リンジンたちの名言2020 -編集後記-

2020.12.24
リンジンたちの名言2020 -編集後記-

誰も予想だにしなかった波乱の1年になった2020年。不安や課題の多い状況が続いている一方で、それまで常識と考えれていたはたらき方や価値観が大きく揺れ動いた年でもありました。リンジンでも、一時オンライン取材にトライしてみたり、外出自粛期間中にもまちの灯りとなって踏ん張る飲食店をご紹介したりと、いつも以上に社会の様子を見つめながらメディアとしてのあり方を考えた1年でした。

締め括りとなるコラムは、毎年恒例の名言集。今年公開した記事の中から、編集部の心に残った言葉をお届けします。お家で過ごす年末年始にぜひゆっくりとご覧ください。

「愛されてきた古いお店が、多少かたちは違っても残っていけたらいい」
閉店する喫茶店の文化を紡ぐ 村田龍一さん

JR西荻窪駅北口からすぐの角地にある「村田商會」を営む村田さん。長年にわたり喫茶店を巡り、退職を経て、閉店した喫茶店の捨てられてしまう家具や食器をの販売をはじめました。その傍ら、お気に入りのお店が閉店することを知り、“いつかは喫茶店の主人になったら楽しいな”という思いを実行することを決意。やめることを考えている人と、新しくやりたいと考えている人を繋ぎ、かたちを変えても文化やしごとを受け継いでいく、そんなしごとの選択肢を示してくれているように感じます。

「今まで来てくれたお客さんは全員覚えています!」
等身大で踏み出した21歳の店主 門間陽奈さん

「普通の道を進むより、やりたいことをやりたい」という気持ちを守り、ニューヨーク留学や映像制作などの経験の後、タピオカドリンクのお店nomnomを東小金井にオープンした門間さん。お客さんと直に接するようになって、それまでとは違う感謝の想いが込み上げてきたと言います。「お客さんが少なければ、それもよし、みたいな」気持ちがあったアルバイト時代とも、今より収入の多かった会社員のときとも、まったく違うお金の重み。スモールビジネスらしい顔の見える関係性が、向上心と楽しさに結びついているようです。

「そもそも地域の存在を必要としていたのは私たちの方だったんです」
創業157年の酒造に吹く新しい風 小池貴宏さん・前迫晃一さん
sponsored by多摩信用金庫「エールの扉(全5回)」

157年の歴史をもつ石川酒造。国内外から日本酒やビール、ここでしかできない体験を求め多くの客が訪れ、地域に存在感を放つ酒造ですが、順風満帆に来たわけではなく地域の人たちの声に耳を傾け、いい連鎖や影響が広がった結果だと言います。「地域で消費してもらうこと、土地を最大限活かすということが私たちにとっても生きる道」と話す営業部長の小池貴宏さんと杜氏の前迫晃一さん。地域でコラボレーションした新商品が楽しみです。

「“根っこ”を見失わずにいることが大事なんだと思います」
【特別対談 vol.3】まちをおもしろくするフラットな関係の連鎖 笹倉慎也さん・奈津美さん夫妻

富山県氷見市へ移住し、宿とギャラリー、喫茶を営む笹倉さん夫妻。氷見に住んでいる人たちの飾らない日常を訪れた人にシェアする形を体現されていますが、地元の人たちとの関係づくりなどたくさんの迷いや苦労が。そんな時2人が立ち返ったのは、「氷見での暮らしの豊かさを共有したい」という自分たちの“根っこ”。何となくやりたいことはあるけど、どう始めたらいいかわからない時、これだけは譲れないという自分の根っこを探してみると、一歩踏み出せるかもしれません。

