There is no bad weather, only bad clothing

2025.02.05
There is no bad weather, only bad clothing

日本でまちづくりや地域活性の仕事に携わったのち、2024年4月よりフィンランドに滞在中のライター・杉田が現地で見た景色や感じたことをコラム形式でお届けします。今回は、ことわざからみる北欧ならではの天候との向き合い方に関する話です。

悪い天気なんてない、悪いのは服装だ。 (There is no bad weather, only bad clothing)

これは、フィンランドや北欧の国々に伝わることわざ。
出かける予定を立てていたのに、外はあいにくの雨。「天気悪いなあ…」と残念がるわたしに、友人がかけてくれた言葉です。フィンランド渡航前に読んだ本に、このことわざについて書かれていた覚えがあります。その時はあまり気に留めていませんでしたが、今になって、毎年毎年決して過ごしやすいとは言い難い気候とともに生きる、北欧の人々らしい精神だなと納得。その逞しさは、天候や自然との向き合い方に限らず、与えられた環境の中で生きる術として、見習うべきものがあるように感じています。

日本で使っていた手袋ではこと足らず、普段はスキー用の手袋を装着。写真を撮ろうと手袋を外した瞬間、指がちぎれるほどの寒さだったことを思い出す。川は水面が一部凍っている。
日本で使っていた手袋ではこと足らず、普段はスキー用の手袋を装着。写真を撮ろうと手袋を外した瞬間、指がちぎれるほどの寒さだったことを思い出す。川は水面が一部凍っている。

12月の冬至を境に、少しずつ日は延びてきているものの、気温は連日氷点下。太陽が全く顔を覗かせない日もめずらしくなく、窓の外が吹雪いていると、外出のモチベーションは簡単に削がれます。でもそんな時に、ふと、このことわざが頭に浮かび、足の先から頭のてっぺんまで、しっかりと着込んで外に出れば、案外天気なんてどうってことなかったりするのです。
そして、屋内はどこに行ってもエントランスや玄関を含め、建物全体にセントラルヒーティングが機能していて、道路は除雪車のおかげできれいに整備されており、中心市街の一部では地下に融雪用のパイプが通っているそうで、雪が積もることもなく、実際に生活してみると、寒さを意識する瞬間は案外少ないもの。

一年で最も日が短い冬至間際の、フィンランド・トゥルクの日の出は9時30分、日の入りは15時30ごろ。暗い時間が長いので、安全確保のために、大人でもリフレクターを装着していたり、明るい色のジャケットが欠かせない。雪が降ると景色が明るく、眩しい
一年で最も日が短い冬至間際の、フィンランド・トゥルクの日の出は9時30分、日の入りは15時30ごろ。暗い時間が長いので、安全確保のために、大人でもリフレクターを装着していたり、明るい色のジャケットが欠かせない。雪が降ると景色が明るく、眩しい

屋外でも、街ゆく人々はしっかり防寒をして、寒さをものともせずに生活しているように見え、自分もその中に混じっていると、いつの間にか凍てつく寒さを忘れてしまうほどです。子どもたちはみんなツナギに全身をすっぽり包まれ、真冬でも元気よく走り回ったり、そり遊びをしているのを見かけます。雨の日も、雪の日も、それを回避するのではなく、適切な服装を着て真正面から楽しみにいく…まさに、あのことわざが表す姿勢そのものです。
この言葉を知ってから、どんな天候も嘆くよりも楽しみ、うつくしいと思えるようになりました。厳しい気候と共に生きるフィンランドならではの考え方に学んだ姿勢の一つです。

ベビーカーに乗っている小さな子から、小学生くらいの子まで、子どもたちは制服のように、全員が全身すっぽり包まれるツナギを着ている。フィンランドの特有の冬から春にかけての日常風景
ベビーカーに乗っている小さな子から、小学生くらいの子まで、子どもたちは制服のように、全員が全身すっぽり包まれるツナギを着ている。フィンランドの特有の冬から春にかけての日常風景
クリスマスマーケットでの一コマ。クリスマスイルミネーションやキャンドルやニットといった冬ならではのアイテム、クリスマスに飲むホットドリンク“Glögi”など、寒さよりも温かさに自然と目が向く
クリスマスマーケットでの一コマ。クリスマスイルミネーションやキャンドルやニットといった冬ならではのアイテム、クリスマスに飲むホットドリンク“Glögi”など、寒さよりも温かさに自然と目が向く

プロフィール

杉田映理子

1994年東京都生まれ、ライター。地方のデザイン会社でライター・編集者として、7年間にわたり、さまざまな自治体のプロモーションやまちづくり、イベント企画に携わったのち、現在はフィンランドに滞在しながらこれからの人生を模索中。異国の地に来ても“デザイン”や“まちづくり”の視点でものを見るクセが抜けない。

https://www.instagram.com/e_sary125/

245view
Loading...