42.195km先もチャレンジは続く

2018.01.25
42.195km先もチャレンジは続く

ハネムーンマラソンの先駆者である千葉慎也さん。世界各地を旅しながらマラソン大会に参加するという、新婚旅行の新しい形を生み出しました。さまざまな困難を乗り越え実現させたハネムーンマラソンをきっかけに、新しい活動が広がっています。

想像できる将来なんてつまらない

海外旅行が好きな千葉さんと、マラソンが大好きな梨沙さんの新婚旅行は、世界各地のマラソン大会に参加するというものでした。とはいえ、計画を立てようにも何から手をつけて良いかさっぱりわからなかったそうです。そんな中、友人たちがいろいろとアイデアを出してくれました。「企画に名前をつけよう」「予算は?」「期間は?「どうやってエントリーする?」——たくさん問いかけられたことで、やるべきことが整理されていきました。

インド・ドバイ・モロッコ・スペイン・フランス……こんな機会はもう二度とないかもしれないから、「やれるだけやってみよう!」という勢いで計画を練りました。企画名は“ハネムーンマラソン”、SNSでの発信も始め、出発前からブログアクセスランキングで1位になるなど盛り上がっていきました。

一方で、二人の計画を発信するにつれ、応援の言葉とともに、「何がしたいの?」「新婚旅行でそこまでする?」といった否定的な意見も聞こえてきました。「梨沙は泣いて帰ってきたこともあって」と当時を振り返る千葉さんですが、どの言葉も自分たちにとって必要な言葉、と受け止めていきました。

ほんの少し前までは、自分たちがそんな活動に挑戦するとは想像すらしていなかったものの、想像できないことが待っているから人生は面白い、そんな千葉さん夫婦の考え方が計画の実現につながったのでしょう。こうして2016年1月から半年にわたり、13カ国のマラソン大会に参加する新婚旅行がスタートしました。

ウエディング風の衣装で走ったパリマラソン。治安の悪さからビクビクする気持ちを吹き飛ばすため、「42kmを思う存分楽しもう!」とこの仮装を思いついた。多くのランナーや応援者から祝福の言葉をかけられ、“マラソン×ハネムーン(ウエディング)”の力を改めて感じたそう。
ウエディング風の衣装で走ったパリマラソン。治安の悪さからビクビクする気持ちを吹き飛ばすため、「42kmを思う存分楽しもう!」とこの仮装を思いついた。多くのランナーや応援者から祝福の言葉をかけられ、“マラソン×ハネムーン(ウエディング)”の力を改めて感じたそう。

ハネムーンマラソンから広がる活動

出発前は、半年かけて世界各地のマラソン大会に参戦する間、新たなしごとの種をみつけようと思案していたといいます。しかし実際、そのときに芽が出たものはありませんでした。「フルマラソンを1カ月に3回やるって、想像以上に体への負担が大きく、考える余裕がありませんでした…」。それでも、20カ国以上を周り、80カ所以上の場所で宿泊する移動生活の中で出会った人たち、感じたことをブログに綴り、インスタグラムへのアップはマメに行なっていました。

帰国してみると、その発信を受け止めた人たちが確かにいることに気づかされたといいます。「帰国してから、ハネムーンマラソンという言葉が少しは育っていて、「インスタグラム見てますよー」とお声掛けいただいたり、イベントを企画すると集まってくれたりということにつながっていきました」——言葉の力を実感する出来事だったようです。

そして自らも、ハネムーンマラソンの体験記をまとめました。それが、梨沙さんと共著の『ハネムーンマラソン〜世界一周ぐるりRUN〜』です。この書籍の発行が、千葉さんの次の活動へとつながっていったのです。

ハネムーンマラソンについてラジオで話したり、講演を行うこともあるそう。
ハネムーンマラソンについてラジオで話したり、講演を行うこともあるそう。

出版事業の扉を開ける

書籍を出版する手順は一般的に、出版社への企画や原稿を持ち込むことから始まります。そして出版社サイドで出版するかどうかが決められます。「出版社が首を縦に振らないと自分の想いを書けないなんて、なんかしっくりこなくて。僕らも最初、ハネムーンマラソンの本を出してもらうために、いろいろな出版社に企画を持ち込んだのですが、結構断られて。いろいろ調べてみたところ、出版社を自分でつくれることが分かり、アメージング出版の設立に至りました」。

