私がローカル企業に転職した理由

2023.07.20
私がローカル企業に転職した理由

都心の企業を離れて、家族や暮らしのそばで仕事をする。転職して、そんな郊外型ワークスタイルを実践する3人が集まり、働き方の変化やキャリアの築き方をテーマに座談会を行いました。タウンキッチンでマネージャーとしてキャリアを築く江波戸絵美さん、新卒から続けた会社を辞めて新しい仕事に挑戦する大高真由子さん、子育て優先から自分のやりたいことを優先した働き方にシフトした毛呂香織さん。子育てやキャリアなどに迷いがちな30・40代で、彼女たちはどう転職を考え、新しい働き方に踏み出したのでしょう。三人のストーリーを通して、自分らしい転職を叶えるヒントやそばで働く面白さが見えてくるかもしれません。

ステップアップ? やりがい? 3人が仕事に求めたこと

―3人とも、40歳前後で大企業から郊外のベンチャーに転職されたんですよね。どういったきっかけや経緯があったんでしょう?

江波戸絵美さん(以下、江波戸) 「前職ではずっと不動産業界の営業職でマンション管理の仕事をしてました。長く営業のキャリアを積んできたんですが、30代後半には1人のプレイヤーとしてでなく、マネジメントする立場で仕事をしたいと考えるようになって。でも、大規模な会社だったので、階級や等級が細かく分かれていて、次のステップまで何年もかかるんです。待つんじゃなくて、早めにステップアップしたいなというのが転職活動を始めた理由ですね」

チームのマネジメントを担う江波戸さん。小学生から中学生まで三人の男子の母でもある。前職では営業でビシッとしたスーツで働いていたそう
チームのマネジメントを担う江波戸さん。小学生から中学生まで三人の男子の母でもある。前職では営業でビシッとしたスーツで働いていたそう

大高真由子さん(以下、大高) 「私は前職が大きなインフラ会社で、経理や財務などのお金回りの仕事。新卒から勤めて10年以上、ひたすら目の前の業務をこなしてる感じがあって、“一体私はどこを向いて仕事をしてるんだろう?”と、仕事の意義がよくわからなくなってしまい……。そんな中で2019年の冬に家族で小金井に引っ越したんですが、その直後にコロナが広がり、家や家のそばにいる時間が長くなって。まちを散歩する中で、今の職場を見つけました(笑)」

広報や施設の修繕業務などを担当する大高さん。小学生二人の子どもを持つ母でもあり、前職では財務系のキャリアを積んできた
広報や施設の修繕業務などを担当する大高さん。小学生二人の子どもを持つ母でもあり、前職では財務系のキャリアを積んできた

江波戸  「散歩が転職のきっかけに(笑)」

大高  「はい(笑)  家を建てて、ここで長く暮らしていくんだなと考えた時に、自分の仕事がこのまちのどんな人にどう役立っているかが、はっきり見える会社に転職したいなと」

毛呂香織さん(以下、毛呂)   「私はお二人と違って一社に長く勤める働き方はしてなくて、これまでは結婚や引っ越し、子育てなどをきっかけに転職してきたんです。出産後は子育て優先で事務職に就きました。“自分が何をしたいか?”というより、勤務時間など、家庭と両立できる条件で絞ってきましたね」

江波戸・大高  「うんうん」

毛呂 「でも、子どもが成長して子育てが落ち着いてきたタイミングで、“本当に心の底からやりたいことって何だろう?”と自分の働き方を見つめ直す機会があって。ノートに自分のキャリアややりたいことを書き出していったんです。そしたら、大高さんのお話と近いですが、私は自分の生活の豊かさに直結する仕事がしたいんだと改めて気づいて、転職することに。自分のやりたい気持ちを優先した転職は、今回が初めてでした」

事務経験を活かし、経理業務を担う毛呂さん。完全な裏方というよりも、みんなで一緒に汗をかくような、事業にコミットできる環境が転職の決め手になったそう
事務経験を活かし、経理業務を担う毛呂さん。完全な裏方というよりも、みんなで一緒に汗をかくような、事業にコミットできる環境が転職の決め手になったそう

