかけられたそう。

第2話では、ハネムーンマラソンから広がっていった人の輪や活動についてお話を伺います。(大垣)

連載一覧

好奇心と共に人生を駆け抜ける

#1 ハネムーンマラソン誕生前夜

#2 42.195km先もチャレンジは続く

プロフィール

千葉慎也

合同会社AmazingAdventure(アメージング出版)代表、自然派ダイニング Bare GREENオーナー。大学卒業後、開発コンサルタント会社で4年間勤務し、起業。自然派ダイニングBare GREENの経営を皮切りに、新婚旅行として13カ国の海外マラソンを敢行したハネムーンマラソン、マラソンイベントの企画・運営、出版事業、旅とギフトをセットにした新しいスタイルのギフトサイトTABITOMO Gift開設など多彩に活動する。

自然派ダイニング Bare GREEN
https://www.facebook.com/baregreen/

ハネムーンマラソン
http://honeymoonmarathon.com/

アメージング出版
http://www.amazing-adventure.net

TABITOMO Gift(開発中)
http://tabitomogift.com/

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