“隣”のカフェで地元の縁を紡ぐ

2023.03.30
“隣”のカフェで地元の縁を紡ぐ

SHARE DEPARTMENTのオープンに向けて、稲城で自分らしく小商いを営む人にフォーカスした取材連載がスタート!第一弾はJR南武線・稲城長沼駅近くに佇む全6席の珈琲店・ZARUYANOTONARI(ざるやのとなり)。2022年2月にオープンし、珈琲や食事を楽しむ飲食店としてだけでなく、会話やゆったりとした雰囲気を楽しむ場所としても多くの方から親しまれています。
開店して1周年を迎えた同店に開業時のエピソードや、ユニークな店名に込められた想い、今後の展望などについて、店主の“となり”さんにお話を伺って来ました。

雇われの身でいいのか。漠然とした不安から独立へ

ZARUYANOTONARI(ザルヤノトナリ)――。
そんなユニークな店名のカフェがオープンしたのは、2022年2月のことです。店舗の場所は、酒屋“ざるや”の隣。もともと空き地となっていた場所に、珈琲豆の焙煎・販売も行うカフェが誕生しました。

稲城長沼駅より徒歩3分の場所に佇むカフェ
稲城長沼駅より徒歩3分の場所に佇むカフェ

店主のとなりさんはもともと会社員として飲食系の仕事に携わっていましたが、次第に自身のキャリア形成や飲食業の本質について深く考えるようになり、独立を志すようになったとか。そんな当時のことをこう振り返ります。

「会社員の頃はこのまま雇われの身で良いのかという漠然とした不安がありましたし、厨房で調理していたため自分の作った料理を味わっている人の表情が見えなかったんです。だから、独立する際にはお客さんとの距離感が近いお店を開きたいなと」

こうして、自らカフェを開くことを決意。会社を辞めて調理の専門学校に通い、同じように飲食店の開業を目指す仲間たちと切磋琢磨しながら必要なスキルと知識を身につけていったと言います。

お客さんと会話を楽しめる、カウンター式のカフェを開業
お客さんと会話を楽しめる、カウンター式のカフェを開業

地元で愛される“ざるや”の隣にカフェを開く

調理学校を卒業した後、お店を構える場所として選んだのは、となりさんが生まれ育った稲城市でした。そこにはどんな思いがあったのでしょうか。

「お店を開く場所は、稲城市の他には考えられませんでした。子どものころからお世話になっている街へ恩返しをしたくて、稲城市に人が集まれる場所を作りたかったんです。自分自身も稲城市を盛り上げるメンバーとして“地域貢献に参画したい”という気持ちも強かったですね」

店舗は、地元の酒屋“ざるや”に直接交渉して空き地を間借りさせてもらえることになりました。ざるやは、稲城市に1973年にオープンした昔ながらの個人商店。長年にわたって地元の方に愛され続けていて、となりさんにとっても馴染み深い店でした。ざるやの店主とも交流があり、新しくカフェを開くことは快く承諾してくれたと言います。

「幼いころから親交のある、ざるやさんの名前を大切にしたかった」と語る店主のとなりさん
「幼いころから親交のある、ざるやさんの名前を大切にしたかった」と語る店主のとなりさん

ZARUYANOTONARIというユニークな店名は、内装を手掛けてくれた大工さんのアドバイスをきっかけに思いついたと語るとなりさん。

「ヒット作品のタイトルには“の”という文字が入っていることが多いという法則を教えてもらって思いついたんです。『ざるやさんの隣にあるお店だから、そのままざるや“の”となりでいいじゃん!』って(笑)」

特徴的な名前のため、時にはお客さん同士が電話で「どこにいるの?」「ざるやのとなりだよ」「場所じゃなくて店名を教えて!」なんてやり取りを行っている光景を目にすることもあるそう。「そういったユーモアも楽しんでもらえたら嬉しいです」と、となりさんははにかみながら話してくれました。

また、店名には、地元の酒屋“ざるや”の名前を残したいという想いも込められていると言います。

「ざるやさんは長年稲城市の方から愛されているお店だから、名前を残したいという気持ちがあって。名前を受け継げばより長く愛され続けますし、隣にカフェを開業すれば多くの人にざるやの存在を知ってもらえるかなぁって」

