ファイナリストが描くまちの夢 NEW WORKING最終審査会

2023.02.22
ファイナリストが描くまちの夢 NEW WORKING最終審査会

2022年秋に始まった、福生市・昭島市の新しいビジネスを創出するワークゼミ&コンテスト「NEW WORKING」。“まちにあったらいいな”という事業アイデアを持つ38人からエントリーがありました。アイデアをブラッシュアップするためのワークゼミと1次審査を経て、ファイナリストとして7人が選出。1月29日には、立川にある「TOKYO創業ステーションTAMA Startup Hub Tokyo イベントスペース」を会場に、最終審査会&グランプリ発表が開催されました。会場には、ファイナリストを応援するご家族の他、福生市・昭島市と商工会の関係者も集結。各ファイナリストのプレゼンテーションから授賞式まで、当日の様子をレポートします。

親も子も孤独にしない助産院をつくりたい

ファイナリストプレゼンテーションのトップバッターは、現在は昭島市でフリーランスの助産師をしている栗原真未さん。「孤育てから共同育児へ」をテーマに、「親も子どもも孤独にしない助産院」を提案します。アイデアの根っこにあったのは、栗原さんが仕事をする中で痛感した「お母さんが孤立している」現状でした。子どもと二人きりで過ごす中で不安を溜め込むお母さんの姿を多く見てきたことから、「助産師にいつでも相談でき、仲間づくりができて楽しく子育てできるような場所をつくりたい」と考えたそうです。

助産院では分娩は行わず、お母さんのケアに重点を置き、マタニティ教室、ベビーマッサージ教室、食育・離乳食講座などの少人数のグループレッスンを開催。仲間をつくりやすい環境を整えながら、個別相談や産後ケアとあわせてお母さん一人ひとりの子育てのお手伝いができるように。「助産師とつながっている安心感が持てて、楽しく子育てできる昭島市を目指したい」と話します。

病院勤務では一人ひとりのケアがしにくく不安を抱えながら出産する人が多かったことも、今回のアイデアにつながった
病院勤務では一人ひとりのケアがしにくく不安を抱えながら出産する人が多かったことも、今回のアイデアにつながった

どんな犬にも寄り添える出張トリミングカー

次に登壇したのは、石川美穂さん。犬のシャンプーやカット、爪の手入れなどを行うトリマーとして動物病院やペットサロンに勤めた後に独立し、福生市で自宅訪問型のトリミングサービスを行っています。そんな石川さんのアイデアは、出張トリミングカー。最初は自宅サロンの開業を考えたものの、お店が開けない住居専用地域だったため断念し、他の方法を考える中でトリミングカーのアイデアに辿り着いたそうです。

車なら飼い主が希望する場所まで移動できるので、老犬や体調にリスクのある犬、外出が難しい飼い主の方も利用しやすく、家族のそばですぐにトリミングできる。「サロンで働いていた時はリスクのあるワンちゃんを断っていたので、どんなワンちゃんにも対応できるように、どうしてもトリミングカーをやりたいと思いました」と石川さんは熱を込めて話します。トリミングはコロナ禍でのペットブームや在宅勤務が広がる今の時代にニーズの高いサービスですが、移動スタイルでの事業は少なく、可能性を感じていると言います。

移動できる利点を生かして地域のイベントにも参加し、地域に根付いた事業にしていきたいという石川さん
移動できる利点を生かして地域のイベントにも参加し、地域に根付いた事業にしていきたいという石川さん

利用者の声をきっかけに、リハビリに特化したデイサービスへ

3番目に発表したのは、高齢者向けデイサービスで働いている高橋考之さん。家族の療養をきっかけに高校時代から福祉の勉強を始め、ずっと医療・福祉業界で働いてきました。高橋さんの事業アイデアは、リハビリ特化型のデイサービス。今の仕事を通して利用者やその家族の方から「リハビリが思うように受けられない」「介護保険のリハビリでは不十分」という声を多く聞いたことが、創業を考えるきっかけになったと言います。

