一杯を味わう5席のコーヒー店

2020.02.20
一杯を味わう5席のコーヒー店

東小金井駅の高架下に店舗を構える、コーヒー専門店Coffee with 4 Elementsは2019年9月にオープンしたばかり。コーヒーの豊かな香りが広がる店内にて笑顔で迎え入れてくれたのは、店主の中野善仁さんです。中野さんは大学生の頃からネイルサロンと飲食店を経営しているそう。そんな中野さんが、なぜ新たにコーヒー専門店を開業しようと思ったのか。開業までの経緯や今後の展望ついてお話を伺いました。

バイト先のお客様の声が開業のキッカケに

東小金井駅の高架下のシェア施設内に、2019年9月にオープンしたコーヒー専門店Coffee with 4 Elements。店主である中野さんは、もともとコーヒーが好きで、大学生の頃には各地に店舗展開しているキャラバンコーヒーに在籍していたと言います。

キャラバンコーヒーでは、主に接客やコーヒーの抽出などを担当。お客様との交流を深めていく内、次第に中野さん目当てのお客様も増えていったと言います。そんなお客様から、ある日、「そろそろ自分でお店をやってみたら?」と声をかけられたそうです。

「お客様からそう言ってもらえたのをキッカケに、コーヒー専門店を立ち上げたいと思うようになりました。まずはその足掛かりとして、在学中にはイベントに出店してローストした豆を販売したりしていましたね」

キャラバンコーヒーでは焙煎や豆に関する知識が学べなかったため、コーヒーに関する知識は独学で得たそう。自分で試行錯誤を繰り返し、適切な温度や淹れ方に関するデータを採取していたと言います。

ちなみに、店名の由来は「“ブランドが価値を持つのは4つの要素があるからだ”という経営学の基本的な理論を基にしました。解説が難しいので、話すと3日くらいかかります(笑)」と語る中野さん。大学の頃、経営学を学んでいたことから思い浮かんだ店名だそうです。

キャラバンコーヒーは1928年創業の老舗コーヒー店。大学で経営学を学びながら、その店で接客や抽出を担当している内に、店舗経営にも興味がでてきたという中野さん。
キャラバンコーヒーは1928年創業の老舗コーヒー店。大学で経営学を学びながら、その店で接客や抽出を担当している内に、店舗経営にも興味がでてきたという中野さん。

やりたいことをやるために、まず基盤を作る

しかし、中野さんはすぐにコーヒー専門店を開業するのではなく、大学院在学中にまずはネイルサロンと飲食店を立ち上げたそう。現在も2店舗の運営に携わっているそうですが、なぜすぐにコーヒー専門店を立ち上げなかったのでしょうか?

「制約なく、自分のやりたいこと(コーヒー専門店)をやるためにも、まずは基盤を作ろうと思ったんです。そのため、まずは人を雇い店舗経営を行なって基盤を作り、基盤が出来てきた頃にCoffee with 4 Elementsをオープンさせました。他2店舗はお金の管理など経営的な面にしか基本的に携わっていませんが、Coffee with 4 Elementsでは接客もコーヒーの抽出も何もかも全て自分で担当しています」

実店舗の開業に向けて、まずは基盤づくりのために他業界の経営に携わったという中野さん。その途中、実店舗オープンの先駆けとして、イベントにてブースを借り出店を開始したと言います。

実店舗をオープンさせる前に、イベント出店からスタート
実店舗をオープンさせる前に、イベント出店からスタート

“常連さんが集うお店”を目指して物件探し

中野さんがCoffee with 4 Elements の実店舗を構える場所として選んだのは、JR中央線が通る東小金井駅の高架下にあるシェア施設MA-TO。さまざまな飲食店や雑貨店などが軒を連ねているシェア施設の一画に実店舗をオープンされました。

店内でコーヒーを提供するだけでなく、コーヒー豆の販売も行なっている
店内でコーヒーを提供するだけでなく、コーヒー豆の販売も行なっている

物件探しのポイントとなったのは、“程よい人通りの多さ”。中野さんは店舗をオープンするにあたって、繁華街にある全国チェーンのカフェのような一見さんだけで回る店にはしたくなかったと語ります。

「常連さんが集うお店にしたかったので、人通りが多すぎる繁華街には出店したくなかったんです。あとは、今までキャラバンコーヒーやイベント出店した際に足を運んでくださっていたお客様が来やすい場所にしたかたという思いもありましたね。勤めていたキャラバンコーヒーの最寄り駅が国分寺だったので、中央線沿線の駅周辺のエリアを探していました」

実店舗を構えてからは扱える豆の種類や、本格的な機材を常備できるようになったと言います。イベント出店の場合はどうしても持ち込める豆の種類に限りがあったり、機材も小型で簡易的なものを持ち込むしかなかったりと歯がゆい思いを感じていたそう。しかし、実店舗を構えてからは、より上質なコーヒーを提供できる環境が整ったと中野さんは嬉しそうに語ります。

中には10年以上通っている常連さんも

“常連さんが集う店にしたい――。”

そんな思いでオープンしたCoffee with 4 Elementsには、近隣に住んでいる方だけでなく、キャラバンコーヒー時代から通い続けている常連さんも多いと言います。中には10年近く通っている方もいるとか! 時にはお客様同士で仲良くなることもあるのだそうです。

