ニュータウンで小商いのススメ

2023.08.17
ニュータウンで小商いのススメ

高度経済成長期に開発が進められた郊外のニュータウンは、今や全国に2000以上もあります。少子高齢化や人口減少などでこれからのあり方が問われる今、大阪府・泉北エリアのニュータウンでは新しい取り組みが次々と。まちの中で自分サイズで始めるビジネス"小商い”をきっかけににぎわいや繋がりが生まれていました。

ニュータウンって?問われるあり方

ニュータウンに、どんなイメージを持ちますか?

高度経済成長期に都心の人口が急増し、国の方針として、合理的に住宅地の開発が進められた郊外のニュータウン。1958年に大阪の千里丘陵に開発された日本初のニュータウン「千里ニュータウン」、東京の多摩丘陵に広がる「多摩ニュータウン」、URの前身である日本住宅公団が手がけた愛知県の「高蔵寺ニュータウン」といった3大ニュータウンをはじめ、広大な丘陵地などを切り拓き、大規模な新興住宅がつくられてきました。そばには商業施設や学校、病院、公共施設などが建設され、多くのファミリー世代が移住。都心で働き、郊外のベッドタウンで家族と暮らす。それが、当時を象徴する理想のライフスタイルでした。

その後、経済成長はストップし、少子高齢化で人口が減少。若者が離れ建物が老朽化して空き家や空き店舗も増え、“オールドタウン”化するニュータウンもたくさん。片や近年も新しいニュータウンが少しずつ開発され、今では全国に2,000以上のニュータウンがあります。需要と供給のバランスなど、さまざまな課題を抱え、ニュータウンのあり方が今問われています。

昭和時代に開発された郊外にあるニュータウン
昭和時代に開発された郊外にあるニュータウン

職住近接が広がる、泉北のニュータウン

西日本最大級のニュータウンに「泉北ニュータウン」があります。大阪府の堺市と和泉市にまたがり、里山や農地が隣接し緑地が広がる珍しいニュータウンで、大阪府によって開設され、1967年にまちびらきが行われました。泉北ニュータウン誕生に伴い、泉北高速鉄道が開通。ピーク時の人口は約16万5千人でしたが、今では約11万人に。他のニュータウンと同じく、少子高齢化や人口減少が進み、空き家や空き店舗が増加しています。一方で1992年にはエリアの利便性が注目され、泉北ニュータウンの近くにはUR都市機構によって開発された新しいニュータウン「トリヴェール和泉」が誕生。その後に和泉中央駅が開設され、周辺に大型商業施設が続々オープンしてきました。

関西最大級の泉北ニュータウン。泉北高速鉄道の「泉ケ丘」「栂・美木多」「光明池」の3駅を中心としたエリアに広がる
関西最大級の泉北ニュータウン。泉北高速鉄道の「泉ケ丘」「栂・美木多」「光明池」の3駅を中心としたエリアに広がる
泉北ニュータウンのそばには、和泉中央駅周辺を中心とした人口約2万人のニュータウン・トリヴェール和泉が
泉北ニュータウンのそばには、和泉中央駅周辺を中心とした人口約2万人のニュータウン・トリヴェール和泉が

都心で働き眠りにつくだけのベッドタウンから、暮らしのそばで自ら仕事をつくる職住近接のまちへ。そんな新しいニュータウンづくりが、泉北ニュータウンではコロナ禍前から進んできました。実は、多くの人が住みながら企業が少なく都心よりコストが低いニュータウンは、小商いをはじめるのに恰好のフィールド。敷地が広くて、空き家や空きスペースが多く、コンパクトに生活機能がまとまっているのも、職住近接で事業をつくりやすいポイントだったりします。

実際にこれまでも、空き家を活かしてコミュニティカフェをつくったり、レモンを泉北の特産品として販売したり、自宅を改修してアパレルショップを開いたり、オフィスの一角にコワーキングスペースを設けたり。行政、大学、NPO、企業と、地域の人たちが連携して、ユニークなお店やサービスが次々と生まれ、まちの小さな経済を動かしています。

泉北ニュータウンにある茶山台団地。団地をリノベーションしたり、利用者が少なくなった集会所を図書館にしたり、イートインできる惣菜屋がつくられたり、マルシェイベントが開かれたりと、ハード面からソフト面まで様々な取り組みが。2023年にはMUJI×UR団地まるごとリノベーションプロジェクトが始動
泉北ニュータウンにある茶山台団地。団地をリノベーションしたり、利用者が少なくなった集会所を図書館にしたり、イートインできる惣菜屋がつくられたり、マルシェイベントが開かれたりと、ハード面からソフト面まで様々な取り組みが。2023年にはMUJI×UR団地まるごとリノベーションプロジェクトが始動