「自分が心底いいと思えるものを丁寧に売ってみたい」
“歩く”を守る、自宅の隣につくった店 土田凡枝さん

デザイナーとして広告業界の第一線で活躍してきた土田さん。家族が事故で車いす生活になり、歩けることの大切さを痛感。健康靴が体の痛みを軽減することを知り、「この商売をしたいかもしれない」と心が動いたと言います。積み上げたキャリアを捨て、健康靴「えこる」のお店を開くことを決意したのが45歳。空き家をリノベーションしたセンス光るお店で、一歩でも多く歩ける“いい靴”を届けます。始めるタイミングに年齢や過去は関係ない、ただ、つき動かす強い信念が大切だと感じました。

「“ローカル”をいきいきと捉えていけるか」
なぜ、まちといい関係を築く?(公開講座レポート) 朝霧重治さん

「食べる」と「まち」のいい関係をテーマに開催した公開講座。日本のクラフトビール醸造において先駆者と言える朝霧さんは、川越の地でコエドブルワリーを構えるにあたり、“ローカル”をフードビジネスにどう活かすかを考え抜きました。地形や風土、歴史や気候を生かした“この地でなければ出せない味”。これは食に限ったことではなく、目の前にある地域の資源を最大限に活かすことが、ニーズに応え、一番星を取るビジネスや地域活動をつくるための道の一つだと感じます。

「何かを始める時は、取り組むことの現実を知るように心がけます」
シェア本屋のフォーマットを広げる 中西巧さん

2019年の夏、吉祥寺の小さなビルの地下にオープンした、本の発信基地「ブックマンション」を運営する中西さん。三鷹の無人古本屋「BOOKROAD」の次に新しく仕掛けた、お店の本棚や運営を共同でシェアする本屋です。“町の中に本が並んでいる風景がもっと増えたら”と、自分がお店をはじめるのではなく、世の中で取り組みやすい本屋のフォーマットを広めていきたいと話します。何か始める時に中西さんがやることは、自分で取り組んで一次情報を取得すること。何か始めたい、何か仕掛けたい時、まずは観察したり情報を集めたり、自分の体を使うことが成功のカギになるかもしれません。

「地域の中にふらっと寄れる場所があることで救われる人はたくさんいるんじゃないか」
「まずはやってみた」25人の実践 ゼミ#2レポート

5月~9月の4ヵ月間に渡り実施したまちのインキュベーションゼミ#2。「これからの、家と庭」をテーマに25人がチームに分かれて実践を行いました。庭のある家で植物を素材としたイベントやリラックスできる場を提供したり、自宅の軒先を開放し、昔なつかしいお店で地域交流の場をつくったり。テクノロジーでどんどん世の中は便利になるけれど、近所の人と言葉を交わしたり、約束していなくても顔見知りと会えたり、そんな場を老若男女問わずみんな欲しているのかもしれません。ゼミ実践でそれぞれが歩みだした道、これからも目が離せません。

「『OOさんのところの餃子が食べたかったんだよね』という声に応えられる」
UmarEatsで乗切れ!商店街の底力 鈴木宏司さん・平田晃一郎さん
sponsored by多摩信用金庫「エールの扉(全5回)」

コロナ禍で個人店が大きな打撃を受けている今年。オニ公園で有名な立川駅南口の錦商店街が現在も続けているのは、独自のデリバリーサービス。素早く、質が高く、持続的な活動を可能にしたのは、日頃から精力的に開催していたイベントで育んできた“横のつながり”でした。馴染みの味を届けるデリバリーが、「個人商店で発展し今日まで街の風景を作ってきた」錦商店街を支えています。商いの火を守り、まちの賑わいを保つためにはどうすればよいのか。商店街をはじめ、地域にある組織や団体のあり方が問われた1年だったように思います。

 

例年に増して、ゆっくりと考え事をしたり、来年の計画を練る時間がありそうな年末年始。リンジンでご紹介している200を超える記事の中に、あなたにぴったりなヒントや新たな発見が見つかるかもしれません。一歩を踏み出した先輩、まちで見かける気になるあの人のストーリーを覗いてみませんか。(編集部一同)

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