もちろん、一見さんも大歓迎だと言う中野さん。コーヒーについてあまり詳しくないという方には、味の好みなどを聞いておすすめのコーヒーを提供していると言います。

店内は全5席。取材時は平日にも関わらず、満席状態になるほどの盛況ぶり!
店内は全5席。取材時は平日にも関わらず、満席状態になるほどの盛況ぶり!
お客様が多いときには、店の外に席を設けることも
お客様が多いときには、店の外に席を設けることも

また、お客様からのリクエストに対応することもあるのだとか。例えばメニューにはないアルコールドリンクを提供したり、取り扱っていないコーヒー豆を仕入れたりすることもあるのだそう。

「『昔飲んだあの銘柄のコーヒーが飲みたい』というリクエストを受けて、豆を取り寄せたこともあります。基本コーヒー豆は自分が良いと思ったものを仕入れていますが、お客様からのリクエストにも柔軟に対応しています」

場所が変わっても多くの常連さんから愛され続けているのは、中野さんの穏やかな人柄と話しやすさに惹かれているというのも理由の一つと言えるでしょう。

コーヒーだけでなく、夜はアルコールを提供することも多いそう
コーヒーだけでなく、夜はアルコールを提供することも多いそう
コーヒーと相性抜群なスイーツや、コーヒーを使ったお酒なども取り扱っている
コーヒーと相性抜群なスイーツや、コーヒーを使ったお酒なども取り扱っている

「この店だからこそ来たい」と思える店に

Coffee with 4 Elementsは、“自分が好き勝手にやるお店”をコンセプトに掲げているのだそう。取り扱っているコーヒー豆は、全て中野さんの好みで選んでいるのだと言います。
例えば、世界で最も高価なコーヒー豆とも言われている“ゲイシャ”を数十種類ご用意。また、日本ではCoffee with 4 Elementsでしか飲めない“コフィアディベルサ ルメスーダン アナエロビック ハニー”という銘柄もあるとか。

「当店で取り扱っているコーヒー豆は、基本的に高品質で高価なもの。リーズナブルなコーヒー豆を仕入れて提供している店はたくさんありますが、うちでは高品質で高いコーヒーをほどほどの価格で提供しています。コーヒーの原価率は一般的にとても低いため、それを数倍にしたところで十分な利益が出るんです。そのため、当店は高いものをほどほどの価格帯で出すことにより、美味しさ+日常使いできるカフェとして浸透させています」

売りやすい人気の高いコーヒー豆を売るのではなく、高品質なコーヒー豆を厳選。他の店でも飲める、いわゆる定番のコーヒー豆は敢えて取り扱わず、他のお店では扱わないようなものを扱い、差別化を図っているのだと中野さんは語ります。
利益だけを追求する仕入れ方を行なわず、“本当においしいコーヒーを提供したい”という願いが叶えられるのは、中野さんが他業態の店舗を経営し基盤を築いているからこそ実現できることだと言えるでしょう。

「売れるものを売る店じゃなくて、Coffee with 4 Elementsならではの要素を取り入れた店にしていきたいと考えています。例えばタピオカが流行っても、タピオカをメニューに加えることはないですし(笑)。ご来店されるのはコーヒー好きなお客様が殆どです。“どこでもいいからちょっとお茶をしたい”という感じで来店されるお客様はあまりいないですね。いま来店してくださっているお客様も、Coffee with 4 Elementsだから味わえるコーヒーや気軽に会話が楽しめる店内の雰囲気に惹かれて来て下さっている方が多いので、今後もこの店だからこそ来店したいと思える店にしていきたいです」

カップもシンプルなものではなく、他の店ではあまり見られないおしゃれなデザインのものをチョイス
カップもシンプルなものではなく、他の店ではあまり見られないおしゃれなデザインのものをチョイス

今後の展望について、「コーヒーの提供にも一人一人の接客にもよりこだわって、さらにディープなコーヒー専門店にしていきたい」と語る中野さん。チェーン店のように毎回違う店員が接客するのではなく、中野さん自身が接客を担当し、お客様との会話を重ねていきたいと言います。そのため、他のスタッフを雇う予定は今のところないそうです。
昔は個人商店が主流でしたが、コーヒーチェーン店も数多く存在している現代。手軽においしいコーヒーをどこでも飲めることは便利ではありますが、新たな味わいとの出会いや交流は生まれにくいものです。
しかし、Coffee with 4 Elementsのような“ここでいいか”ではなく“ここがいい”と思わせる店を目指している近年では珍しい唯一無二の存在のコーヒー専門店は、新たな出会い・発見を与えてくれるでしょう。(三島)

他のお店と被らないよう、店内のインテリアにもこだわっている
他のお店と被らないよう、店内のインテリアにもこだわっている

プロフィール

中野善仁

Coffee with 4 Elementsの店主。大学生時代からキャラバンコーヒーに在籍し、お客様との関係を構築。在学中にネイルサロンと飲食店を立ち上げ、現在も経営に携わっている。2店舗の経営に携わりながらも、2018年にはCoffee with 4 Elementsを立ち上げ、イベント出店を開始。2019年9月には、東小金井駅の高架下にあるシェア施設MA-TOにて実店舗をオープンした。店舗ではハンドドリップコーヒーやスイーツの提供はもちろん、コーヒー豆の販売も行なっている。

Coffee with 4 Elements
https://www.instagram.com/cwith4e/

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