コミュニティの底力を試す4ヶ月 ゼミ#5レポート

2022.03.31
コミュニティの底力を試す4ヶ月 ゼミ#5レポート

コミュニティという言葉を聞いて、あなたは何を、そして誰を思い浮かべるでしょうか。あたりまえの日常生活が一変したこの2年、人とのつながりや、つながりから生まれる可能性に気づく、いい機会になったようにも思います。

「今こそ コミュニティの底力」をテーマに行われた、まちのインキュベーションゼミ#5。地域の支え合いが見直されている中、コミュニティを軸に想いを持った30人が集まりました。10代〜70代まで、バックグラウンドは様々。自分のやりたいを貫いた4ヶ月、誰かのやりたいを支えた4ヶ月。それぞれの想いがどのような形となったのか、3つのチームの実践をご紹介します。

緑のない場所に緑を

自分の得意分野を生かした実践を行いたいとゼミに参加した志村恵美さん。テーマは植物。「緑のない場所には緑を、花のない場所には花を」という想いを胸に、植物を販売するだけではなく、メンテナンスや植え替えなどを行える場の実現を目指しました。

集まった4人のメンバーと構想のブラッシュアップを重ねていく中、開催場所の決定や集客に苦戦することも。それでも自分の植物への想いとやりたいことに真摯に向き合い、ついにアイデアは盆栽のワークショップという形に着地しました。

参加者にレクチャーする志村さん。お手入れ方法や盆栽について、一つ一つ丁寧にお話しています。
参加者にレクチャーする志村さん。お手入れ方法や盆栽について、一つ一つ丁寧にお話しています。

3人の参加者を迎え、和気あいあいとした様子で始まったワークショップ。志村さんが進行に集中することができた背景には、メンバーたちの存在がありました。それぞれが撮影役や参加者の見守り役など、自分の役割をしっかりとこなし、リーダーをサポート。ワークショップを終えた志村さんの顔には、自分の想いをみんなに共有できた達成感と、不安や緊張から解放された安堵の表情が見えました。

今回の実践を経て、「自分のやりたかったことが間違っていなかった」と語った志村さん。やりたいことの構想だけにとどまらず、メンバーとともに実践まで走り抜けたからこそ、口にできた言葉ではないでしょうか。ワークショップ後には、メンバー間ですぐさま反省会が行われる場面も。志村さんの挑戦は、まだまだこれからです。

参加者は盆栽づくりに挑戦。メンバーが優しくサポートしている場面も。
参加者は盆栽づくりに挑戦。メンバーが優しくサポートしている場面も。

気軽に集まれる、地域の居場所を

ご自身が病気になった際、周囲の人のつながりに何度も助けられた経験から、誰もが気軽に立ち寄れる居場所をつくりたいと、ゼミに参加した山下陽子さん。社会福祉士という資格を生かして、身近なところに専門家がいる環境の実現に向けて走り出しました。

アイデアを形にするまでにキーとなったのは、人の“つながり”。やりたいことの軸をしっかりと持ちながらも、具体的には決めすぎず、関わってくれそうな人に相談しながらアイデアを具現化していきました。

自治会館を開放し、誰もが居場所だと感じられるよう、様々なスペースが用意されてました。
自治会館を開放し、誰もが居場所だと感じられるよう、様々なスペースが用意されてました。

実践は地域の自治会館を開放し、『ふじみ町みんなのおうち』と題して開かれました。そこにはたくさんの“つながり”から生まれた1つの空間が。地域の文房具屋として60年以上愛され、惜しまれながらも閉店した「かとぶん」の出張店舗や、立川子育て支援界のレジェンドとして長年活躍している方々の姿も。

他にも、子どもたちが大学生に勉強を教えてもらったり、子育て中のママパパが専門職スタッフに日々の悩み事を相談できたりと、関わってくれる人は多岐に渡りました。そこはまさに「みんなのおうち」となっており、山下さんの当初描いていたアイデアがしっかりと形になった瞬間でした。

