[欧州巡記 vol.5]人口減少時代の無人化システム
オランダでは“ダッチデザイン”という言葉があり、合理化されたデザインを指すそうです。私はデザインのことは詳しくないのですが、少なくとも合理的なシステムという点で感心することが多くありました。特に、これから人口減少時代に突入する日本において、人の手を介さない無人システム作りは、大きなテーマになりそうです。
例えば、スーパーマーケットの入り口に設置されているのがバーコードリーダー。客は入り口で買い物かごと一緒にリーダーを取り、棚から商品を取って「ピッ」。レジに行く頃には、全ての商品のバーコードが読み込まれているので、無人レジでお金を払えばOK。面倒なレジ行列もないし、そもそも人手いらず。
あるいは、オランダで有名なクロケット。日本で言うところのコロッケですが、このチェーン店は、店内に自動販売機が設置されています。店の向こう側から熱々のクロケットを店員が入れ、客はコインを入れて小さなロッカーを手前から取り出す仕組み。少ない人手で熱々のものをスピーディーに提供できるように考え出されたシステムです。
ベルリンでは、地下鉄、電車、トラム、といった市内交通に改札口がありません。無銭乗車しようと思えば簡単にできてしまいますが、見つかればペナルティが大きい。細かいチェックで人の行動を縛るのではなく、性善説に立ちつつ、もしもの場合は罰則で取り締まる、というのも一つの合理的なシステムだと思います。
アメリカでは無人決済店舗Amazon Goが話題となり、日本でも無人店舗の実証実験が始まるなど、人口減少時代に向けた無人化の波が確実に来ているようです。無人である合理性ばかりを追求して、人と人のコミュニケーションが薄れてくることに大きな疑念が残りますが、とはいえ、労働者人口が減ってくる以上はやむを得ないというのも理解できます。大切なのは、そこに小さな遊び心や美しいデザインが加わり、あくまで“人”が中心となったシステムであり続けることなのかもしれません。(2019.6.27公開)







連載一覧
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書き手 北池 智一郎
大阪生まれ、小金井在住、二児の父。コンサルティング会社等を経て32歳で独立。東京多摩地域を中心に創業支援とまちづくりを行う株式会社タウンキッチンの代表。趣味は料理で、最近ハマっているのは南インド料理と塊肉。
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