一年後、実家が空き家になる?

2022.06.16
一年後、実家が空き家になる?

国土交通省の空き家の定義は「1年間使用実績がない」こと。例えば、高齢の父母が施設や病院に入り、1年以上実家に誰も住んでいない…というケースはよく耳にしますが、この実家が「空き家」であるという意識を持つ人はそう多くはないのかもしれません。10年程前から空き家は“社会問題”としてニュースなどでも取り上げられていますが、もはや誰もが抱えうる“個人の問題”になりつつあります。

空き家所有者やこれから空き家所有者になりうる個人として、どんなことを心得ておく必要があるでしょうか。これまでに数多くの空き家の活用をサポートしてきたリンジン編集部の西田がお伝えします。

「空き家を持つ人」の悩み

多くの人にとって不動産は、法律や大きなお金の絡む“よくわからない”ものであり、“放置できてしまうもの”。気がつけば時は過ぎ、いざとなった時に困ってしまうという状況が生まれがちです。

例えば、以下のような特性を持つ不動産は珍しくないですが、一般市場での流通がしづらく、不動産屋にそっぽを向かれてしまうこともしばしば。

・接道義務を満たしておらず、今ある建物を壊してしまうと二度と建物が建てられない
・今建っている家が現行の法律では容積率・建蔽率オーバー
・狭小地で一般的な大きさの住宅が建たない
・古い擁壁の上や下に建っている

このように、空き家所有者は活用を考えはじめたとたんに様々な壁に直面します。令和元年度に国土交通省が実施した「空き家所有者実態調査」では、今後5年程度の利用意向として「賃貸・売却」の空き家所有者は約2割いるものの、そのうち約4割が「買い手・借り手の少なさ」を課題と感じていることが報告されています。

「空き家を活用したい人」へのマッチングが糸口に

私は、これまで数えきれない程の「空き家を活用して何かしたい」という相談を受けてきました。DIY可能住宅やシェアハウスなどの居住用物件としてだけでなく、住居兼用のカフェやサロン、地域の方が集うコミュニティスペースなどなど、活用したい側の希望は多岐にわたります。

郊外における空き家は、住居としての環境を最優先にした用途地域「第一種低層住居専用地域」に建っていることも多いですが、福祉事務所や学校などの生活に密接に関わるものや、住居兼用かつ一定の広さであれば、住宅地でも店舗や事務所を営むことができるのです。

こうした「空き家を持つ人」と「空き家を活用したい人」のマッチングは、物件情報を条件に基づいて提供する従来の不動産屋のやり方だけでは成立しません。空き家を活用したい人の想いや人柄、具体的な使い方の希望を引き出して、空き家を持つ人の事情にも寄り添いながら、リスク対策も含めて取引内容を提案し、双方にとってフェアな取引をサポートしていく。こうしたことができる相談窓口に出会えれば、一般的に活用が難しいとされる物件であっても、活用の糸口が見つかるかもしれません。

未来の活用に向け、今できること

空き家の活用を見据えて、今から準備できることもあります。

まずは、早めに相続や活用について家族で話し合っておくこと。例えば、所有者を単独にしておけば、活用の意思決定がスムーズになります。相続等を受ける場合には、兄弟で所有権を共有することもよくありますが、売却には全員の同意、賃貸取引やリフォームにも過半数の同意が必要だということが法律で決まっているため、いざ活用したい時になかなか話が前に進まなくなってしまったり、トラブルの元になってしまったりするのです。

また、建物は1ヶ月で急激な劣化もあるため、管理の計画をあらかじめ立てて実行していくことも重要です。空き家管理は想像以上に気力と体力、時間を使うもの。家を壊して土地だけにしてしまった方が楽なのではと考えるかもしれませんが、そうすると特例措置が受けられなくなり固定資産税が上がってしまうため、注意が必要です。外部の管理サービスの利用を検討してみるのもひとつでしょう。

“空き家問題”が他人事ではなくなっていく時代。信頼できるプロに出会い頼りながら、今からできることを準備しておけば、いざとなったときに自分や家族を助けることになるかもしれません。

INFO

空き家管理サポートのご案内

「遠方に住んでいて空き家を手入れできない」「高齢の親が施設にいて実家が放置されている」「空き家をどう管理すればわからない」などのお悩みに寄り添い、月に一度、不動産専門スタッフがお客様の空き家の点検・報告などを行うサービスです。お気軽にお問い合わせください。今年度も東京都「起業家による空き家活用モデル事業」コーディネーターの採択者として相談窓口を開設しています。

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