日本でまちづくりや地域活性の仕事に携わったのち、2024年4月よりフィンランドに滞在中のライター・杉田が現地で見た景色や感じたことをコラム形式でお届けします。今回は、水辺での過ごし方に関する話です。
“森と湖の国”と呼ばれるほど、緑と水辺が身近にあるフィンランド。地図で見ても湖の多さは明らかで、その数は18万にものぼるのだそう。
わたしがフィンランドに来たのは4月上旬。その頃は、まだ雪が降る日もあり、湖は白く凍りついていました。しかし、5月に入り気温が15度くらいまで上がると、湖畔の景色は一変します。木々には新芽が芽吹き、湖面は溶けてきらきらと輝くブルーに。人々も一気に夏の装いへと衣替えをし、水辺で想い想いの時間を過ごします。
芝生にピクニックシートを広げ、音楽を流しながらビールを片手にくつろぐカップル、ハンモックに揺られ一人読書をする若者、水着姿で気持ちよさそうに日光浴する年配の夫婦、愛犬との時間を楽しむファミリー。まるでリビングをそのまま外に持ち出したかのように、湖畔にはそれぞれの暮らしがありました。
特に5月から6月、7月にかけては1年の中で最も日が長く、夜10時から11時ごろまで日が沈まないので、フィンランドの人々は長い1日をここぞとばかりに満喫します。長く暗い冬を乗り越えた現地の人にとっては、太陽の光が余計にありがたく感じられるのでしょう。
木陰にハンモックを張ったり、ベンチをベストポジションに移動させて景色を楽しんだり、本当にみんな居場所づくりが上手。そして、わたしもそんなフィンランドの人たちをお手本に、お気に入りのベンチで音楽を聴いたり、ただぼーっと景色を眺めたり、読書をしたり、水辺でのくつろぎの時間を何度も繰り返し過ごしました。最初は少しそわそわしたり、余計なことを考えてしまったり、一人で外でくつろぐって案外難しい…と感じていましたが、すぐに慣れ、心地よいリフレッシュの時間に。現地の人々にとっても、わたしのような外から来た人にとっても、水辺は心安らぐ大切な場所なのです。
1994年東京都生まれ、ライター。地方のデザイン会社でライター・編集者として、7年間にわたり、さまざまな自治体のプロモーションやまちづくり、イベント企画に携わったのち、現在はフィンランドに滞在しながらこれからの人生を模索中。異国の地に来ても“デザイン”や“まちづくり”の視点でものを見るクセが抜けない。