大学生による子どもたちの学習支援。幅広い年代が関わってくれています。
大学生による子どもたちの学習支援。幅広い年代が関わってくれています。

「言葉による分断のない居場所づくりをしたい」と話してくれた山下さん。「みんなのおうち」と題した背景には、“支援”や“福祉”などの言葉を使うことによって、来る人やサポートできる人の幅を狭めたくないという想いがありました。

やりたい想いを軸に、周りの人を巻き込んでいく。想いはどんどんつながり、思ってもみなかった化学反応を生み出すことも。今回の“つながり”がどこまで広がっていくのか、山下さんのこれからの活動に目が離せません。

たまたまそばを歩いていた親子が庭で遊ぶ姿も。中でも外でも「みんなのおうち」が広がります。
たまたまそばを歩いていた親子が庭で遊ぶ姿も。中でも外でも「みんなのおうち」が広がります。

ママと子どもに寄り添った社会を

前回のゼミ#4ではチームメンバーの1人として参加していた島田さん。今回はリーダーとしての参加です。自らが長年、精神科の医療・福祉の現場で働いてきた経験より、精神的な生きづらさを抱える人たちをサポートできるような場所の重要性を感じていました。特に焦点を当てたのが、生きづらさを抱えるママとその子ども。気軽に立ち寄って、くつろいだり相談したりできる場所の実現を目指しました。

4人のメンバーとともにアイデアを具体化していく中で苦戦したのが、想いの共有。専門的な知識が必要になる部分もあるので、まずはメンバーに精神的な問題とは何かを知ってもらうことからスタート。専門家の先生の勉強会などを経て、メンバーとの想いの誤差をなくしていきました。

アイデアは、ママと子どもに焦点を当てたワークショップ形式の講座という形に着地。小金井市の公民館で行われた「小学生のストレス講座」には、低学年の小学生とその保護者の約10名が参加しました。コロナ禍の中で子どもたちが不安を抱えやすい今、自分の素直な気持ちに気づき、表現し、ストレスとの付き合い方を知って欲しいという島田さんの想いを体現する内容となりました。

パペットを使った子どもたちにもわかりやすい内容で、リラックスした雰囲気の中でレクチャーは進んでいきます。
パペットを使った子どもたちにもわかりやすい内容で、リラックスした雰囲気の中でレクチャーは進んでいきます。

レクチャーの後には、リフレッシュできるアロマスライム作りに子どもたちが挑戦。スライム作りは、メンバーを中心に進行し、島田さんは保護者の方へのフォローに。中には話し込むママもおり、気軽に相談できる空間が生まれていました。

実践を経て、今後は精神保健福祉士の経験を生かした活動をしていきたいと意気込みます。生きづらさを抱える人に1対1で寄り添える相談所を開きながら、今回のようなママや子ども向けのイベントを行いたいのだそう。改めてリーダーとして参加したゼミで多くの気づきを得たという島田さんの活躍に、今後も注目です。

メンバーが主体となったスライム作り。子どもたちも興味津々です。
メンバーが主体となったスライム作り。子どもたちも興味津々です。

誰かとつながり、進んでいく

自分のやりたいを、誰かとやってみる。つながりができる。そして、アイデアが形となり広がっていく。最初は見ず知らずの他人だったあの人が、1つの目標に向かって走り出す仲間になる。人とつながることで、様々な気づきと発見が生まれ、自分1人ではできなかったこともできる。
「コミュニティの底力」とその可能性を感じた、今回の実践。実践を終えたゼミ生は、4ヶ月を走り抜けた達成感と一歩踏み出した自信に満ち溢れていました。

今回のリーダーたちの姿を参考に、自分のやりたいことに向き合い、あなたも挑戦してみてはいかがでしょうか。まちのインキュベーションゼミの開催が決定しましたら、こちらでお知らせしますので、気になる方はぜひご参加ください。

まちのインキュベーションゼミ#5「コミュニティの底力」紹介ムービー
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