カフェなら若い世代にも響きやすく、ざるやの名前ももっと広まるはず。稲城市で生まれ育ち、地域を大切に思うとなりさんのこだわりがうかがい知れます。

珈琲だけでなく、フードメニューも人気
珈琲だけでなく、フードメニューも人気

店内には6席だけ。理想の詰まった過ごしやすい空間に

カフェの店内は天井が高く広々とした空間となっていますが、カウンター席として設けられているのは6席だけ。なぜ席数を少なめにしているのかというと、お客さんがゆっくりと過ごしやいようにゆとりのある空間にしたかったからだととなりさんは話します。

開放的な店内。窓が多いため、時間帯により雰囲気が変わるのも魅力
開放的な店内。窓が多いため、時間帯により雰囲気が変わるのも魅力

その他にも、お客さんと話しやすいようキッチンをカウンターより1段低く設けたり、車椅子やベビーカーを持って来店した方も過ごしやすいように動かしやすいキャスター付きの椅子を使用したりと、店内の至る所に工夫が凝らされています。

店舗の設計やデザインは、国分寺にあるとなりさんお気に入りのカフェの内装を手掛けたKITORIさんに依頼。知り合いの紹介で連れて行ってもらったカフェの内装に一目惚れし、となりさんは自ら動き出します。

「カフェの空間づくりがとても素敵だったので、同じ方に依頼したくて、自分でアポイントメントを取りました。KITORIさんがつくる空間は“人ありき”で、そこに暮らす人やそのキャラクターや想いなどが落とし込まれているんです。私は自分のことを言葉にするのが苦手なので、自分の好きなものや気になる言葉をざっくばらんに綴ったノートをKITORIさんに見ていただきました。そうしたら私の想いを汲み取って良い感じに具現化してくださって!自分のお店ですが、まるで芸術品を見ている感覚です(笑)」

設計の際に渡したとなりさんのノート。気になるお店や言葉などが記載されている
設計の際に渡したとなりさんのノート。気になるお店や言葉などが記載されている

店舗前に飾られている印象的なロゴマークは、KITORIさんの紹介で出会ったデザイナーさんが担当。ざるやの“と”なりという店名と、将棋の“と金”にかけてこのロゴマークに仕上げてもらったそうです。

「将棋の“と金”は、“歩兵”が成長した駒。“歩兵”は自分の陣地では前に1マスしか進めませんが、相手の陣地に入ると“と金”に変化して金将と同じ動きができるようになる。そんな生き様に惹かれました」

将棋の“と金”をモチーフにしたロゴマーク
将棋の“と金”をモチーフにしたロゴマーク

様々なご縁が結ばれる場所

オープン後、ZARUYANOTONARIには地元の方を始め、各地からお客さんが来店。近所に住んでいる方以外でも、「気になるお店だったから」「同じ沿線上に新しくお店がオープンしたと聞いたから」と足を運んでくれる方もいると言います。

お店に訪れるお客さんの年代は様々です。お買い物ついでに珈琲を飲みに来るマダム、友人同士で訪れる方、家族連れで訪れる方などなど……。時には意外なお客さんも来るとか。

「小学生の子が2人で来てくれたこともあります。一度親御さんと訪れたときに店内の雰囲気を気に入ってくれたらしくて、友達を連れて来てくれたんです(笑) 年齢に関係なくお店の良さが伝わったのかなと思うと、とても嬉しかったですね」

お客さんからは“ざるちゃん”と呼ばれているという、となりさん。みんなに愛されていることが伝わってくる
お客さんからは“ざるちゃん”と呼ばれているという、となりさん。みんなに愛されていることが伝わってくる

また、お客様としてここに訪れたご縁から、お店づくりにつながることも多いとか。古民家カフェのオーナーに焼き菓子を発注するようになったり、イラストレーターに描いてもらった絵画を店内に飾ったり、流しのバイオリニストに店内で演奏してもらったりと、お店を通じた交流も生まれていると言います。

「カフェで焼き菓子を提供したいと考えていた頃にお客様として来店した古民家カフェのオーナー様と出会ったり、お店を通じて縁が結ばれることが多い気がします。皆さんとても良い方ばかりで、お店をオープンしてから“たくさんの人に支えられているなぁ”といつも感じてます」

