
2026年3月7日。「小さな実験が、まちを変える。」を合言葉に、アイデアがコウカシタパークに集結!コウカシタLABでそれぞれのメンバーが温めてきたアイデアが、まちの中で実践へと踏み出した一日です。第1期には、小金井市を中心に神奈川や埼玉などから約20名が参加。2025年11月から約4か月間、一人ひとりが暮らしの中に眠る可能性を掘り起こしながら、事業や地域への実装に向けて対話とフィールドワークを積み重ねてきた時間が、ここで形になりました。
今回初開催となった実践型ワークショップ「コウカシタLAB」は、タウンキッチンがこれまで取り組んできた「コウカシタスクール」や「まちのインキュベーションゼミ」を再構成した新しいプログラムです。
エキシビジョン当日は、CLUB HOUSEが新設され始動したばかりのコウカシタパークを舞台に、コーヒーや花、ポッドキャスト、ヨガ、ジャズなどがコウカシタスタンド、屋外ひろば、CLUB HOUSEで同時に立ち上がりました。このまちでどんな「実験」が生まれたのか、プロジェクトをピックアップして紹介します。


カフェや物販店などの出店もできるコウカシタスタンド。日常的に人が行き交うこの場所で、コーヒーショップを開いたのが板倉さんです。「良い音楽と、コーヒーショップをやってみたい」。そんな漠然とした思いからスタートした今回の実践は、板倉さん自身が勉強中の手話を活かして「耳の聞こえない人にとっても気軽に入れる場」をテーマに組み立てていきました。
アジアを中心に世界各国の生豆を扱う「海ノ向こうコーヒー」から仕入れたゲイシャコーヒーを焙煎し、一杯ずつ丁寧にドリップ。立ち上る香りに誘われ、友人だけでなく通りがかった人たちも自然と足を止め、スタンドの前には人の輪が生まれていきます。

音楽好きの板倉さんらしく、BGMにはCDや配信ではなく、あえてカセットプレイヤーを使用。コーヒーを待つ時間を“余白”としてひらき、初対面同士が言葉を交わすきっかけをつくっていました。
今回は手話の実践は叶いませんでしたが、「自分の店を持つことが想像できるようになった」と、やりがいや難しさも含めて次への目標を目指します。

板倉悠太
実践場所:コウカシタスタンド
次に試す小さな行動:サーバーを増やして一度にたくさんのコーヒーを提供したい
ウェディングの装花など廃棄されてしまう花をアップサイクルする「サステナブルフラワーキャンドル」の資格を活かし、活動を続けてきた大垣さん。その一環で、花の数や茎の曲がりといった理由で出荷規格から外れ、生産者のもとで行き場を失ってしまう花の存在を知ったそう。そこで「規格外だけれど価値ある存在の花として知ってもらいたい」という思いから、コウカシタLABへの参加を決めたといいます。
実践の場に選んだのはマルシェなどの開いたイベントが行えるコウカシタパークの屋外ひろば。色とりどりの花が並ぶことで高架下の空気がぱっと明るくなり、自然と人の流れが生まれていきました。立ち寄った方に声をかけながら、リバリューフラワー(規格外の花)に関するアンケートや廃棄されてしまう理由について一人ひとりに伝え、花への興味関心を探ります。

一方で、花そのものへの関心が薄い人が想像以上に多いことにも気づきました。関心を育てることの大切さや、子ども向けの“花育”につながるアイデアがこの実験をとおして得た、新しい発見だったといいます。
屋外ひろばでリバリューフラワーとして販売したことで、見せ方の工夫や、まちの人の率直な声にも触れられた一日に。リバリューフラーワと人をつなぎ、まちから“花育”が広がっていく可能性を感じる実践となりました。

大垣喜世
実践場所:屋外ひろば
お客様からの印象に残った一言:どこが規格外かわからない!
机や椅子が並び展示やワークショップにちょうどいい広さのCLUB HOUSEを挑戦する場に選んだのはペンネーム「報告官アクベンス」として活躍する彼。
これまで、自分の小説を顔の見える相手に見てもらうことには、どこかためらいがあったといいます。それでも今回、LABという場をきっかけに、対面で感想を受け取る一歩を踏み出しました。ワークショップでは、メンバー同士のチャットで積極的にフィードバックを求めるなど、前向きに学ぶ姿も。物語を書く人でありながら、思考を深める時間を大切にしてきたことが伝わってきます。