高橋さんのデイサービスの特長は、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職を複数配置すること。また、マシンを使わずに、人の手や自分で体を動かすことを重視して症状の改善を図ります。効果の高いリハビリで、「障害・病気・加齢などで不自由があっても日々の楽しみや夢をもてるように、クオリティ・オブ・ライフを高めたい」と話す高橋さん。一方で、開業に向けてハードルを感じているのがスタッフの確保だとか。まずはスタッフ4人体制でスタートするために、起業家の集まりやセミナー、SNS、勉強会、日々の業務の中で人脈を広げ、同じ方向を向いて一緒に仕事をする仲間を見つけていきたいと話します。

まずはスタッフの確保に力を入れ、オープンに向けて始動していく予定。「利用者の生活の困りごとにも対応していきたい」と高橋さん
まずはスタッフの確保に力を入れ、オープンに向けて始動していく予定。「利用者の生活の困りごとにも対応していきたい」と高橋さん

シェアアトリエを子どもと大人が学び合える場に

4番目の登壇者は、福生市で子どもや女性に向けた鍼灸サロンを営む渡木文代さん。不登校や障害がある子どもが人と交流し、自分らしさを表現できる「シェアアトリエ」を提案します。鍼灸サロンで治療する中で、「生活リズムを整えるのに毎日通いたい」という子どもの声が多く、治療の次のステップとして何か自分ができることはないかと考えた時に、自分の特技である絵を活かした「アトリエ」がピンと来たそうです。

単なる場所貸しではない、会員制のシェアアトリエ。今も子育て中のお母さんであり15年の教員経験を持つ渡木さんの軸にあるのは、子どもが体や心に痛みを感じた時に立ち寄れるような地域の保健室でした。パーティションで区切られたアトリエに加えて、交流しやすいオープンな空間も設け、渡木さんやボランティアの大学生などが見守ります。そしてこのシェアアトリエは、子どもに限らず、大人が活躍する場所にもなると言います。ハンドメイド作家などものづくりをする人や手仕事が得意な高齢者の方なども、ワークショップの場所として活用できるとか。子ども同士や異年齢の交流の機会をつくり、「大人も子どももともに学び合える場所を目指したい」と語ります。

「子どもにとって家族でも友達でもない年上の友だちができて多様な生き方を学べる。シェアアトリエが居場所になるだけでなく、子どもが成長できる場にできれば」と話す
「子どもにとって家族でも友達でもない年上の友だちができて多様な生き方を学べる。シェアアトリエが居場所になるだけでなく、子どもが成長できる場にできれば」と話す

奥さんの就業問題から生まれた、外国人と企業を結ぶプラットフォーム

5番目にプレゼンしたのは、自ら団体を立ち上げ途上国向けITサービスを開発するエンジニアの吉沢翔平さん。吉沢さんのアイデアの背景には、外国籍の奥さんや友人の切実な就業問題がありました。フィリピン人で英語教師として働く奥さんは国のプログラムで任期が5年に限られ、再就職先が見つかるかという不安を常に抱えているとか。知識もスキルもあるのに仕事先が見つからず、日本を離れる外国籍の友人も多いと言います。企業側も外国人労働者の受け入れの知識が少なく、日本人の代わりに短期の埋め合わせをするという考え方に。そんな環境では働く側もやりがいや成長の機会を持てません。

そんな状況を変えるために開発を進めているのが、外国人労働者と中小企業をマッチングするプラットフォーム「ソーシャル・インパクト・ワーカーズ」。マッチングだけでなく、外国人労働者同士がコミュニティをつくって助け合える場でありながら、企業側がナレッジを共有し外国人労働者が働きやすい環境をスムーズにつくれるようにします。また、NPOと連携し、ソーシャル・インパクト(社会貢献的投資。企業が事業でどれだけ社会貢献したかを可視化しそれが利益拡大につながるという考え方)を企業のモチベーションに。働く側のやりがいと成長、そして企業側の長期人材の確保につなげます。「外国人が地域に溶け込み、地域で活躍していく未来を見据え、多様性のまち・福生・昭島を実現していきたい」と吉沢さんは言います。

外国人労働者や中小企業のために、抑えた価格にしたいという吉沢さん。マッチングはほぼ自動化し、労働者も企業も待っているだけでオファーが来るようにする予定
外国人労働者や中小企業のために、抑えた価格にしたいという吉沢さん。マッチングはほぼ自動化し、労働者も企業も待っているだけでオファーが来るようにする予定