江波戸 「毛呂さんは、転職先をどうやって見つけました? 私は、転職前に夫が個人事業主として独立してシェアオフィスに入ったことをきっかけに、そのシェアオフィスを運営するタウンキッチンを知ったので、純粋に探したとは言えないんですが(笑)」

毛呂 「一般的な転職サイトって、時間や勤務地やお給料などの条件を入れて、おすすめの求人が表示される形じゃないですか。それだと、自分が本当に望むような会社や仕事が表示されない。これは違うと思ってたら、キーワードで探せるウェブサイトがあったんです」

大高  「なるほど! どんなキーワードで探したんですか?」

毛呂  「私は結婚前は地方の警察官として働いていて、地震の被災地の災害警備をしたことがあったんです。そこで地域を自分たちで守っていく大切さを実感し、まちづくりやコミュニティに興味があって。それで、まちづくりやコミュニティとキーワードを入れたら、今の職場に辿り着きました(笑)」

今、仕事や暮らしはどう変わった?

―ステップアップ、自分の暮らしと仕事の結びつき、家庭中心の働き方からのシフト。それぞれの思いから転職されたんですね。転職して今、どんな変化を感じていますか? みなさん、自宅と職場が近くなり、自転車で通ってるというのもあると思いますが。

江波戸  「もう転職前の生活には戻れないな(笑) 前職は原宿まで電車通勤してて、急な顧客対応で土日出勤もありました。今は家のそばで電車に乗らずに自転車で来れるし、9時-18時で規則正しく働けて、土日も家族との時間をしっかり取れるようになった。働く環境はすごく変わったと感じてます。今や、電車に乗ると、近くの距離でも“やれやれ”と(笑)」

3人とも今は自転車通勤。家のそばで働くことで、通勤のストレスがなくなったそう
3人とも今は自転車通勤。家のそばで働くことで、通勤のストレスがなくなったそう

大高 「そうそう、新宿まで電車で通ってたので通勤時間が短くなって。江波戸さんと同じく、家族との時間が取れるようになったことは大きいですね」

江波戸 「大高さんは転職して娘さんと一緒に夜ご飯を食べられるようになって、“あれ、お母さんも一緒に食べるの?”って娘さんが不思議そうにしてたと言ってましたよね(笑)」

大高 「(笑) 今までは、平日は帰ってから子どもの寝顔しか見られませんでした。夕飯は、保育園で食べてくるか、子どもが家で自分でチンして食べてたんです。でも今は、例えば子どもに“納豆オムレツ食べたい”って言われたら、“納豆卵かけご飯食べてて”じゃなくて、ちゃんとオムレツを作れる時間がある(笑) ご飯を食べながらゆっくり話もできる。それが幸せです」

毛呂 「私はそんなにハードな仕事はしてこなかったんですが(笑) 通勤時間が自転車で15分になって、通勤前に掃除ができる気持ちと時間の余裕がある。朝掃除ですごくリフレッシュできますね。あとは、家の近くにオフィスがあって、スタッフや施設を利用している創業者の方も近くに住んでいるから、素敵なお店やイベントなど、そばを楽しむヒントを教えてくれることが多い。それで、週末も充実しているんです! 暮らしと仕事が重なって、みんなすごく楽しんでるなって」

前職は大規模な企業で働いてきた三人。それぞれ転職を検討する中で、地元のベンチャー企業に辿り着いた
前職は大規模な企業で働いてきた三人。それぞれ転職を検討する中で、地元のベンチャー企業に辿り着いた

―仕事の面で、これまでの経験を活かしていることや、ここが変わったということはありますか?