実践当日は、展示をきっかけに、訪れた人と一対一で言葉を交わしながら、物語への思いや感想を受け取っていきました。展示に加え、QRコードを用意し、noteや電子書籍へとつながる導線も工夫。イベントに合わせてKindleで出版し、実際にダウンロードや購入につながる場面も。
画面の向こう側にいた読者と、同じ場所で言葉を交わす対面という「実験」の先で、自分というキャラクターが物語とともに広がっていく未来が少し先に見えてきたといいます。
開かれた場所での挑戦は、彼にとって次の小説家としてのチャレンジへとつながっていきます。

報告官アクベンス(P.N)
実践場所:CLUB HOUSE
次に試す小さな行動:フリーマーケットなど開いたイベント出店を目指す
「コウカシタパーク」の屋外ひろばから、ふんわりと漂うスパイスの香り。その香りに引き寄せられるように、人の動きがゆるやかにつながっていました。この場所で実験を行っていたのは、「だんろのおうち」の店主大島さん。「将来的に空き家を再利用した小さなファームサンクチュアリをつくりたい」そんな思いからコウカシタLABに参加し、コンポストや家庭菜園といった興味のあることを整理しながらブラッシュアップを進めてきました。その最初の一歩として選んだのが、植物性ミルクで作るチャイの提供でした。

当日は2種類のチャイを用意し、好みの味にシールを貼ってもらう参加型の試みを実施。遠くからでも「チャイの販売かな?」と目に留まり足を運ぶ人の姿が。カフェを営む方との新たな出会いや、次回の活動について声をかけられる場面もあり、成果を実感できたといいます。それと同時に、大量に仕込むことで味を安定させることの難しさや、看板の見せ方を工夫するといった課題もみえてきました。
ワンアクション起こしたことで、次のステップがぐっと身近になったと話す大島さん。次はスパイスミックスを用いたチャイの試作や、マルシェなどで販売経験を重ねていくことを目標にしながら、自分の商品を販売することを「当たり前」に思える日に向かってまだまだ実験は続いていきます。

大島佳奈恵
実践場所:屋外ひろば
次に試す小さな行動:マルシェやポップアップで販売経験を重ねていく
ジャズが好き。即興で交わる音のやりとりや、その瞬間にしか生まれないライブ感。市成さんがジャズに出会ったのは30歳の頃でした。野球に打ち込んだ学生時代や、バンドの解散という経験からたどり着き、音で会話するその自由さに深く惹き込まれていったといいます。
まだジャズを知らない人に面白さを伝えたい。という思いを胸に参加したのが、地元・小金井で行われたコウカシタLAB。普段は会社員として働きながら、副業でジャズドラマーとして活動する市成さんにとって、今回の挑戦は「自分ひとりでジャズの魅力を言葉と音で届ける」初めての表現でした。

エキシビション当日、CLUB HOUSEには生音に引き寄せられるように足を運ぶ人が。サックスプレイヤーの友人を迎えて、実演を交えながらジャズの構造を解説。初めての人でも楽しめる自作の冊子を配るなど、観客に寄り添う工夫も光りました。
企画から集客、当日の設営・撤収まで、一連の運営を一人で完結させた経験は大きな収穫だったといいます。会社員という軸を持ちながら、47歳でなお「夢中」なことに没頭する市成さんの軽やかな生演奏が、会場にいた人たちに「何かを始めるのに遅すぎることはない」という勇気を与えてくれました。

市成卓也
実践場所:CLUB HOUSE
この実験で見えてきた可能性:ジャズを大人のたしなみのように楽しめる文化にしたい

全4回のプログラムを走りきり、それぞれが持てる力を出し切った一期メンバー。
ひとりひとりがリーダーでありながら、意見を交わしアイデアを膨らませるなかで、ワンチームのような関係が育っていきました。
人とまちが交差する場で実践を終えた彼らが、次にどんな一歩を踏み出していくのか。その挑戦はこれからも続いていきます。
そして、いま「やってみたい」という気持ちが心に浮かんでいるなら、次にその一歩を踏み出すのはあなたかもしれません。また新しい出会いが生まれるコウカシタLABで、お会いできるのを楽しみにしています。