地産地消にこだわったオリジナル料理で人と人を繋ぐ

6番目は、飲食店で豊富な経験を積んできた星佳瑞樹さん。地産地消にこだわり、福生市の食材と故郷である福島県の食材を活かした飲食店のオープンを目指します。昼間は果物を使った焼き菓子を中心に、夜はディナータイムとして豚肉と野菜をメインとした簡単なコース料理を提供。すでにオープンに向けて物件を見つけ、準備を進めているという星さん。生産者と地域と、お客さんをつなげるお店にしたいと願いを込めて、店名はフランス語で繋ぐという意味の「リエン」にしたそうです。

そして国際色の豊かな福生市だからこそ、自分の経験が強みになると言います。「僕はフランス料理もドイツ料理もイタリア料理もロシア料理も経験し、レストランからバル、ダイニングまでさまざまな形態をやってきた。そんなめちゃくちゃな経歴とこれまでの業者さんとのつながりを活かしていきたい」と、星さん。国やジャンルに縛られず美味しいものをつくりたいから、あえて○○料理と断定しないのだとか。一つのお店でお客様と密な関係を築くことを軸にしながら、焼き菓子などはECサイトでも販売していく予定です。

個人事業主である奥さんの収入が安定し「好きなことやっていいよ」と言われたのが創業のきっかけになったそう。「味は良いけど見てくれは悪いB級野菜を仕入れながら生産者との関係を築いていきたい」と星さん
個人事業主である奥さんの収入が安定し「好きなことやっていいよ」と言われたのが創業のきっかけになったそう。「味は良いけど見てくれは悪いB級野菜を仕入れながら生産者との関係を築いていきたい」と星さん

まちのカルチャーに根差す本屋+カフェバー

最後のプレゼンは、福生市の米軍ハウスに住み、ミュージシャン、DJ、編集者として活動中の松下源さんです。松下さんが実現したいアイデアは、異国の文化が混じり合う福生だからこそできる「エキゾチックな本屋+カフェ&バー」を開くこと。半年前に福生市に引っ越して福生で遊ぶ中で、「福生は昔から脈々とカルチャーが根付いているけど、そのカルチャーに合ったセレクトの本屋がない」と感じたことがアイデアの背景にありました。

エキゾチックな内装にこだわり、古書をメインにサブカルチャー、文学、音楽、写真集、漫画を揃えたユニークなセレクトに。自身のネットワークを活かしてアーティストのオリジナルグッズを展開したり、カフェスペースでドリンクやコーヒー、クラフトビールやワインなどを提供したりと、地元の人はもちろん、都心からもわざわざ足を運んでくれるような本屋を目指します。「本は全部コピー商品だからオンラインでもどこで買ってもいい。その中でこの店で本やグッズを買うことが一つの体験となる本屋にしたい」と松下さんは話します。

もともとは中央線沿いで古本屋をやろうと思っていたものの、福生というまちの面白さや人のつながりの温かさに気づいた松下さん。本屋から福生のカルチャーを盛り上げていく
もともとは中央線沿いで古本屋をやろうと思っていたものの、福生というまちの面白さや人のつながりの温かさに気づいた松下さん。本屋から福生のカルチャーを盛り上げていく
会場では審査員からファイナリストへの質問も活発に飛び交っていた。ファイナリスト同士が交流を深める場面も
会場では審査員からファイナリストへの質問も活発に飛び交っていた。ファイナリスト同士が交流を深める場面も

7人のプレゼンが全て終わると、約1時間の審査を経て、ついにグランプリの発表へ。会場にさらなる緊張感と期待感が高まる中で、グランプリは松下源さん、準グランプリは栗原真未さんと石川美穂さんのアイデアが選ばれました。報奨金目録と花束が授与されると、受賞者が感極まり涙するシーンも。大きな拍手で盛り上がる中、NEW WORKINGビジネスコンテストが終了しました。

グランプリ・準グランプリが発表され、登壇する3人
グランプリ・準グランプリが発表され、登壇する3人

今回グランプリを受賞した3人のアイデアは、これからどう形になっていくのでしょう。今後の展開をリンジンでも追ってご紹介していく予定ですのでお楽しみに!

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