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UmarEatsで乗切れ!商店街の底力

立川の街を語るに欠かせないものの一つ、それは、街の景色と生活に溶け込む商店街の存在です。中でもオニ公園やイベントでも注目されることの多い錦商店街。にぎわいづくりを得意とするその商店街には、立川を代々見つめ守ってきた地域の大黒柱と、新たなアイデアで街を活性化させる若い力の両輪が揃っていました。そんな“にぎわい”を強みとする場を容赦なく襲った新型コロナウイルス。今こそ互いを孤立させない、そんな想いから、商店街には独自のデリバリーサービスが生まれます。錦商店街振興組合理事長の鈴木宏司さんと広報の平田晃一郎さんにお話を伺うと、コロナ禍の今を通してこそ浮かび上がる商店街の姿がありました。

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個店が魅力の商店街

立川駅南口を出てすぐ。そんな立地ながら大型チェーン店ではなく、昔ながらと新しさが共存する個人商店が街の風景となっているのが錦商店街です。商店街の魅力はなんといっても店や店主の個性だと口を揃えるのは、錦商店街振興組合理事長の鈴木さんと広報の平田さんです。

錦商店街振興組合理事長の鈴木さん(右)と広報担当の平田さん(左)

米店を営み、長年地域を見守り続けてきた鈴木さんは、一つひとつの店舗が異なって持つ個性や味こそが錦商店街を形作ってきたものと話します。

「錦商店街は、個人商店で発展し今日まで街の風景を作ってきました。近隣に住む人は、みんなそれぞれ自分が好きな味をここに持っています。だから、店によって異なる自分の好きな味を求め、街に繰り出し食事をするということが日常の中に自然とあったんですよね」

商店街においては珍しい広報のポジションを専門的に担う平田さんは、5年前に立川に来て以来、まぜそば店で勤務をしながら錦商店街の広報・企画を担っています。純粋に好きという気持ちが原動力になっているという広報の仕事も、商店街だからこそのおもしろみを感じ、やっているのだそう。

「同じごはんを食べるでも、『あの人が作ってるから』とか、『あそこの店主さんと話がしたいから』とか、そういう理由で足を運ぶのが個人商店であり、錦商店街の良さだと感じています。良いものはみんなにも知ってもらいたい、広報としてそんな気持ちになるのも魅力ある個店ばかりだからです」

個性のある街は、イベントをやっても強い。個人商店が多いという特徴を活かし、錦商店街が主催する“鬼うまフェス”と称したイベントでは、各商店の店主の顔を前面に出したPRや企画を用意し、また会いに来たくなるような仕掛けを持たせています。そんな取り組みは外からの評価も高く、2019年には都が主催の東京商店街グランプリで、23区外で唯一特別賞を受賞しています。

こうした、決して容易ではない“商店街が盛り上がる”という状況はいかにして可能になっているのでしょうか。

“よそ者”であり“若者”である平田さんのような人のアイデアを積極的に取り入れることができるようになったことが、近年の良い変化であったと鈴木さんは振り返ります。イベントの実施一つをとっても、他の商店街では中々見られないような綿密さの企画、計画が裏にあるのだそうです。

「商店会の代が替わっていくのと同時に、若い人が地域の担い手となっていく状況が生まれていきました。平田くんの存在は本当に貴重です。新しいアイデアを提案し、それを現実のものにしながら店の垣根を超えて地域全体を盛り上げることができる。錦町になくてはならない人ですね」

鬼うまフェスの会場ともなるオニ公園

コロナ禍で発揮された、横で繋がる力

鈴木さんが「店の垣根を超えて」と言ったのには、特にわけがあります。

飲食店が9割を占める錦商店街。新型コロナウイルスの影響で外出や外食が自粛されるようになると、その影響は商店街を直撃します。誰も経験をしたことのない困難に見舞われる状況で、平田さんは文字通り店の垣根を超えて、商店街の料理を届けるデリバリーを始めたのです。

5月のゴールデンウィークと重なった緊急事態宣言。連休の外出がなくなれば売り上げが壊滅的になることは避けられないと考えた平田さんは、勤務先の店主と話し合い、すぐにテイクアウト、デリバリーの準備を開始しました。

「初日は私が勤務する店のテイクアウトだけで50食を売り上げるほどの反響がありました。これは商店街として取り組むべき、そう思いすぐさま近隣店舗にお声がけをし、まずは3店舗とともにデリバリーを導入すべく動き出しました」