椅子にもこだわりが
椅子にもこだわりが

開業して1年経ったいま感じること

ZARUYANOTONARIは、2022年2月のオープンから1年が経過しました。現在は日・月・火を定休として、水曜日から金曜日は11:30~19:00まで営業。土曜日は9:30~14:00の営業時間に設定しています。

比較的ゆとりを持ったスケジュールにしている理由は、店舗運営や販促方法について学ぶため別の珈琲屋で勤務しているからだとか。となりさんはお店が休みの日には、他の珈琲屋で勤務したり、市場調査に出かけたりと、より良いお店にするために地道な努力を重ねているそうです。

これからどんなお店を目指していくのでしょう。となりさんはこう話してくれました。

「別店舗での経験を活かして、今後はもっと珈琲にフォーカスしたお店作りを目指したいですね。私自身も焙煎やドリップの技術を磨きながら、焙煎している珈琲豆の販売にも力を入れたり、焙煎屋との繋がりも広げていきたいです」

そんな目標のきっかけになったのは、お客さんから嬉しいコメントをいただいたことだったそうです。

「珈琲が苦手なお客さんから、『珈琲って苦いだけじゃないんですね!』と仰っていただけたのがとても印象的でした。どちらかというとうちはお店の雰囲気で選んでもらっていることが多いと思っていたので、珈琲の味を褒めていただけたことが嬉しかったですね。今後はワークショップなど新たな取り組みを始めながら、もっと珈琲の魅力を伝えていきたいですね」

おいしい珈琲にも力を入れる。別店舗での勤務は学ぶことも多く刺激になるとのこと
おいしい珈琲にも力を入れる。別店舗での勤務は学ぶことも多く刺激になるとのこと

より良いお店づくりへ向けて、休日も修行や市場調査に励んでいると言うとなりさん。現状に満足せず進化を求め続ける姿を見て、自分自身も背筋が伸びた気がします。また、“ざるや”という名前を残したいという店名に関する想いや、お客さんが過ごしやすいよう配慮された空間設計にも感銘を受けました。高みを目指すだけでなく、地域やお客さんとの縁や繋がりを大切にしているからこそ、ZARUYANOTONARIは世代を問わず多くの方から愛され続けているのでしょう。(三島)

プロフィール

となり

ZARUYANOTONARI(ザルヤノトナリ)の店主。飲食店にて数年間勤務した後、調理学校へ通い独立。2022年2月、自身の生まれ育った稲城市に店舗をオープンした。店舗では調理や接客の他、珈琲豆の焙煎も自ら行っている。

https://www.instagram.com/tonarioideyo/

INFO

SHARE DEPARTMENT/稲城長沼

5月1日、JR南武線・稲城長沼駅徒歩1分の高架下に、シェアキッチンやショップ、オフィスなどが並ぶ創業支援施設「SHARE DEPARTMENT (シェアデパートメント)」が誕生します。ぜひ、あなたもここで小商いを始めませんか?

施設名称

SHARE DEPARTMENT(シェアデパートメント)

住所

東京都稲城市東長沼516-2

アクセス

JR南武線・稲城長沼駅 高架下徒歩1分

区画・月額利用料

ROOM(48,400円〜)、8K(33,000円・13,200円)、BOOTH(19,800円)、CLASS(8,580円)、GARAGE(8,800円〜)

現地内覧会

[集合時間]
4/4(火)10時、13時
4/7(金)16時、19時
4/10(月)12時、17時

[集合場所]
SHARE DEPARTMENT(建物南側の正面入口付近)

[所要時間]
所要時間約1時間(途中退室可)

[対象者]
施設のご利用を検討されている方

[申込方法]
事前申込不要、直接現地にお越しください

※メディア取材や視察については、以下よりご相談ください。
Mail:info@town-kitchen.com
Tel :0422-30-5800

【連載一覧】
SHARE DEPARTMENTオープンに伴い、稲城市周辺でユニークなお店や事業をはじめた人たちに取材した連載企画。地域で仕事を生み出すポイントや小商いをはじめるヒントが見えてくるはず。

VOL.1  “隣”のカフェで地元の縁を紡ぐ
ざるやのとなり となりさん

VOL.2  人生を駆け抜けるサイクリスト
TRYCLE合同会社 田渕君幸さん

VOL.3  ママが稲城の梨で起業するまで
ココロコ株式会社 山本友貴さん

VOL.4 ブルワリーをまちの社交場にする
稲田堤麦酒醸造所 石原健司さん

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