[対談後記]まちづくりの現在地を読み解く

2020.08.13
[対談後記]まちづくりの現在地を読み解く

「まちづくり」というキーワードの現在地を知りたい。そんな思いから、都立大学の饗庭教授、まちづクリエイティブの寺井氏、富山氷見のHOUSEHOLDの笹倉夫妻との対談が実現しました。それぞれの現場から見える「まちづくり」の今。そのメッセージを私の所感とともに、記録しておこうと思います。

「このまちって、実は”おじさん”が貴重な資源なんですよ」 

わが町には観光資源がない、そんな声をよく耳にします。日本中のほとんどの地域には、世界遺産もなければ、テーマパークも無い。しかし、そのまちには、どこにでもいるような“おじさん”がいて、その普通の“おじさん”が実は面白い。まちづくりの基本は、指をくわえながら無い物ねだりをするのではなく、有り物を大切にするところからスタートすることを再確認しました。

「万人受けしないくらいがちょうどいいのかもしれない」

老若男女を問わず、みんなに利用される場所をつくりたい。経済的に豊かになり、個の嗜好が多様化している現代において、それが幻想であることに、そろそろ気付く必要があるのかもしれません。「万人受けしないくらいがちょうどいい」、そう考えることから出発すると、色々な解が見えてきそうです。

「だから、結局僕たちって、不動産屋さんじゃなかった」

ビジネスモデルは時代や環境で変化するが、ミッションは変化しない。そんな当たり前のことですが、会社を長年続けていくと、時にそれを見失いそうになる。それを改めて再認識させられました。「何をやっているか?」ではなく、「何のためにあるか?」を考え続けたい。

「むしろいろんな社会のバリエーションがあればあるほどいい」

駅前にはよく見る大手チェーンのコンビニやドラッグストアの看板が立ち並ぶ。行政は、どこかのまちの事例を「成功事例」と呼び、横展開しようとする。結果、まちはどんどん金太郎飴と化していく。住む人々から「別に、このまちじゃなくても、よかったんだよね」、そう思われないことが、まちづくりの出発点。

「まちって結局、 一気に変わることはないですから、人を介してじわじわと伝播するものなのかなと思います。」

まちづくりを考える上で、忘れてはいけない「時間」という軸。まちは生き物であり、モタモタしながら変化していく。だから、短期的なKPIや収支ではなく、長期的な視点が大事。そのことはみんな知っているけど、個別具体の案件になると、短期的な成果が求めたがる。理想と現実。私たちが超えなければならないハードルです。

「混ざることによって起きる問題は殆どなくなり、逆に寂しくなってきたので、今は、それぞれをどう混ぜていくかを模索している時代です」

混ぜないことでコントロールしてきた、これまでのまちづくり。混ぜるなキケン、混ぜると想定していないトラブルが起きてしまう。でも、そんなまちは、つまらない。これからは、混ぜ方を学んでいくフェーズなんだと思います。

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