こうして始まったデリバリーは、“鬼UmarEats”と銘打つ錦商店街独自のデリバリープロジェクトへと発展します。各店舗との地道な打ち合わせを積み重ね、現在は19店舗が加盟するまでになりました。お店に注文が入ると平田さんが料理を取りに行き、家庭に届ける。この作業を、高いクオリティーでリピーターが絶えないサービスとしている裏には、商店街独自の工夫があるようです。

商店街の商品サイズを考慮したロゴ入りのオリジナル保冷バックを用意

特設ウェブサイトは商店会でサイト構築ができる人が担うなど持てるそれぞれの得意を集結させた

例えば、各店舗でデリバリー注文を受ける窓口はあえて電話に限定。ネットでの注文予約を受け付けてしまうと、無理なオーダーを受けてしまい、その結果冷めたり容器の中でぐしゃぐしゃになった商品を届ける事態になる可能性があるからだそう。そして、商品を届ける平田さん自身が各店舗で要する調理時間を把握することで、人員に限りがある中でも効率的に配達ができるよう計算された動きをとれるようにしています。

ひと昔前には出前として商品の配達自体は存在したものの、近年それを行う店はほぼゼロという状況の中、無理のない運用を実現させるために、店舗ごとの声をとにかく丁寧に聞き、仕組みを作り上げていったのです。

そしてそのデリバリーは、ただ人の空腹を満たすための手段ではなく、鈴木さんの言う、街の人が商店街に好きな味を持っているからこそ求められるものとなったのです。

「お客さんに喜んでもらえているのは、ただ餃子が食べたい、ナポリタンが食べたい、といった食欲を満たしているからではなく『OOさんのところの餃子が食べたかったんだよね』という声に応えられるからだと思います。加えて、デリバリーをしているのが顔なじみの平田くんです。届けたときに生まれるコミュニケーションも価値となり、そこでまた頼もうと思われるきっかけが生まれています」

連帯する強さを

これまでのイベントも現在のデリバリーも、その成功には、地域の特性を見極め独自のものを作り上げるという裏付けされた工夫や努力がありました。しばらくの間、錦商店街の強みが前面に出る、“にぎわいの場をつくる”という取り組みは再開できませんが、今を乗り越えるための連携が必要とされているときでもあります。

「今は、商店街としてもこれまでになかった状況下で、日々商店会のあり方や対応について議論をしつつ辛抱のときを過ごしています。今までなら季節ごとにイベントを主催し、地域のみなさんに楽しんでもらう場を提供していました。今年は集う機会を作り出すことはできませんが、商店街の商品・サービスを家で楽しもう、というメッセージを発信していこうと思っています」

良い時も悪い時も一緒にいられることが商店街の強み。たった一人だったら耐えられないことも、商店街の力を合わせれば乗り越えられるかもしれない、そういう気持ちを連鎖させていくことが今は大事なのではないかと、鈴木さんと平田さんは考えています。

要望があれば料理と一緒に日用品のデリバリーも行う

実際に、この状況を機に、今まであまり活発にコミュニケーションをとることができなかった商店の方と一気に距離が縮まったという経験があったそう。

大変な今も、今後良くなったときも、「錦でお店をやっていてよかった」と思える場所であるために、これからも錦商店街の先頭を走る二人は個性あふれる街の景色を守り続けます。

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【リンジン X たましん連携企画】
多摩信用金庫はコロナ禍での地域の飲食店や事業者を応援しようと、テイクアウト・デリバリー店舗やクラウドファンディングのプロジェクト情報を集約したウェブサイト「エールの扉」を開設しました。今回、エールの扉とリンジンがタッグを組み、そうした情報の裏にある事業者の想いや、コロナを乗り越える取り組みを記事でお伝えしています。

「エールの扉」特設サイト
https://www.tamashin.jp/yell/

プロフィール

鈴木宏司

錦商店街振興組合の理事長を務め、商店街では吾妻米店を営む。個人商店が多い地域の歴史を守りながら、若い世代のアイデアを積極的に吸い上げながら街の振興を図っている。

平田晃一郎

山口県出身。イベント企画のしごとをしていた経験を存分に活かし、自らも商店街のまぜそば店で勤務をしながら錦商店街主催のイベントを中心に広報・企画担当として活動している。


錦商店街振興組合 公式Facebook
https://www.facebook.com/nishikishotengai/