そばではたらく
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週末だけ小さな額縁のお店を開く

東小金井駅の高架下で、様々なサイズやデザインのミニフレームを販売するハコヤマ。2020年9月にオープンしてから、もうすぐ1年を迎えます。このお店を立ち上げたのは、原田崇さん。原田さんは平日は額装を手掛けるマルカツアートスタジオの本社工場に勤務しながら、日曜と祝日にハコヤマを運営しています。
今回の取材では、会社を続けながらハコヤマを開業するに至った想いや経緯、今感じているやりがいなどについて詳しくお話を伺ってきました。

額縁をもっと多くの人のそばに

2020年9月にオープンしたハコヤマは、小さなサイズの額縁“ミニフレーム”を扱うお店。店内には所狭しと様々なサイズ・デザインのミニフレームが陳列されています。
 
扱っているミニフレームは、額縁を製作する際に余った資材やメーカーのデッドストック材を用いて作られているそう。そのため、大きさやデザインも種類豊富で、バラエティ豊かな品揃えとなっています。

モールディング端材などで作られたミニフレームを多数販売している

ハコヤマの店主を務めている原田崇さんは、額装を手掛けるマルカツアートスタジオのスタッフであり、工場で額縁を入れる箱作りの業務を担当。平日は箱作りのしごとを行いつつ、日曜・祝日のみハコヤマを運営しています。
 
なぜ原田さんは、工場のしごとを続けながら、あえてお休みの日にミニフレームのお店を開いているでしょうか。開業までの経緯を原田さんはこう語ります。

「もともと絵が好きで、今のしごとをする前には、フリーランスのイラストレーターや絵の専門学校の非常勤講師としてはたらいていました。工場では主に作家さんなどから依頼を受けて作品に合う額縁を作る額装を行っていましたが、業界を盛り上げるためにも多くの方に額縁の魅力を伝えたいと、実店舗の運営も手掛けるようになって。また、自分自身もはたらく中で額縁の一般的な認知度がまだまだ低いと感じることもあり、“作家さんや画廊に限らず、額縁がみんなの身近な存在になってほしい”と強く思うようになりました」
 
そうした想いを胸に抱いた原田さんが考えたのが、ミニフレームを中心にした額縁屋の開業だったとか。
 
「会社で初めて出店した西荻窪にある店舗・Atmosphere(アトモスフィア)ではオーダーフレームの受注が主な業務でミニフレームの販売はおまけ的な存在でした。でも、オーダーフレームだけでなく、ミニフレームもお客様に好評だったので、“ミニフレーム専門店も需要があるのでは?”と思ったんです」
 
こうして新店舗の開業に向けて、扱う商品や店舗の場所などについて具体的なイメージを膨らませていきました。

ハコヤマの店主である原田崇さん。工場ではたらく傍ら、日曜・祝日のみ額縁屋を営んでいる

身近なまちで、ミニフレーム専門店を立ち上げ

原田さんがミニフレーム専門店を構える場所として考えたのは、JR中央線が通る東小金井駅の高架下にあるシェア施設MA-TOです。もともと東小金井近辺に住んでいた原田さんは、その存在を知っていたそう。
 
「立地的にも、広さ的にも、家賃的にもちょうどいいかなと思いました。取引先や西荻窪のお店とも適度に近かったことや、東小金井ののんびりとしたまちの雰囲気も決め手になりました。社長に提案したら、すごく気に入ってくれてスグに快諾してくださったんです」
 
そして、会社公認でミニフレーム専門店の開業準備が本格的にスタートしました。
 
予算の都合もあり、床に板を敷いたりといった内装工事や商品の搬入作業などは原田さんが、店内に置く陳列棚づくりは社長さんが担当したそう。本社工場にある木材や機械などを使い、作業を着々と進めていったといいます。

商品を並べている陳列棚は手作り

しかし、工場のしごとと並行して開業準備を進めていたため、時には夜中に作業することもあったと笑って振り返る原田さん。加えて、緊急事態宣言解除の時期と重なってそれまで止まっていた案件が再び動きだしたりと、想定外の忙しさに翻弄される時期もあったとか。

ところが、当時についてこう原田さんは振り返ります。
 
「お店のコンセプトやラインナップなど、自分のアイデアが着々と形になっていくので、特に作業中にツライと思うことはなかったです。もともと、ものをつくるのが好きですし。とても忙しかったですが、楽しみながら作業できましたね」
 
