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[となりのお宅訪問]武蔵美生の平屋アトリエを訪ねて

アトリエを訪れると、観る人もどこか親しみを感じるモチーフが、柔らかい色合いで描かれた作品がずらり。制作しているのは、武蔵野美術大学で油絵を専攻している、現在1年生の中澤龍二さん。友人2人とこの場所を借り、制作に励んでいます。なぜ学生がアトリエ物件を借りたのか、制作場所としてどのように使っているのか、お話を聞きました。

美大生ならではの物件探し

西武国分寺線の鷹の台駅から歩いて約10分のところに建つ1軒の平屋。中澤さんは同じ学部に通う友人2人とこの物件を借り、日々制作活動を行っています。学生が住む以外の機能で物件を借りることは不思議に感じますが、美大生にはよくあることなのだそう。

小学生の時、油絵の画家として活動している先生の絵画教室に通っていたことをきっかけに、高校卒業後は美大の道へ進むと決め、高校に通いながら美大予備校に行き始めたのだそう。

身の回りのものをモチーフにしていると話す中澤さん。スナップ写真的に集めて、そこに写っているものを分解して、自分の創造と組み合わせながら描いていると言います。

「僕の通う武蔵野美術大学では、1、2年生の間は継続的に制作できる場所がないんです。2週間に1回、先生の講評を受け、それが終わると作業場を撤収しないといけない。僕みたいに大きい作品を描く学生は、毎回作品を移動させるのが大変で、作品の置き場に困るんです」

物件アプリやSNSで“アトリエ”や“鷹の台”と検索にかけて物件を探し、偶然Twitterでこの物件を見つけ、すぐに問い合わせをしたと言います。
 
「一番の決め手はシェアできることでした」
 
平屋は、洋室2部屋とキッチン、トイレのとてもシンプルな間取り。浴室はあるものの、お風呂としては使用できないため、オーナーさんが学生限定のアトリエ物件としておすすめしていたものでした。

昔ながらの縁側付きの平屋。

入居前の室内の様子。昭和の名残がある雰囲気も気に入っているのだそう。

2部屋の洋室を仕切り、4.5帖の部屋を中澤さん、6帖の部屋を半分ずつ友人2人の専用スペースとして使用。それぞれの部屋にある押入れや浴室は、これまでの作品や美術道具置き場として、空きスペースが上手く活用されています。

キッチンは3人の共有スペース。「自分の作品を飾ったり、机と椅子を置いたり、ほとんど僕が専有しているんですけどね(笑)」と話す中澤さん。アトリエならではの使い方が垣間見えます。

画集を見たり美術館に行ったり、インプットを増やし、構図や配色を参考にしているのだそう。特に影響を受けているという、画家の工藤麻紀子さんの画集もありました。

友人のアトリエの一角。絵のタッチや色合いが異なり、同じ油絵でも描く人によって、その表現は無限だと分かります。

実は、郊外にはこんな昔ながらの雰囲気の漂う平屋がたくさん眠っています。中には、マンションやアパートの1室よりも手頃に借りることができるものも。
 
平屋と耳にすると、昔の家族の住まいを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、外部との距離が近い縁側やお庭で、パン屋や喫茶店のような小商いを始めたり、内と外の境界が曖昧であることを活かして、一角に人が出入りできるギャラリーを設けたり、様々な用途にぴったりなのです。

以前は実家の日常的な風景を描くことが多かったそうですが、旅先で見た景色や授業の課題などの影響を受け、モチーフに変化も出てきたと語る中澤さん。

自身の描き方を、かなり特殊だと話す中澤さん。作品に統一感がなくなったり、取っ散らかったりしないように、あえてルールを作っているのだそう。その中には、自分が綺麗だと思った色しか使わないというルールも。

現在、春休みを過ごしている中澤さんは、毎朝アトリエに来て、6時間制作に没頭する生活を送っています。また、埼玉県吉見町にある、画家のギャラリーに滞在し、制作をしながら手伝いをする予定なのだそう。

「まだ実感は湧かないですけど、画家になって、収入を得つつ自分の制作を続けていきたい」と、将来を語ってくれた中澤さん。油絵に真正面から向き合う彼の制作活動は、これからも、この場所で続きます。

玄関に飾る実家のネコを描いた作品と一緒に。

プロフィール

中澤龍二

埼玉県在住。武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻に所属。友人2人と平屋を共有アトリエとして借り、日々制作に励んでいる。

http://instagram.com/tafaphmd
https://twitter.com/ryunguad