公園や広場、駅を小商いの場に

公園や広場、駅などのパブリックなスペースも、小商いを後押しする場に。例えば、泉北ニュータウンの玄関口でもある泉ケ丘の駅前広場では、鉄道会社とNPOが連携し、住民参加型マーケット「つながるDays」を開催。カフェやハンドメイド雑貨、ワークショップなど、市民が自分のやってみたいことを表現しチャレンジする場として広場が活用されています。

泉ケ丘駅前の商店街。泉ケ丘駅周辺は再開発が進み、駅前広場での住民参加型マーケットは場所を変えて続いている
泉ケ丘駅前の商店街。泉ケ丘駅周辺は再開発が進み、駅前広場での住民参加型マーケットは場所を変えて続いている

2020年にリニューアルした大蓮公園では、テントを張った公園の一角で、日替わりで自分のお店を開けるマルシェ「LIFE is PARK」が誕生。今や、焼き菓子や珈琲、野菜・リラクゼーション・雑貨・写真館など、70店舗のお店が登録し、ハレの日のイベントではなく、定期的に日常にあるお店を開くことを前提にビジネスを営んでいます。公園内の古い資料館の一部をリノベーションしてつくられた教室・ギャラリーなどとして使えるレンタルスペースもあり、開かれた公園の中にも、小商いが育つ仕組みがあります。

大蓮公園は関西で初めてPark-PFIを導入。市民団体が運営する私設図書館や、カフェ、キャンプ場、レンタルスペースなどが設置され、まちの人が主体的に参加できる“ふるさとの公園”に生まれ変わった
大蓮公園は関西で初めてPark-PFIを導入。市民団体が運営する私設図書館や、カフェ、キャンプ場、レンタルスペースなどが設置され、まちの人が主体的に参加できる“ふるさとの公園”に生まれ変わった

そして2023年10月には、泉北高速鉄道 和泉中央駅の構内に、誰でも気軽にフードビジネスを始められるシェアキッチンがオープン予定。本格的な業務用の厨房を複数人で共用し、低コストでカフェやデリなど自分のお店を開けるシェアキッチン。週1回や月1回など仕事や子育ての空いた時間を活かして、まちの人たちがシェフになる。様々な人が行き交う駅を起点に、食の小商いの場が誕生します。

和泉中央駅の駅ナカにオープン予定のシェアキッチン「8K(ハチケー)」
和泉中央駅の駅ナカにオープン予定のシェアキッチン「8K(ハチケー)」

ニュータウンと、小商いのいい関係。移住者が住み関わりが薄くなりがちなニュータウンで、売り手と買い手のお互いの顔が見える商売を通し、つながりやにぎわいが生まれていく。大型チェーン店のようにどこにでもあるモノでなく、ここにしかない特別なモノ・コトをそばで楽しめるように。

団地や空き家をリノベーションしてコミュニティを築く福祉サービスを営んでもよし、緑道や公園で移動販売やスポーツビジネスを始めてもよし、アトリエを設けてものづくりを生業にしてもよし、農村の作物を活かした商売を始めてもよし、シェアキッチンで本業の傍に週1回だけパティシエに挑戦してもよし。

子どもから高齢者まで多様な人が集まるニュータウンだからこそ広いニーズとアイデアがあり、面白いビジネスが連鎖していくはず。画一化されたまちから、小商いを入り口に個性あふれるまちへ。ニュータウンの新たな未来に可能性が膨らみます。

INFO

8K 和泉中央

泉北ニュータウンや和泉トリヴェールをつなぐ泉北高速鉄道の和泉中央駅2階に、関西エリア初のシェアキッチン8Kが2023年10月オープン。現在、利用者を募集中です。シェアキッチンで、食の小商いを始めませんか?

施設名称

8K 和泉中央

所在地

大阪府和泉市いぶき野5-1-1 泉北高速鉄道 和泉中央駅2階

月額利用料

33,000円(税込)

※月30時間の利用料を含みます。別途、共益費・手数料等がかかります。

現地内覧&個別相談会(予約制)

[日程]
2023年8月21日(月)- 8月23日(水)、
2023年8月26日(土)- 8月28日(月)

[申込方法]
事前予約制です。以下の詳細ページでご確認ください。

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