こうして多忙を極めつつも着々と開店準備を進め、ついに2020年9月にハコヤマがオープンしました。

自分で決めたしごとだから、楽しい

現在も工場での額縁を入れる箱作りと並行して、ハコヤマを運営している原田さん。決まった休みは土曜日だけで、東小金井近辺から埼玉に引っ越したため片道2時間かけて自転車でハコヤマまで来ているそうです。原田さんは今のはたらき方をどう感じているのでしょうか。
 
「ハコヤマの立ち上げは僕が提案したことですし、はたらき方や営業日についても、自分で決めました。だから、楽しみながらしごとを行えています。誰かにやらされている、という感覚は無いです。もちろん大変なことはあるけど、はたらき方に関してストレスはあまり感じません」
 
今は原田さん一人でハコヤマでの接客・販売等を担当しているため営業日は日曜・祝日のみとなっていますが、ゆくゆくは人員を増やして営業日を増やしたいと語ります。その先には、業界の将来への展望がありました。
 
「額縁業界は年齢層が高く、ふだん働いている工場のスタッフも自分より上の世代が多いんです。でも、今後も発展していくためには若い人材を育てなければいけないと思うので、より多くの世代に額縁に興味をもっていただくためにも、今後は業界にどんどん新しい人を取り込んでいきたいですね」

工場では黙々と作業するころが多いので、ハコヤマでのしごとが気分転換に。前職での販売や接客の経験も活かせているそう

客層も広がり、やりがいを感じるように

ハコヤマの店内に陳列してあるミニフレームのサイズは様々。一般的な額縁屋では需要の多いポストカードやL判の写真が入るサイズの額縁を取り扱うことが多いそうですが、ハコヤマでは逆にそういったサイズの商品は少ないのだとか。そのため、他の額縁屋にはない個性的なデザインのミニフレームも多く、中には店頭にて「このサイズの額縁はどんな用途で使うんですか?」とお客様に質問される機会もあると原田さんは言います。

「来店されるお客様は作家さんなど作品づくりなどを行っている方だけでなく、たまたま通りすがった方がいらっしゃることも多いですね。“額縁は絵画を飾るためだけでなく、刺しゅうのモチーフを飾ったり、紙にひとこと言葉を描いて飾ったりしても素敵ですよ”と、お客様に提案することもあります」

作家さんの中には、購入した額縁に合わせて作品をつくる方も多いとか

店頭ではミニフレームの他、額縁を立てかけるためのパーツなども販売している

ハコヤマのオープンから約11ヵ月経った今、店舗へ訪れる方の客層が広がり、やりがいを感じるようになったという原田さん。最近ではリピーターのお客様も次第に増えてきていると言います。

中には、ミニフレームの通信販売を希望するお客様も多いそう。しかし、ハコヤマのミニフレームは量産しておらず、額縁を製作する際に余った資材やメーカーのデッドストック材を用いて作られておりそれぞれサイズもデザインも異なるため、ひとつひとつネットなどで販売するのはなかなか難しいのだと言います。
 
「できればお店に来ていただいて、実際にミニフレームを手にとって商品を選んで、比べる楽しみを味わってもらいたいですね。そして、額縁をもっと多くの人に楽しんでもらいたいですし、業界も盛り上げられたら良いなと思います」

お客様に額縁の飾り方を提案することも。「お客様との対話もやりがいに繋がっている」と原田さんは語る

チャンスは掴みとるだけでなく、生み出せるものでもあります。例えば原田さんのように、会社員として工場で働きながらも、自らミニフレーム専門店の新規立ち上げやはたらき方を提案して実現していく。ここにも、新しいはたらき方の可能性が広がっています。
 
“型に嵌らず、一歩前に歩み出ること”――。
夢や自分らしいはたらき方を叶えるためには、チャンスを待っているだけでなく、自分から行動を起こすことも大切であると今回の取材を通して教えてもらいました。(三島)

プロフィール

原田崇

ハコヤマの店主。額装を手掛けるマルカツアートスタジオにて額縁を入れる箱を製作する傍ら、自ら社長にミニフレームを販売する店舗を新たに作ることを提案して賛同を得る。提案が通った後は、本業である箱の製作と同時進行で徐々に開店準備を進め、2020年9月に東小金井駅の高架下にあるシェア施設「MA-TO」にてミニフレームを扱う店舗をオープンした。現在平日は本社工場にて作業を行い、日曜・祝日はハコヤマにて店主を務めている。
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