日本でまちづくりや地域活性の仕事に携わったのち、2024年4月よりフィンランドに滞在中のライター・杉田が現地で見た景色や感じたことをコラム形式でお届けします。今回は、ことわざからみる北欧ならではの天候との向き合い方に関する話です。
これは、フィンランドや北欧の国々に伝わることわざ。
出かける予定を立てていたのに、外はあいにくの雨。「天気悪いなあ…」と残念がるわたしに、友人がかけてくれた言葉です。フィンランド渡航前に読んだ本に、このことわざについて書かれていた覚えがあります。その時はあまり気に留めていませんでしたが、今になって、毎年毎年決して過ごしやすいとは言い難い気候とともに生きる、北欧の人々らしい精神だなと納得。その逞しさは、天候や自然との向き合い方に限らず、与えられた環境の中で生きる術として、見習うべきものがあるように感じています。
12月の冬至を境に、少しずつ日は延びてきているものの、気温は連日氷点下。太陽が全く顔を覗かせない日もめずらしくなく、窓の外が吹雪いていると、外出のモチベーションは簡単に削がれます。でもそんな時に、ふと、このことわざが頭に浮かび、足の先から頭のてっぺんまで、しっかりと着込んで外に出れば、案外天気なんてどうってことなかったりするのです。
そして、屋内はどこに行ってもエントランスや玄関を含め、建物全体にセントラルヒーティングが機能していて、道路は除雪車のおかげできれいに整備されており、中心市街の一部では地下に融雪用のパイプが通っているそうで、雪が積もることもなく、実際に生活してみると、寒さを意識する瞬間は案外少ないもの。
屋外でも、街ゆく人々はしっかり防寒をして、寒さをものともせずに生活しているように見え、自分もその中に混じっていると、いつの間にか凍てつく寒さを忘れてしまうほどです。子どもたちはみんなツナギに全身をすっぽり包まれ、真冬でも元気よく走り回ったり、そり遊びをしているのを見かけます。雨の日も、雪の日も、それを回避するのではなく、適切な服装を着て真正面から楽しみにいく…まさに、あのことわざが表す姿勢そのものです。
この言葉を知ってから、どんな天候も嘆くよりも楽しみ、うつくしいと思えるようになりました。厳しい気候と共に生きるフィンランドならではの考え方に学んだ姿勢の一つです。
1994年東京都生まれ、ライター。地方のデザイン会社でライター・編集者として、7年間にわたり、さまざまな自治体のプロモーションやまちづくり、イベント企画に携わったのち、現在はフィンランドに滞在しながらこれからの人生を模索中。異国の地に来ても“デザイン”や“まちづくり”の視点でものを見るクセが抜けない。
悪い天気なんてない、悪いのは服装だ。 (There is no bad weather, only bad clothing)