2017年はじめにアメージング出版を設立し、8月にホームページを立ち上げると、次々と問い合わせが入るようになりました。すでに8冊の書籍を発行し、今も10件以上が発行を待っている状態だといいます。心がけていることは、どんな問い合わせにも必ず返信をし、包み隠さず全てに答えること。当たり前のことではありますが、千葉さん自身が書籍を出版しようとさまざまな出版社に連絡したとき、半分は返事がなかったという経験に基づいています。また、出版といっても目的は様々で、著者目線になって本作りに励んでいるそうです。

アメージング出版が手がけた第1号の書籍はもちろん、千葉夫婦が書いた『ハネムーンマラソン〜世界一周ぐるりRUN〜』。
アメージング出版が手がけた第1号の書籍はもちろん、千葉夫婦が書いた『ハネムーンマラソン〜世界一周ぐるりRUN〜』。

ないものをつくり出すことが、自分のしごと

千葉さんの新たな挑戦に対し、周囲ではどんな反応があったのでしょうか。

「ハネムーンマラソンのときもそうでしたが、出版会社をつくったときも、将来の方向性が分からない、ビジョンが見えない……などなど、いろいろな意見をいただきました。だけど、僕自身は飲食店をやっているから出版はやっちゃダメなんて思っていませんし、今も自分がなにをやりたいのかわかりません(笑)。でも、そのときそのときで面白そうと感じたことを素直にやる、ゼロから1をつくりあげていく、そこにしごとの魅力を感じているからです」ときっぱり。

そんな千葉さんだから、10年、20年先のビジョンはないし、あえてつくろうとも思わないそう。出版事業も、今は問い合わせが多いけれど、速いスピードで動いているので、いずれなくなるのでは、と冷静です。一つのことをずっと続けていく必要はないという千葉さん自身の考えを裏付けています。

「結婚をしてこれから家族も増えるだろうから、目先のお金をどうするかということももちろん考えています。でも、できるだけそこにとらわれないように意識しています。例えば今はダメでも、何カ月か先で取り返すぞ、そんな風に考えています」。現在は、出版業を中心に動きつつ、友人たちと一緒に旅とギフトを掛け合わせたサービスを新たに考えているところです。

ハネムーンマラソンで得た挑戦することの意味、人との出会い、今を大切に生きることーーそれらがすべて、千葉さん夫婦の糧となっています。人生という道をどう走るか、千葉さんはこれからも楽しみながら走り続けていくことでしょう。(大垣)

小金井公園でマラソンイベントを開催。自然派ダイニング「Bare GREEN」を通じて知り合った地元の皆さんの協力なくしては成り立たなかったイベント。
小金井公園でマラソンイベントを開催。自然派ダイニング「Bare GREEN」を通じて知り合った地元の皆さんの協力なくしては成り立たなかったイベント。
連載一覧

好奇心と共に人生を駆け抜ける

#1 ハネムーンマラソン誕生前夜

#2 42.195km先もチャレンジは続く

プロフィール

千葉慎也

合同会社AmazingAdventure(アメージング出版)代表、自然派ダイニング Bare GREENオーナー。大学卒業後、開発コンサルタント会社で4年間勤務し、起業。自然派ダイニングBare GREENの経営を皮切りに、新婚旅行として13カ国の海外マラソンを敢行したハネムーンマラソン、マラソンイベントの企画・運営、出版事業、旅とギフトをセットにした新しいスタイルのギフトサイト「TABITOMO Gift」開設など多彩に活動する。

自然派ダイニング Bare GREEN
https://www.facebook.com/baregreen/

ハネムーンマラソン
http://honeymoonmarathon.com/

アメージング出版
http://www.amazing-adventure.net

TABITOMO Gift(開発中)
http://tabitomogift.com/

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