江波戸 「前の会社では20戸のマンションで2000人ぐらいのお客さんを抱えてました。利用者対応や修繕、理事会などがあって、どんな問題が起きてるかを全部1人で把握しなきゃいけなくて」

大高・毛呂 「2000人!?」

江波戸 「だから、スケジュールを組んでタスク管理ができてないとどん詰まりになる(笑) たくさんの仕事を同時並行で進めていくのは今も得意としてるので、会社や業種が変わっても、これまでの経験が活きてると感じますね」

大高 「マルチタスクのスキルが」

江波戸 「ただ、前職では仕事のマニュアルがあって、その中のチームの一員として動いてたので楽だったというか。1000人中の1人と、10人の中の1人では、動き方が全然違いますよね。成長中の小さな会社では1つ1つの業務をなぜやるのかから立ち止まって考えて自分で決めていかないと、物事が進まない。その大変さはすごくあると思います」

毛呂  「私は事務で身につけてきた、仕事の進め方や業務改善などのスキルは今も活かせてると思います。しかも今は少人数の会社だから、私が提案をして、チームで“それはいいね”となったらすぐに意見を取り入れてくれる。それが、達成感ややりがいにつながってると思います。どこの部署がやるんだという押し付け合いとか、決定までの前段階が本当に少ない(笑)」

大高 「前職でずっと同じ仕事をしてきましたが、自分に向いてないなと思う時もあったんです。でも仕事を続ける中で、“この面では苦手だけど、この面では得意かも”と、何事も100%難しいことはないとわかって。今は施設の修繕や広報など新しい仕事に挑戦する中で、自分の得意や楽しさがどこにあるのを見つけているところ。やっぱり、施設運営を通してサポートさせていただいた創業者の方が成長したり、まちに面白いお店が増えてコミュニティが広がっていく姿が目に見えるのはやりがいを感じますね」

成長意欲が高い若いスタッフからも、日々、エネルギーをもらっていると大高さん
成長意欲が高い若いスタッフからも、日々、エネルギーをもらっていると大高さん

キャリアやプライベート。これから目指したいこと

―最後に、キャリアやプライベートでこれから目指したいことや、大切にしたいことを教えていただけますか。

毛呂 「これからも、“みんなのためにこうしたらよくなるかな?”という方法を考えて、自分も楽しみながら仕事を積み重ねてきたいなと思っています。あとは、楽しんで仕事をしている自分の背中を、娘に見せたいっていうのもありますよね。娘は娘の人生として応援しながら、私は私の人生。一緒に楽しもうと」

もともと転勤族だったことも、地域のコミュニティづくりに興味を持つきっかけになったと毛呂さん
もともと転勤族だったことも、地域のコミュニティづくりに興味を持つきっかけになったと毛呂さん

大高 「若い頃は仕事も子育ても全力で突っ走ってきましたが、今は老後に向けてスローペースに(笑)  私の親は老後に自宅でパン教室を開いたんですが、とても楽しそうで。30・40代の頃から仕事以外でも楽しみがあると、仲間づくりや老後の時間の使い方に繋がるなと思いました。私も転職して時間に余裕を持てるようになったので、趣味の時間も満喫していて、フェルトでランプシェードをつくってイベントなどで販売してるんです。そこから新しい出会いも生まれていて。ゆくゆくはワークショップを開くのもいいなと思ったり」

職場で、子どもの学校・習い事やイベント、おすすめのお店など、まちの情報を交換することも多いとか
職場で、子どもの学校・習い事やイベント、おすすめのお店など、まちの情報を交換することも多いとか

江波戸 「私は40代になって、心と体の健康を意識するようになりました。健康を崩すと、家族にも影響が出るし、自分の好きなこともできなくなるし、仕事のモチベーションも下がりますよね。だから、心身の健康のためにも、自分がやりたくないと思うことはやらない(笑) 若い頃はやりたくない仕事も歯を食い絞ってやってきて、その積み重ねがあるからこそ今のキャリアに繋がってると思うんですけど。40歳を過ぎたからこそ、いつ何があるかわからないし、後悔しないためにも、“やらない”という選択肢も大事だなと今思ってます」

キャリアや仕事への思い、目標は三者三様。それぞれが自分の働き方について立ち止まって考えて踏み出した結果、今の働き方があります。これから地元での転職を考える方や、新しい働き方に挑戦したい方、今の仕事に迷っている方にとって、きっと一つのヒントになるはずです。

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