アイデアを地域で育てる実践型の創業プログラム、まちのインキュベーションゼミ#6が7月30日スタート。その1ヶ月後、アイデアをカタチにするリーダーが選出され、現在実践に向けて動き出しています。今回のテーマは「お店づくり」。自分のお店を開きたい、所有する空き家を活用してもらいたい、将来に向けてお店づくりをサポートしたいと、様々な角度からお店づくりに興味を持つ30名が集まりました。
これまで、初回ではリーダー希望者のみがアイデアを持ち寄っていました。6回目となる今回は、全員で自分のアイデアを発表するワークを行い、1ヶ月間のプラッシュアップを経てリーダーを選出する形式へ変更。アイデアをカタチにする第一歩である、人に話すことの重要性を実感してほしいという思いを込めました。
この試みによって、いつかと思っていた創業が身近になった人、ふと生まれたアイデアを実践することになった人も。好スタートを切った今回のリーダー6人と、発表時点のそれぞれのアイデアをご紹介します。
1人目のリーダーは、中山梓実さん。将来的なお店づくりを構想しつつも、「まずは参加してみよう」という動機だった中山さんですが、リーダーに選ばれ、いつか…がすぐ目の前に。
アイデアは、人と人との見えない垣根を取り払うバリアフリーカフェ。重度心身障がいのお子さんを持つ自身も必要とする、障がいを持つ人やその家族が自分のペースではたらける場、身近で安らげる場、気兼ねなく相談ができ支援を受けられる場。障がいに関わる社会問題の解決を、おしゃれなカフェという切り口から取り組みます。
2人目は、名知正登さん。アイデア発表のワークで生まれたジャストアイデアが共感を得て、今回実践することとなりました。
アイデアは、“食感”を楽しむお店づくり。味、食材、見た目ではなく食感に着目したアイデアに、関心が集まりました。このアイデアを発端に、本業であるファッションにおける子どもたちへの教育や、所有ビルの利活用など、幅広い可能性を持って実践に挑みます。
3人目は、田中咲希さん。東京農工大学院に通う、現役大学院生。一人暮らしをする中で、買った食材の使い道がわからない、レシピアプリを使いこなせない、そもそも自炊が苦手という悩みを、地域の人に食材の美味しい食べ方を学ぶというアイデアに変えました。
実践では、地域の店主と参加者を集め、冷蔵庫の中身の効率的な使い方を学ぶワークショップを開催予定。将来的には、地域の情報交換場所、一人暮らしの人たちが触れ合える場所を作りたいと話します。大学院卒業後は起業を考えている田中さんにとって、今回のゼミがどんな経験となるのか。ゼミ史上初の学生リーダーに期待です。
4人目は、田中春奈さん。自身が体調不良のとき発酵食品に助けられた経験からパン作りに目覚め、パン教室へ通い始めたのだそう。色々な教室に通う中で、こんな教室があったら! と自分が求める講師像が見えてきたと言います。
「人情味のあるパン教室」という言葉で表現した田中さん。今や簡単に手に入るパンである一方、簡単に作ることもできるパン。田中さんとチームメンバーの“人情味”で、パン作りのはじめの一歩を手助けする教室を開きます。
5人目は、高宮朋子さん。生活雑貨の商品開発のしごとをしている高宮さんですが、退職を決断し、ものづくりの分野でしごとを作りたいと、覚悟を持って参加されました。
アイデアは、ハーブ調合&調香スタンドづくり。インドネシアの伝統薬「ジャムゥ」と出合い、体調に合わせて調合し、不調を整えられることに魅力を感じたのだそう。精神的なストレスや身体的なトラブルなどを抱える人をターゲットに、気軽にカスタムオーダーできるお店のオープンを試みます。
6人目は、鬼束みなみさん。大好きな日本酒の魅力を伝える、日本酒駄菓子バーを作りたい!という夢を掲げてやってきました。アイデアの背景には、コロナ禍で家に引きこもってしまい、孤独を覚えた経験が。
昼は子どもからお年寄りまで楽しめる駄菓子カフェ、夜は様々な日本酒も取り揃えた日本酒駄菓子バーを構想中。誰もが経験し得る孤独を感じたときに、心の拠り所となるような場であり、世代間の交流を生む場づくりを目指します。
こだわり、好き、経験、課題意識から生まれた6つのアイデア。お店づくりという切り口から、それぞれの「あったらいいな」を実現していきます。実践を通じてまちのどんな存在になるのか、胸が高まります。